いよいよ明日が投票日の東京都知事選。今回は過去最多の56人が立候補しています。この状況に三遊亭はらしょうさんは思うことがあるのだそう。それは…?
三遊亭はらしょうさんの爆笑エッセイ、今回も自宅でこっそり読んでくださいね。
世界は冗談で動いている-2024東京都知事選
都知事選が盛り上がっている。立候補者は過去最多の56人だそうだ。
これほどまでにも世の中を変えたい志の高い方がいるのか!と感心している場合ではない。
そう、明らかに候補者の目的が変わって来ているのだ。
みなさんは、今回の政見放送をご覧になられたであろうか。
観るのは投票の大きな基準になる為、俺はYouTubeでの連続アップを毎度楽しみにしているのだが、ついに度肝を抜かれる日がやって来た。
完全に、お笑い化していたのだ。
これはピン芸人の一番を決める大会なのか、一体どこの芸能事務所からやって来たんだい!といった面々なのである。
ギャハハハハ~!とジョーカーの白塗りメイク姿で、高笑いを続ける男性候補者。
メキシコプロレスの覆面で、割と真面目な政策を語る男性候補者。
極めつけは、私カワイイでしょ、と言いながら突然、服を脱ぎ始める女性候補者など。
ここまで来ると、魅力的にすら思えて来る。
そして、候補者に付いている手話通訳の方には本当に頭が下がる。
これまでの選挙でも、マック赤坂、羽柴誠三秀吉、ドクター中松、外山恒一、といった、いわゆる泡沫候補というのは数々いた。
一見、荒唐無稽なパフォーマンスに見えるものの、都知事になって本気で世の中を変えてやろうというパッションが俺にはビンビンに伝わって来た。
だが、今回の候補者の多くにはそれが感じられない。
電波とネットを駆使して、自らの存在を、いかに印象に残せるかが目的になって来ているようにも見える。
中には、「立候補したのは、私のYouTubeを観てほしいからです!」
と、めちゃんこ正直な候補者もいて、すがすがしいほどである。
今回、96歳で立候補しているドクター中松が、もはや泡沫候補には見えなくなって来ているから凄い。
あの方は発明家で、エジソンよりもユニークな発想を持っているのだから、
「みんながドクター中松に投票してしまう機械」などを発明して欲しいものだ。
今や選挙は、供託金300万円を払えば誰でも有名人になれるチャンスの場にさえなって来てしまっている。
もっと値段をあげればいいではないか、という声も出ているが、そうしたとて、さほど状況は変わらないのではないだろうか。
もうこうなったら、一次予選、二次予選、準決勝、決勝というシステムはどうだろうか。
参加費は300万円。
一次予選は持ち時間3分、会場・都庁前、新宿中央公園、雨天決行。
二次予選は持ち時間4分、会場・都庁前、都庁都民広場、雨天決行。
準決勝は持ち時間5分、会場・都庁前、都庁32階食堂。
決勝は持ち時間6分、会場・渋谷、NHK。
ここまでやれば、本番はかなり期待できる。
と、まぁ、そんな冗談を書いてしまう位、本当に冗談みたいな都知事選になって来ている。
大手メディアでは、主な登場人物を四人ほど取り上げている為、ネットに疎い層にはその選択肢しかないようなものだ。
しかも、その主な登場人物は政治経験が豊富である為、結局、ネットを見る層もそちらを選ぶことになる可能性が高い。
これが逆に、主な登場人物たちが覆面や白塗りなどで登場したらどうなるのだろうか?
おいおい、こんな人たちに東京は任せられないよ、となるだろう。
だが、そうなると、他の候補者たちは、さらに奇抜な発想でやって来るに違いない。
いきなりバズーカ砲を撃ち出す奴とか、最後まで一言も喋らずに羊の格好をして沈黙している奴とか。
ほとんど、大喜利である。
そして結果は、やはり、政治経験がある主な登場人物の方に傾くはずだ。
今回の選挙で、とにかく名前を売りたい人にとっては、手っ取り早い場であるとイメージが出来上がったように見えてしまった。
もしかしたら、この先、俺みたいな無名の芸人などは貯金目標金額300万円を目指して、日々、芸の精進、ではなく、過酷な肉体労働バイトの日勤、夜勤を繰り替えし、芸人とは思えぬガタイと日焼けをして、持ちネタ、いや、持ち時間6分の政見放送に望む者が出て来るのかもしれない。
俺は常々思うことがある。世界は冗談で動いている。