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初舞台~麗しのタカラヅカ:桂春雨

桂春雨

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宝塚音楽学校を卒業した生徒たちの初舞台、これは新タカラジェンヌだけでなくご贔屓さんたちにとっても大切な舞台です。しかし、今年はコロナの影響で初舞台が延期に。その分、大いに盛り上がったとのこと。

桂春雨師匠にその時の様子をつづっていただきました。落語と歌劇、ジャンルは違えども舞台人。桂春雨師匠はどの部分に注目したでしょうか。お楽しみください!

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初舞台

みなさん、ようこそ『麗しのタカラヅカ』へ。ご案内役の桂春雨です。

9月25日に宝塚大劇場で始まった月組『WELCOME TO TAKARAZUKA-雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』で、宝塚歌劇団106期生39人が初舞台を踏みました。

例年ならば4月から5月にかけて宝塚大劇場で行われる公演で初舞台を踏むのが恒例です。106期生は、4月24日に開幕の月組公演で初舞台を踏む予定でした。

ところが、同公演が新型コロナウイルスの影響で延期となってしまい、5ヶ月遅れでのお披露目となりました。半年近くも入団が遅れるのは戦後例がなく、ここまで106期生はそれぞれが個人個人で準備を重ね、初舞台に備えてきたそうです。

私は10月の初めに観にいったのですが、初舞台生の出番は、例年どおり口上とラインダンスの2回。まずは口上です。通常の『一幕目が芝居、二幕目がショー』という構成ですと、幕が開くと初舞台生が黒紋付きに緑の袴姿で舞台に並んで立っていて、真ん中で代表者三人が口上を述べるというパターンです。

ところが、今年は一幕目がお芝居でなく和物のショーだったので、構成が違いました。開演して華やかなプロローグが約10分ほどあり、お客さんが盛り上がったあと、おごそかな片砂切かたしゃぎりの鳴物(歌舞伎や落語の口上の時にも使います)で、口上の幕開けです。

真ん中に組長の光月るうさんが黒紋付き裃姿に生締の髷なまじめのまげ(歌舞伎の立役の口上のスタイルです)で座り、その左右に代表者が2人、後ろに残りの37人が、座っての口上という、宝塚的には珍しい形。

衣装は黒紋付に緑の袴という伝統的なものでなく、宝塚歌劇の象徴であるスミレ色の着物、鬘も衣装に合わせて通常の口上より豪華なもので、光月組長の格調高い挨拶と相まって、ただの口上でなく和物のショーにみごとに溶け込んだ素敵な1場になりました。

その後の和物のショーとお芝居には出演せず、次に出るのは芝居のフィナーレの中で行われるラインダンス(通称ロケット)です。このロケットの最後に、足並みを揃えて足を上げるのが初舞台生の最大の見せ場です。この足の上げ下げを揃えるのに血の滲むような稽古をする訳です。

通常ですと、宝塚大劇場の稽古場でみんな揃って稽古するのですが、自粛の影響で稽古も3カ月ほど中断してしまいました。振付は完成していたので、それぞれが自宅で振りを覚えて、オンラインなどで連絡を取り合い、完成のイメージを膨らませてきたそうです。

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そして、いよいよ『ピガール狂騒曲』のフィナーレで、5ヶ月遅れでのロケットです。淡いブルー・白・ピンクのトリコロールカラーのかわいらしい衣装に身を包んだ106期生のラインダンスは、自粛期間を感じさせない見事なものでした。

私も初舞台のロケットを数多く見てきましたが、私が今まで見た中で最も振りが揃っていて『一糸乱れぬ』というのは、こういうことを言うのだろうと感動致しました。

39人の初舞台が、前の人の肩に手をのせて1列になって銀橋を渡り花道から引き込む時には、劇場全体から惜しみない大きな拍手が送られました。私もいつの間にか保護者のような気持ちになり、いつも以上に大きな拍手を彼女たちに送っていました。

イベントの人数制限が緩和され、宝塚大劇場も前後左右にも人が座れるようになったので、拍手している私自身が回りからの拍手に包まれていることに気が付きました。

彼女たちを励ましているつもりだったのに、永らく忘れていた前後左右からの拍手の音を体で受け止めて、106期生の皆さんに逆に励ましてもらっているんだなあとしみじみ感じたような次第です。

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