2025年3月13日、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、「第117回 ヨセゲー『出会いと別れと新生活』」が開催されました。出演は三遊亭遊喜師匠、春風亭傳枝師匠 、柳亭芝楽師匠、笑福亭里光師匠。春は出会いもあるけど別れもある…新しい生活もはじまる。さまざまな感情がわき起こる季節ですね。今回は、春らしく「出会いと別れ」をテーマに、それぞれの師匠方ならではの視点で選んだ落語が口演されました。早速「出会いと別れと新生活」を覗いてみましょう。
引っ越して新生活、人芸関係を整理して新生活?!

トップバッターは柳亭芝楽師匠。大入の会場に喜ぶ芝楽師匠ですが、この間、忘れ物をした話がいいネタになるな~今日話そ~と思っていたのに忘れちゃった…ということで、粗忽者のお噺へ。
演目は『粗忽の釘』。とある夫婦の引っ越しの日。妻より先にタンスを風呂敷にくるんで旧家から新居にむかって出たはずの夫ですが、迷子になり、大家さんに案内してもらってようやく新居にたどり着いた。その頃には、しっかり者の妻がすでに引っ越しの片づけをほとんど終えていたのですが、妻は、大工である夫に「ほうきをかけるために釘を打ってほしい」と頼みます。すると…。
粗忽な夫の言動に呆れるやら、憎めないやらで会場からは笑いが絶えません。落語の世界の住人はなんでこんなに愛おしいのでしょう。芝楽師匠のいたずらっぽい表情が、より粗忽者の夫のキャラを際立たせているからかもしれません。煙草を吹かす様子は味わい深く、セリフの少ない場面でも、間の取り方と表情で、会場を虜にしていました。

続きまして、笑福亭里光師匠の登場です。春らしいみじかいらくごからスタート。会場にフランスからのお客さまがいらっしゃり、丁寧に語りかけるようにみじかいらくごを披露される里光師匠。会場にはじわじわツボるお客様続出で爆笑の渦。きっとフランスからのお客様にもシャレのおもしろさが伝わったはず!
演目は『包丁』。実はあまり好きな噺ではないのだよね…とつぶやく里光師匠。おや、このセリフどこかで聞いた覚えが…ヨセゲーの常連さんからはまたかい!とツッコみの笑いが起こります。気になる方は、過去のレポートをぜひ読んでください。
久治は常磐津の師匠と一緒に住んでいるのだが、他に若い女ができたので別れたい…そこで、兄弟分の寅を鰻屋の離れでもてなして、芝居を打ってほしいと誘い込んで…。
久治不在の家に行き、久治にいわれるがままに、師匠相手に小芝居をする寅。はじめはしどろもどろだった寅の小芝居が、酒が進むにつれて饒舌になる変貌ぶりは、さすが里光師匠の演技力が光ります。寅と師匠の声をあらげてのかけいあいは、力があってリズミカル。ドキッとするタイトルも相まって、最後までどうなるの?! と、会場もどんどん没入していくことが良く伝わってきました。
それにしても、酒の力を借りるとはこのことで、今も昔も変わらないですね。
ここでお仲入り~。
出会いと別れと…人生、悲喜こもごも

後半戦!三遊亭遊喜師匠の登場です。「芸協らくごまつり2025」の委員長になった遊喜師匠。開催は5月25日でチケットは4月7日発売!! 要チェック!!
演目は『紙入れ』。20年ちょっとぶりでほぼネタおろし。若い頃、一度挑戦してみたけれど、なかなかうまくいかず封印していたとのこと。たしかに、若い人がやるもんじゃないとよく言われている演目とのことですが、50代にもなったしそろそろまた挑戦してみようという気概。思い出しながら稽古したけどやはり難しい噺だと…それをどのように口演されるのか、会場の期待が高まります!
貸本屋で働く新吉、得意先の商家の女将さんから今夜は旦那が帰らないから遊びに来てくれと手紙をもらう。迷った末に出かけていくと、女将さんに酒を勧められ、今日は泊っていきなさいと…するとそこへ、帰ってこないはずの旦那が帰って来て…!!
あせる新吉のおどおどした様子が笑いを誘い、遊喜師匠のいぶし銀のような色っぽさも相まってか、女将さんのどっしり構えながらも艶っぽさがよく醸されていて、ドキドキしてきます。旦那をはさんでの、2人の秘密の目くばせが手に取って伝わってくるのは、さすがの遊喜師匠でした。

トリは春風亭傳枝師匠。花粉症がお悩みの傳枝師匠。落語中に鼻がむずむずしてくると大変だけど…ある日、『時そば』の最中に、あ、やばい鼻がとなったけれど、ちょうど蕎麦をすするシーンに合わせて対処したらウケたとか。持ってますね!
演目は『死神』です。お金はないし、女房からも馬鹿にされるしで、生きる気力がなくなった八五郎が首をくくって死んでしまおうと、小汚い老人に声をかけられる。実はその老人は死神で「医者になって金儲けをしないか」と持ち掛けられて…。
時事ネタが組み込まれたり、花粉症も登場したり…傳枝師匠ならではの演出が満載で、お客様も、そうくるの!! と笑いが絶えません。どんな演出がされたのかはぜひツイキャスでご覧ください。
終盤の八五郎と死神の切迫したやり取りの場面は息を止めたくなるほどの緊張感で、会場は固唾をのんで見守り没入していることが良くわかります。死神の気味悪さが際立つ演技は身の毛もよだち、八五郎の怖がり方にいたっては脂汗が見えてくるほどの臨場感です。
いつになく、終演後の会場に、ずっと感動の余韻が残っていたようでした。
春うらら、落語でご陽気にいきましょう

春から出会いと別れというテーマをひきだして、さらにそこからそれぞれが着想を得た落語を口演するという会の作り方はもとより、師匠方の演目の選び方、テーマへの応え方がおもしろかったですね。わたしも、花粉症がややつらいのですが…この春も、落語をたくさん聴いて陽気に行くぞ~と思わせてくれる会でした。
さて次回は、2025年4月10日で、テーマは「ハゲと愉快な仲間たち」。ハゲ大喜利なるものが催されるようですが、一体、何をするのでしょう?! ヨセゲーらしい愉快な会になること間違いなしなので、ぜひお運びください。

■次回予告■
ヨセゲー #118【ハゲと愉快な仲間たち】
2025年4月10日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)

ツイキャス落語会 ヨセゲー #117 【出会いと別れと新生活】
3/27,23:59まで
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/361267

■関連情報■
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