東京と大阪、2つの拠点を持つ落語家・桂優々さん。彼の大好評エッセイコラム第5回です。
今年は後年、大きく揺れた年と評されることは間違いありません。でも、優々さんにとって大きく揺れた年は違ったようです。そして、音楽イベントにも……。
あなたにとって揺れた年はいつだったでしょうか?そのようなことも思い浮かべながらお楽しみください。
COMIN’ KOBE
今年2020年は世界的にとても大きな年になる事は間違いないでしょう。
日本も例外でなく、自粛生活はもちろんですが、沢山の大規模イベントが中止に追い込まれたり、人数をかなり絞って開催したりとなっています。
音楽大好き人間としては、沢山の夏フェスや音楽フェスが中止になったり、元高校球児ですので夏の甲子園やインターハイのない生徒さんの気持ちを考えると胸が苦しくなります。
最後の大会は、集大成を見せる場であったり、自分の将来の為のアピールする場がなくなるわけですから。
2020年大変やったなぁと思い出話に花咲かしながら笑える日がくるのはいつになるでしょうか?
世界的には今年は大きな年ですが、人によって重大な出来事がおきた日と言うのは違います。
私なら2005年5月21日が運命的な日です。
詳細は過去のコラム「イントロ」をご覧ください。
ついでに投げ銭も…
話がそれました。
では世界的な大きな規模でなく、また個人的な小規模でもなく、日本は祝日が多い国ですので、日にちを言われて何となく、
「あぁ〜あれがあった日ね。」
思い出す日もあります。
1995年。
この年の出来事を聞くと、かなりの人がいくつかの事を思い出すのではないでしょうか?
今日のテーマと関係あるのは1月17日、そう「阪神淡路大震災」です。
当時の私は小学生で滋賀県高島市安曇川町に両親と妹二人の五人で住んでいました。
冬休みも終わって三学期が始まってましたがまだ正月気分が抜けてなかったのをよく覚えています。
朝、登校時間に妹と起こされますが両親とテレビの様子が違いました。
テレビから流れてくるのは倒れた高速道路、上空から燃え続ける火事の映像、初めて地震の恐怖を覚えた日でした。
両親に聞くと、神戸で地震があった事、その影響で家も揺れたとの事でした。
震度は3だったように記憶しています。
両親が飛び起き、そこからずっと起きていたそうです。
ちなみに私と真ん中の妹は夢の中、一番下の妹は一瞬起きたがすぐ寝たとの事でした。
鈍感なのは当時から変わっていません。
阪神大震災の揺れを体感した記憶がないですが、テレビからの映像、そして学校でのいつもと雰囲気の違う一日を過ごしたのを覚えています。
しかしその後の復興はとても早いものだったように思います。
「阪神淡路大震災を風化させず語り継ぎ、神戸の被災地からの恩返し」と言う理念の基作られたフェス、それが
「COMIN’ KOBE(以下カミコベ)」
です。
規模にもよりますが、フェスと言うと一日のチケット代が5千円から海外アーティストが出演するとなると1万円を越すものもあります。
しかしカミコベはなんと無料。
その代わり、会場には募金箱が設置されている、チャリティーイベントです。
運営費は、スポンサー募集やグッズ、フードやドリンクなどの収入で賄われます。
スタッフも大学生のボランティア、出演者もなんとギャラなし。
それでも毎年赤字です。
チャリティーなのでこの募金で運営費を補うのではもちろんなく、募金は全て災害等の義援金に当てられます。
そんな出演者がギャラなし、なんなら移動費など全てアーティスト負担で誰が出るねんと思うのですが、出演アーティストは毎年豪華なラインナップです。
発起人で神戸のライブハウス「太陽と虎」のオーナーである松原さんの情熱と人柄で、有名アーティストから、若手まで出演希望が絶えない。
そして何より全てのアーティストがこのフェスの趣旨を理解しています。
そんな素晴らしいカミコベ、仕事もあり毎年とは言えないですが、私も何度か行ってます。
その中でもカミコベ名物と言えば入場列の長さ。
スタッフがボランティアさんばかりなので仕方ないですが、あまり手際がよろしくない。
今年は中止になり去年一昨日と行けなかったので解決したかも知れませんが、神戸ワールド記念ホールで開催していた時なんかは会場に入るまで二時間、列の最後尾は最寄りの三駅先まで伸びていました。
ツイッターなどの情報を見て列の最後尾がある駅まで行ってしまうか、それとも会場の最寄駅に到着して、列に並んでる友達いないかあわよくば列に入れてもらおうと探しながら最後尾目指すか、行くたびに迷います。
でないと三駅分列を見ながらただ歩くだけと言う事になってしまいますから。
そして、トリは必ず「ガガガSP」です。
これはスタートからずっと一貫しています。
松原さんの想いなんかを全てライブ中に出してくれる、神戸出身の素晴らしい青春パンクバンド。
そんなカミコベを主催していた松原さんが去年末期癌で亡くなりました。
2016年に発見され余命二年の宣告を受けます。
5年生存率10%と言う状況でもブログでとても前向きに病気と闘っておられましたが残念ながら2019年カミコベの一ヶ月前に亡くなりました。
しかし余命宣告から一年も長く生き、その間もカミコベや神戸のライブハウスの事を常に考えながら生活されていたそうです。
音楽が生きる活力になっていたのでしょう。
盟友ガガガSPの「晩秋」と言う曲にこんな歌詞があります。
晩秋の夕暮れは僕の心をまどわせる
人生とは多分そんなもんさ 死ぬまで生きてやろうじゃないか
作詞・作曲:コザック前田、ガガガSP『晩秋』より
まさに死ぬまで全力で生きていたのでしょう。
なくなる前年は伝説のバンドHi-STANDARDが出演しています。
その時の思い出はHの配信までお待ちを。
出演者はこのフェスの趣旨を理解していると言いましたが、お客さんのほとんどもそうです。
そして会ったことのない、松原さんの人柄や願いもです。
だから毎年、沢山の人がこのフェスに情熱を燃やしています。
そしてチケット無料にも関わらず、フェスチケット相場以上の額を寄付して帰る人達がいます。
中にはグッズも全く買わず全然募金を入れて帰らない人もいるそうですが、仕方ないとは言えそれは松原さんの意思を組んでない方ですね。
私は前者……と言いたいですがそこまで経済的余裕はないのでグッズやフードなどをしっかり買って、ある程度募金しています。
こんな大規模なイベント、落語家にはできる人はゼロとは言いませんが、いないかな?
賛同してくれる人が果たしてそれだけいるだろう?
もし、こんなイベントがあって趣旨も説明され、主催者さんの熱量を感じたら私は喜んで参加する。
松原さん、一度でいいからお会いして話がしてみたかったです。
松原さんなら今の状況、そして全く関係ない落語会に何かヒントを与えて貰えそうな気がするのです。
松原さんは亡くなりましたが、意思を継ぐ人達が沢山いて、カミコベは継続していきます。
松原さんのバトンは次に回っています。
そんな松原さんの作ったカミコベ出てみたいな。
何で出るつもりなんや。
てか誰が見にくるねん!
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感想をお聞かせください。
桂優々さんの思い入れの大きい「COMIN’ KOBE」。あなたにとって思い入れのあるイベントはなんでしょうか?こちらも感想と併せてお聞かせくださいね。
優々さん出演落語会『いつつぼし』が9月8日に開催されます。ぜひお越しください。