2024年12月19日、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、「第114回 ヨセゲーリレー落語『子別れ』」が開催されました。2024年最後のヨセゲーです! 毎年思うことですが…光陰矢の如しですね。出演は三遊亭遊喜師匠、春風亭傳枝師匠 、柳亭芝楽師匠、笑福亭里光師匠。今年を締めくくるテーマは「リレー落語『子別れ』」。メンバーで『子別れ』の上・中・下の担当を決めて、順々にリレー形式で話していくという趣向。途中、楽器も飛び出したようで…。一年を締めくくるにふさわしい、ヨセゲーのチャレンジ精神が煮えたぎる企画ですね。では、早速、リレー落語『子別れ』を覗いてみましょう。
上『強飯の女郎買い』三遊亭遊喜…飲んで飲んで飲まれて飲んで
トップバッターは三遊亭遊喜師匠。今日はみんなネタおろしだから、いつもパーパーうるさい楽屋なのに、誰も口を開かず静まり返っているとのこと。師匠方の緊張が伝わっているのか、会場の空気も真剣そのもの。お客様の楽しみ! という気持ちと応援の気持ちがよく伝わってきます。
まくらなしですぐに幕が開き『子別れー上「強飯の女郎買い」』のスタートです。
腕はいいけど、大酒飲みで遊び人の大工の熊五郎。山谷の寺で執り行われた伊勢六のご隠居の弔いで案の定ぐでんぐでんに酔っぱらい…帰路、出会った隣町の紙屑屋の長さんを半ば無理やり捕まえて吉原に行くのですが…。
お酒を飲むのは功徳につながると、お酒をぐびぐび飲み進めぐわんぐわんにぐでんぐでんに熊五郎がお酒の沼にハマっていく様子は生々しく鮮やか。酒癖の悪い熊さんと氏を囲む冷静な周囲との差も見事に描いていました。最初から最後までずーっと酔っぱらっている熊さんを演じ切るのはテンションやリズムを保つのがさぞ大変だろうなと思いつつも、さすがの遊喜師匠、会場を巻き込み酩酊の世界に誘っていました。
さあ、お次にバトンタッチ!
中『子別れ』笑福亭里光…酒は抜けても口の悪さは抜けないようで
遊喜師匠からバトンを受け取り、『子別れー中「子別れ」』を担当するのは笑福亭里光師匠。バトンを受け取ったら、すっと噺に入ります。
さて、弔いの後、吉原に出向いた熊五郎ですが…そこでばったりとかつての馴染の女と再会し、4日間も居続ける。きまり悪そうに我が家に帰るのですが、妻に謝るどころか言いわけばかり。しまいにはノロケまでしだして…。
熊さんが苦しい言いわけを話している最中は、話者の熊さんだけでなく、聞き手である妻のあきれ顔も目に浮かぶようで、里光師匠の人物描写とそこから情景を想像させる噺ぶりは素晴らしかったです。妻に責められ、熊さんのドキマギぶりに会場は笑いしつつも、もはや愛想をつかしたと言い放つ妻の気迫は、その背景に漂う哀しさすらも表していて、お客様も里光師匠が描く機微に心つかまれていたようでした。
関西弁な熊さんに会場も笑いが絶えません。まさに里光師匠ならではで、ここでしか体験できない貴重な体験。会場に行けなかった~という方も、ぜひ、ツイキャスでお楽しみください(リアルタイムで見たよと言う方もおかわりも推奨)!!
ここでお仲入り~
山谷の坊主がやってきた
『子別れー下』に行く前に、柳亭芝楽師匠、もとい山谷の寺からやってきたというお坊さんによるお楽しみの時間『鼻レレ』。
おもむろにカバンから取り出したのはウクレレ。芝楽師匠のオリジナル曲『リング』『マイホーム』、さらにはサザンのカバー曲も披露。お腹を抱えて笑っていらっしゃる方もいるほどの大うけ。あ、どんな曲かはぜひツイキャスでお楽しみくださいね。
お次は、タスキをビシッとかけまして、ピャッと着物の裾をまくりあげると、今度はカバンから笛を取り出します。何でも吹ける笛とのことで、童謡から映画の主題歌やクリスマスにちなんだ曲も。いやはや本当になんでも奏でる笛ですね。会場はかわいらしすぎる笛の音に苦笑…いや爆笑で、空気があたたまります。
最後は、『子別れ』にぴったりではないか?! というあの名曲を演奏。何の曲か気になる方は、やはりツイキャスでお確かめください。
『子別れ』に絡めた小ネタもはさんでこられて、さすがの芝楽師匠。
会全体に色を添えながら、リレーの流れを途絶えさせることなく、ヨセゲーのチーム力が発揮されていました。
さあ、トリの春風亭傳枝師匠にバトンが渡されます。
下『子は鎹』春風亭伝枝…親の愛情、子への愛情が染み渡る
最後のバトンをしかと受け取った春風亭傳枝師匠。いよいよ『子別れ』のクライマックス 『子は鎹』です。
妻に愛想をつかされて三年程の月日が経ったある日、熊五郎がお店の番頭と木場へ行く途中、これまでの身の振り方や家族の思い出話をしていると、わいわいと楽しそうにはしゃぐ子どもたちの姿。するとそこには…。
酒癖の悪さと口の悪さは消え、仕事に一生懸命向き合う男へと生まれ変わった熊五郎。傳枝師匠の話しぶりは、これまでとは違い、穏やかで落ち着いた熊さんの良い男ぶりがじんわりと心の芯にまで伝わってくるようです。さらに、子どもを見る目は、父親のあたたかさと強さがにじみ出て、会場も熊さんを見守るような空気が漂いました。
熊さんの子どもの亀のかわいらしさと素直さ、相変わらず気丈で芯の通った妻の人柄の描き方も見事で、どこか恥じらいすら感じさせる家族間のつながりがいじらしいほど、会場に伝播します。妻も母としての美しさが滲んでいました。
傳枝師匠が『子別れー下「子は鎹」』を話し終えると、会場から割れんばかりの拍手がおこり、完走されたリレーをねぎらうヨセゲーのお客様の優しさで包まれました。
最後は全員で舞台にあがって三本締め!!
お客様との息もピッタリで、2024年のヨセゲーは幕を閉じました。
ヨセゲーらしいチャレンジ精神とユーモア
毎度、さまざまなテーマと企画で楽しませてくれるヨセゲーですが、今回の「リレー落語」は、1年の締めくくりにふさわしい、ユーモアあふれながらも、チャレンジ精神の塊をぶつけられたような骨太な会でした。最後の集合写真は、走り切った師匠方の良い笑顔! 芝楽師匠には後光が差しているかのようですし。ツイキャスは2025年1月2日まで見ることができるので、年末年始に楽しむのもオススメです!
さあ、2025年のヨセゲー初席は、1月16日「壽与世鯨初席」。
新春はヨセゲーで笑って過ごしましょ~。
2024年も寄席つむぎの「ヨセゲー」レポート記事を読んでいただきありがとうございました。来年2025年も、みなさまにヨセゲーの魅力をお伝えできるよう頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、みなさま良いお年を!
来年も元気でお会いしましょう!
■次回予告■
ヨセゲー #115【壽与世鯨初席】
2025年1月16日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
ツイキャス落語会 ヨセゲー #114【リレー落語「子別れ」】
2025年1月2日(木) 23:59 まで
■関連情報■
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ヨセゲー https://twitter.com/yosege_
三遊亭遊喜師匠 https://twitter.com/sanyuuteiyuuki
春風亭傳枝師匠 https://twitter.com/den_shi
柳亭芝楽師匠 https://twitter.com/turunperon
笑福亭里光師匠 https://twitter.com/rikoshoufukutei