月亭天使さんが好きなものといてば、銭湯と猫。今回は猫について天使さんにつづっていただいています。忘れられない猫「きなこ」についてです。
色んなことを忘れてもきなことの思い出は消えません。月亭天使さんの温かいまなざし、お楽しみください。
三毛猫・きなこ
皆さん、私のコラムのタイトル、ご存知でしたか?
『猫と銭湯と私』です。
今まで、銭湯のことは書いてきましたが、猫のことが全く出てこなかったと思います。
そうです、私も最近、知ったからです。
この『寄席つむぎ』、もともと単発のコラムを発表する場だと思っていた私。
連載ものだと聞き、担当者の方から「好きなものの話はどうでしょう」とご提案いただき、猫と銭湯について書くことになったのでした。
それも、さっき思い出しました。
さて、京都に猫のいる銭湯はありましたが(インコのいる銭湯も有名ですね)、猫と銭湯を同時にテーマとするには私の文章力が足りない気がします。
と言うわけで、今回は我が家に来た三毛猫・きなこのことを書きたいと思います。
きなこは、17年生き、3年前、他界した飼い猫です。
我が家は両親が豆腐店を経営していたので、動物を飼うのを子供の頃から禁止されていました。
ただ、金魚やインコ、学校から預かった大きなカメを飼ったことはあります。
しかし、あの、ふわふわとした、毛がたくさん生えた可愛い動物が家にいて欲しい。
そんな願望が子供の頃からありました。
大学を卒業し、就職した京都の出版社を退職。一人暮らしをしていた京都から実家に戻った時、これからの人生について考える時間が必要や!と思い、友人と飲み歩いていました。
そんな時、とあるカウンターバーでめちゃめちゃタイプな店員さんに出会いました。今の俳優さんで言うと、中村倫也さんのような優男風。(優男って今も言うたりするんでしょうか)
友人と何回か通ったのち、ある日、なんとなく今日は一人で行ってみようと思いたち、その店に向かいました。
ちょうど、他のお客さんもおらず、いろいろな質問をし、お酒の話や彼の趣味の話を聞いた気がします。
普段、高座の上でたくさんのお客さんに向かって喋っているので、そんな風に思われないかも知れませんが、昔から引っ込み思案で、三人以上の会話では黙ることが多かった自分が、しかも、イケメンの、特に知人でもない人に話かけることができた!すごい!えらい!自分!そう思いながら、ウキウキ帰宅していました。
すると、友人から「子猫を拾ったので飼えないか?」とメールが。
後で聞いた話では、友人宅の飼い猫が外から帰ってくると、子猫がくっついて家の中に入ってきたそうです。ウキウキウォーキングの私は、二つ返事で「OK!」。
と言うのも、私が、大学と就職で京都に住んでいる間、実家の豆腐店の他に、父が寝に帰るだけの離れの家ができ、元の自分の部屋を母親に乗っ取られた私は、そちらを寝室として生活していたのです。
「離れ」でなら飼える!ウキウキシンキング!
翌朝、夢から覚めた私は、やはり動物を飼うのは怒られるかも…と後悔したのも束の間、友人宅で子猫と対面し、即「うちに来ないか!」と話かけていました。
頭のところが、茶色と黒色に分かれている三毛猫。生後1ヶ月ぐらいだから毛はまばらで、お腹がぽっこり出ている三毛猫。抱っこすると、爪を立てて私の腕にしがみついていました。
茶色のところがそれっぽかったのと、豆腐屋の猫なので、「きなこ」と命名。
両親には、1ヶ月間、内緒にして、自分の部屋だけで世話をしていましたが、そのうちに、父親も可愛がってブラッシングしてくれるようになりました。
きなこは、三年前、兄が病気で他界すると、それまで元気だったのに、突然、体調を崩し、兄を追うように向こうに行ってしまいました。病気療養のため、「離れ」は猫と兄と父が住むようになって1年半。猫なりに何かを思ったのでしょうか。
また、猫を迎えたいとは思うのですが、人と人だけでなく、人と猫もきっと出会うべきタイミングがあるような気がします。
銭湯は湯船に浸かるとぬくいですが、猫は布団に入ってきてくれるとぬくい。
銭湯と猫の共通点はぬくもりでしょうか。
きなこは、最初、毛もまばらでしたが、3ヶ月もすると、フワフワな美猫に成長してくれました。
また、あのぬくもりに触れたくなったら銭湯に行こうかなと思います。