大好評、月亭天使さんの銭湯コラム第2回です。今回は天使さんが東京に行く際、リフレッシュしておられる銭湯をご紹介いただいています。大阪人の彼女が堪能する東京の銭湯とは?
読めば銭湯に行きたくなる月亭天使さんの銭湯コラム、お楽しみください。
朝風呂と蓮
前回から、「銭湯と猫と私」というコラムを書かせていただいております月亭天使です。
先日、母親に「銭湯についてコラムを書くことになった」と話をしたら、「え?洗脳について?」と聞かれたので、「うん、そうやで」と返事をしておきました。
きっと、今頃、「教団を立ち上げた」と思っているかもしれません。
さて、銭湯についてですが、先にお断りしておくと、めちゃくちゃ各地の銭湯を知っているわけではありません。ただただ、ふらっと入った銭湯で、人々の生活を感じる、それを楽しみにしております。
今では、少なくなりましたが、仕事で東京へ行く際、夜行バスを利用します。なぜかというと、やはり経費を浮かせるためですが、夜行バスで眠れずに体力を消耗してしまうことを考えると、費用対効果の観点からかなり損している気がします。
しかし、幾度の夜行バスを経験した結果、私は夜行バスでの効率的な座り方寝方を習得することに成功しました。
まず、人間、座ったままだと血液が足から心臓にいきにくく、結果、翌朝、東京に到着する頃には足がむくんでパンパンになります。また、足が心臓より低い位置にあると眠りにくい。
そこで、両足を前の座席のドリンクホルダーぐらいまで持っていき、腰と頭は背もたれを滑らせ、座面に近づけるようにします。
つまり、胎児のような格好で過ごすわけです。
これを、私は「深夜バスの胎児スタイル」と呼んでいます。これが、母親の胎内を思い出すのか、結構、心地よく、ぐっすりと、眠れません。
人間、横になって寝るのが一番ラクだと、つくづく思わせてくれます。
そして、腰と頭を座面に近づけて座るのですが、首をほぼ九十度にしているのでめちゃめちゃ痛くなります。
しかし、約七時間、狭いバスの座席で睡眠を取るには、いろんな姿勢のパターンを持っている方が良いのではないかと強く思っています。
というわけで、夜行バスで疲れた体をほぐすため、また汗をかいた体を清めるために、どこぞで朝風呂に入り、東京観光の後、落語会へ向かおうと、朝から開いているお風呂を探しました。(せっかく上京するなら、ついでに観光もしとこうという大阪人らしい経済観念が働いていた頃の話です)
あれは、どこやったんだろうか?
とあるビルの数階にあるお風呂屋さんが朝から営業しているので向かいました。
そこは銭湯というより、スパという感じのお風呂屋さんで、近代的なタイルの浴室に、ビルの中だからか銭湯よりは低い天井でした。
しかし、ビルの中にこういった施設があるというのがなんだか不思議です。
すべての湯船につかろうと、大きな窓の近くの湯船に入ろうとした瞬間、窓の外に広がる蓮畑を見つけ、息を飲みました。
朝靄の向こうに広がる蓮の葉の緑が清々しく、そして尊く、まるでジブリの映画に出てくるような幻想的な雰囲気。
たまたま入ったお風呂屋さんで、こんな景色が見れるなんて…。
「よし!今日の落語会は絶対、ウケるだろう!これは!」と体と心をほぐし、東京の神社を巡って、落語会の会場へ向かい、すべりました。
今では、あのお風呂屋さんがどこにあったのか全くわかりません。
きっと、あの夢のような景色は本当に夢で、落語会ですべったことも夢だったと思います。たぶん…
と思いたくなる、ある初夏の出来事でした。
終わり