2025年1月16日、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、「第115回 ヨセゲー『壽与世鯨初席』」が開催されました。2025年最初のヨセゲーです! 初席のタイトルからヨセゲーの遊び心が発揮されていて、今年もエンジンかかっていることが良く伺えます。出演は春風亭鯉枝師匠、三遊亭遊喜師匠、春風亭傳枝師匠 、柳亭芝楽師匠、笑福亭里光師匠、田辺凌鶴先生。総勢6名で、落語に講談、南京玉すだれも…?! なんとも賑やかな初席になりました。配信は諸事情により今回はお休みになり、会場のみでの開催でした。では、早速『壽与世鯨初席』を覗いてみましょう。
初席らしい陽気に包まれて

トップバッターは笑福亭里光師匠。お正月らしい『みじかいらくご』の新作で幕開けです。初席から絶好調の『みじかいらくご』。むふふと会場から笑いがこぼれます。今年も里光師匠の『みじかいらくご』にじわじわとハマる人が続出しそうな予感。
演目は『始末の極意』。始末とは、大阪で「節約」のこと。始末がうまいと思っている男がさらに上をいく始末の達人に、その極意の教えを請うのですが…。
里光師匠らしい安定感のある話しぶりですが、2人の男のかけあいはとてもリズミカルで、会場はノリノリ。それにしても、始末を極めるには、なかなか一筋縄ではいかないですね。んな、あほな! という極意に会場からはドカドカ笑いが沸き起こりました。

続きまして、講談の田辺凌鶴先生の登場です。ヨセゲーに呼んでもらえることが嬉しいと、にこやかに語る凌鶴先生。会場からも、こちらもですよ~という気持ちが伝わってきます。
演目は『村越茂助』。秀吉に、鶴岡八幡宮に参詣のおりに、一万石の寄進を言い渡された家康だが、寄進したのは十分の一の千石。これに憤怒した秀吉のもとに、家康の名代として、家来の名がでも一番のうつけ者 村越茂助が弁明をしに行くことになるのですが…。
第一声から、トーンと会場に響く凌鶴先生の声。会場もその一言で、ごくりとつばを飲み込み、これからはじまる物語への期待がぐんと高まったことが良くわかりました。そこから、さすが凌鶴先生の語り力で、ぐいぐいとドラマチックに舞台が眼前に立ちあがっていきます。
顔を真っ赤にして声を荒げる秀吉を前に、ひるまず自ら作った口上を述べる茂助の様子は、滑稽でありながらも、凌鶴先生の透き通る声と流れるようなリズムで気持ちいい。まるで、一節の音楽を聴いているような心持です。
うつけ者と言われていたにもかかわらず、誉の使者となった茂助の活躍は、初席に相応しい、熱を帯びた一席でした。

お次は、春風亭傳枝師匠。配信ができなかったり…とトラブル続きな今日だけど、それはきっとこれから良い一年になるということでしょう! と前向きな傳枝師匠の言葉に、会場もうんうんと頷き、あたたかい一体感が生まれました。
演目は『大安売り』。町内の若い衆が、顔見知りの関取を呼び止めてる。何やら、上方の本場所に出場したというので、初日から順にその様子と結果を聞いてみるのですが…。
傳枝師匠の関取は、ご陽気で憎めないキャラクターで、どうやらあまり相撲は強くないようですが…会場はそんな関取に呆れながらも惹かれていることが伝わってきます。初日から千秋楽まで、ひとつひとつの試合が小さな物語のようで、次へ次へと興味を掻き立てるのもおもしろいところ。もはや、関取と若い衆のやりとりは漫才のようで、傳枝師匠のお相撲さんらしい豪快さとリズミカルな話しぶりも相まって、大きな笑いを誘っていました。
会場を巻き込んで唱和する場面もあり、会場で落語を楽しむ醍醐味も炸裂した時間でした。
ここで、お仲入り~。
後半も賑やかです!ーGに、南京玉すだれに、錦のふんどし?!

さあ、後半戦スタートです。まずは春風亭鯉枝師匠。高座の上でのたたずまいは、なんだか癒されるなと感じていた矢先、「お客様にあったお話を」と、おもむろに黒光りするGとの攻防戦について話しだされました。会場は大爆笑です。いやはや、ヨセゲーのお客様は器が大きくてあたたかいです!
演目は鯉枝師匠作の新作落語『自衛隊志願』。はじめから鯉枝師匠の独特の間で噺が進み、会場は一気に鯉枝師匠の世界に惹きこまれます。
アルコールが大好きだという鯉枝師匠が、酔った時の躁状態で自衛隊に入隊志願に行った時のお話。鯉枝師匠らしいたんたんとした語り口で、面接官にひたすら長々と口上を述べるのですが、それを唖然と聞く面接官の顔が目に浮かびます。会場は面接官の気持ちと呼応しているかのようで、面接官がたまにはさむツッコミに爆笑。
ちなみに、この噺に象徴的に出てくる、アマリリスの花言葉は「おしゃべり」だそうです。

お次は、柳亭芝楽師匠の『南京玉すだれ』。
「みなさまの手と手の皺をあわせて、幸せの音をくださいな」という、芝楽師匠の一言に、会場からは手拍子が巻き起こります。
「めでたいな~めでたいな~」のかけ声とともに、次々と玉すだれが変化。それにしても、こんなに輝かしい「日の出」を表現できるのは、芝楽師匠ならではかもしれません。体当たりな、玉すだれで大盛り上がり! 初席にふさわしい、元気でめでたい一席でした。


トリは三遊亭遊喜師匠。年末に喉の不調で、紹介されてとある耳鼻咽喉科に行ったという遊喜師匠。職業柄、喉を使いすぎと言われるのかと思いきや、落語家さんだから、新宿、池袋、浅草、上野…なるほど遊ぶところがいっぱいあるからねと、言われたとか。医師とのやり取りも、もはや落語のようで、会場も笑いに包まれます。それにしても、遊喜師匠、お大事に。
演目は『錦の袈裟』。若い衆が吉原に遊びに行くのに錦の褌を揃いでしめていくという趣向を思いつく。与太郎も同行したいから、どうしたものかと女房に相談すると、お寺の和尚から錦の袈裟を借りればいいと入れ知恵されて…。
遊喜師匠ならではの威勢の良い語り口調の江戸っ子たちに、会場がぱあっと華やぎます。
かと思いきや、与太郎や与太郎の女房の濃いキャラが炸裂。表情や声のトーンで、各キャラクターをいきいきと立ち上がらせて、一人で多様なキャラクターを演じる落語の魅力の原点を改めて感じることができました。
2025年もヨセゲーを楽しもう!

いよいよ2025年もヨセゲーがはじまりました! 今年もさまざまなテーマや企画で、みなさんを楽しませてくれること間違いなし!と予感させる、何とも賑やかで楽しい「壽与世鯨初席」でした。寄席つむぎは、今年も、「ヨセゲー」レポート記事を通じて、ヨセゲーの様子をお伝えしてまいります。記事を読んで、おもしろいな~と感じていただけたら、今度は、ぜひ、現場に遊びにいらしてください!
本年もよろしくお願い申しあげます。
さあ、2025年のヨセゲーは、2月13日「冬の噺」。
どんな冬の落語に出会えるのでしょうか。まだまだ寒い日が続く中、落語で心を温めましょう。
■次回予告■
ヨセゲー #117【冬の噺】
2025年2月13日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)


■関連情報■
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ヨセゲー https://twitter.com/yosege_
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春風亭傳枝師匠 https://twitter.com/den_shi
柳亭芝楽師匠 https://twitter.com/turunperon
笑福亭里光師匠 https://twitter.com/rikoshoufukutei
