前回は引退する車両についてつづってくださった桂小梅さん。今回は廃線になった路線についてつづっていただきました。国鉄からJRへ民間譲渡され、採算の取れない路線は廃線の運命をたどるのが資本主義の掟かもしれません。それでも、その路線を使い生活をしていた方には大切なものだったはず。
そんなことに思いを馳せながら、桂小梅さんのエッセイと作品をお楽しみください。
3年前に消えた〇〇?
今回は引退した車両ではなく、消えた〇〇を紹介します。
〇〇とはなんと”線路”。広島県の三次「三」と島根県の江津「江」を結び、江の川沿いを縫うように走るJR三江線です。
短い区間ではなく、100キロ以上もあった路線が2018年3月31日で全線廃線になりました。
三次駅を出て島根県に入ると、カラフルな赤色屋根”石州瓦”が目立つ集落、そして長いトンネルを抜けると・・・鉄橋の上に駅??
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宇津井という駅で、地上から20メートルもある高架駅。エレベーターやエスカレーターなどの設備は一切なく、100段以上の階段をひたすら昇ります。ハァハァと息を切らしながら、たどり着いた最上階には待合室。そこには訪れた人が記入できる”旅ノート”が置いてありました。
後日テレビで、90歳を過ぎた地元のおばあちゃんが、そのノートの管理人さんで、廃線まであの階段を毎日昇り降りしていたというニュースが・・・。
地元の人々が名残を惜しむように、自宅の玄関や畑に手作りの看板や旗を掲げていました。
“だんだん三江線”と・・・
※だんだん…出雲弁、ありがとうの意味