大爆笑!桂三若師匠のエッセイ第7回の公開です。今回は珍しい場所での高座についてつづっていただきました。まさかこんなところで…という場所でもされているようです。大変です……。中でも桂三若師匠の印象に残っている場所は?
今回も爆笑必至です!声を出しても大丈夫な場所でお読みください。
どこでも「笑」宇宙
少しづつですが地方の仕事が戻ってきましたね。
先日は広島城二の丸復元建物で落語をしてまいりましたが、一番前の真ん中に座ってるおっちゃんが僕を全く見ずにずっと下を向いてなにやら書いてます。
講演会のようにメモでも取ってるのかと思いきや、後半に差し掛かった頃に
「出来たー!」
と大声で叫び、僕にそのメモを渡してきました。
見るとなんともリアルな僕の似顔絵が書かれてました。
「いや…ずっと似顔絵書いてたんですかー」
という僕の突っ込みに、そのおっちゃんは悪びれることなく一言
「それ、1000円」
なんで買わなあかんねーん!
客席がその日一番の爆笑に包まれたのは言うまでもありません(ダメじゃん!)
けどお城の中で落語をしたのは初めての体験でした。
今日は落語家ならでは、変わった場所での落語会の噺を肴にもう一杯飲みましょう。
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落語家なら本当に色んなとこで落語をしてると思います。
葬儀会館、電車やバスや船の中、トラックの荷台、バーのカウンター、流れるプールの真ん中などは誰しも経験してるはずです(誰しもではないかもやけど)
僕の中でもレアなのは、鉄板焼屋の鉄板の上というのがあります。もちろん火は入っていませんが、鉄板やのに滑るという見事なコントラストを描きました。
中華料理の丸いテーブルの上でターンテーブルに座布団が乗せられてたこともあります。
座るとクルクル回るんです。
主催者さんに
「これ?回りますけど大丈夫ですか?」
と聞くと
「見たい人が回すいうのはどうですか?」
と言われました。
そんなもん残り物の春巻みたいにずっと後ろ向きで放置されたら泣きますよ。
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キリスト教の教会もありました。後ろに思いっきり十字架があるんです。
そこの主催者の奥さんが
「今日は娘が見に来ますが、娘は受験生なので絶対に滑らないでくださいね」
と言われ
「…頑張ります」
と言うと
「あと落ちのある噺も禁止で!」
と言われました。
落語できへんがな!
どんだけ重たい十字架を背負わすねん!
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海の家での落語会も珍しいですね。
みんな海パン一丁の中を着物着て落語するんです。
もう汗がダラダラ流れ、途中で意識が飛びそうになり何も覚えてませんが、汗の量に反比例した笑いの量だったことはうっすらトラウマとして残ってます。
それとは対照的に青森の十和田湖ではかまくらの中で落語をしました。
とにかく寒いです。
始まってすぐにチビッ子が
「おしっこー」
と騒ぎだしたのは自明の理です。
落語をしてる自分ですら寒いのにお客様が耐えれるわけがありません。
ひきつった顔で「早く終われー」と呪いをかけられてたのをはっきりと覚えてます。
ただ寒さで唇がガタガタと震えてるのが、笑ってるように見えなくもないという、とてもネガティブなポジティブシンキングで乗り切りました。
終わって主催者さんに「次はかまくらやなしに、キャバクラでやりましょうー」
と心の叫びをぶつけました。
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後はサッカーのスタジアム、神戸ウイングスタジアムのピッチに高座を作り落語をしました。
最高で6000人入りましたが、それでも満員の5分の1です。お客様の歓声よりカラスの鳴き声のほうがうるさかった覚えがあります。
西成あいりん地区の三角公園でもやりましたね。
落語をしてるとお客さんがシケモク(タバコの吸い殻)を放り投げてきます。
それをまた拾って吸うお客様がいるという夢のような空間でございました。
とにかく落語は『座布団の上に広がる笑宇宙』と言われるだけあり、座布団さえ置ければどこでもやれます。
ぜひ皆様、噺のネタになりそうな所での落語会のオファーを待ってます。
宇宙空間でスペースシャトルでの落語会なんてオファーがあればすぐ行きますので!
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