一糸まとわぬ姿で自分を表現する場。それが銭湯かも知れません。月亭天使さんはある先輩芸人の言葉を受け、脱ぐ自分を探しに銭湯に向かいました。そこで天使さんが感じたこととは?
銭湯にまつわる天使さんのほんわか(?)エピソードに、今一度自分というものを考えてしまいます。お楽しみください!
浴場と裸
こないだメルカリ(インターネット上でのフリーマーケットのようなもの)を見ていて、変わった出品物があることを知りました。
今は出品禁止になっていますが、だれかの髪の毛や爪(気持ち悪いがな)、甲子園の土(ほんもんかいな)、マイベストフレンド(マイベストな友達やのに売られるって…いったい)、読書感想文代筆サービスなどなど。
あと、内容は分かりませんが、「俺の中の闇」。
逆に買ってしまいそうです。
まあ、250円までぐらいしか出しませんが。
私は、ふと、自分が売ることのできるものはなんやろ?落語?と考えたけど、実は、お客様が買ってくれてはるのは、「落語」ではないんじゃないかと気づきました。
だって「落語」だったら、米朝師匠や先人の師匠方のCDやDVDを見たり聞いたりしたら、いいと思うんだもの。もちろん、「ライブ」かそうでないか、ということはあるでしょうが、やっぱり、なにを買ってもらってるのかというと、その芸人や演者その人の生き方ではないかと思うのです。
そんなことを考えていた時、漫談のあるお兄さんがこんなことをおっしゃってました。
「天使ちゃん、俺、最近、気づいてんけど、芸人て、芸歴を重ねるごとに積み上げていかなあかん思てたけど、ほんまはだんだん脱いでいかなあかんのちゃうんかな?一番その人である部分にお客様が魅力を感じてくださるんちゃうかな?」と。
なるほど。
しかし、本当の私とはいったい?
今の自分を脱いで裸になるとはいったい?
というわけで銭湯へ向かいました。
リアルに脱ぐために。
そこは、深夜一時まで営業している、スーパー銭湯で炭酸湯・泡風呂・白湯・あつ湯・水風呂のほか、サウナは普通のサウナに塩サウナ・スチームサウナ、露天スペースには三種類の湯船と、休憩できる空間が設けられている、かなり大きな規模のスーパー銭湯でした。
体と毛髪を洗い、泡風呂で体のコリをほぐし、サウナを冷やかし、のぼせた体を休めるため、外気に触れながら露天風呂に入っていた時です。
外には、腰をかけたり、寝転がったりできる高さ50センチ、奥行き1.5メートルほどのの広々とした休憩スペースが広がっているのですが、そこに寝転がった女性が両足を空高くあげ、パッカーンと股を広げたのです。
一瞬、なにかの事故が起こったのかと思いましたが、お股の部分に褌のようにタオルを置き、ストレッチをしていただけでした。
しかし、裸とはいえ、さすがに公共の場所でできる格好ではない…すごい。
あれが、真の裸なのか?と感心しながら、炭酸湯へ戻って疲れを癒していると、今度は白湯でクロールする方が…いや、みんな、自由すぎる。子供じゃないねんから。(本当に子供ではなく、普通に大人でした)しかし、服や下着を脱ぎ、真の裸になって、日頃の疲れ、はたまた、生きる上でのしがらみを脱ぎ捨て、体を解放させるのが銭湯の真の目的かもしれないと悟った刹那、炭酸湯でバタフライされたたため、思いきり睨んでしまいました。(炭酸湯は炭酸が皮膚に吸着することで、血行がよくなる効果があるそうなので、バタフライされると炭酸が散ってしまうのです!)
バタフライおばさんを威嚇しながら追い出し、もしかして、これが素の私かも?と思いました。
いや、そんなわけあるかい!
「落語は、演者のキャラクターが消え、落語の登場人物だけが浮き出るのがいい」と言われることがありますが、核である自分があるからこそ、同じネタでもそれぞれの落語の彩が変わってくると思うので、やはり裸の自分を見つけることが大事なんかなぁと思います。
そして、今まで手に入れたものを少しづつ脱いで、必要なものだけになったら、どんな落語ができるのか楽しみになってきました。
よしー、断捨離しよう!
あ、ひょっとしたら、近々、「天使の不用品」がメルカリで出品されるかもしれません。
※銭湯での水泳行為は迷惑ですので、ご遠慮ください。
※「炭酸が散る」という表現が正しいかどうかはわかりませんが、湯船であまり動くと効果が半減するかもしれませんと注意書きにありました。どうか、バタフライもご遠慮ください。
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