三代目桂春団治師匠が愛したものは落語、そしてお酒と女性があるそうです。お弟子さんである桂春若師匠にふとした時に三代目桂春団治師匠が思い出された女性について、振り返っていただきました。
端正な面立ちで笑顔が素敵な三代目桂春団治師匠のことです。とてもモテたそうですよ。今だからこそ話せるエピソード、お楽しみください!
お孝はん
ようこそのお運びで厚く御礼申し上げます。
昔からこの男の道楽をば、三だら煩悩と云うてございまして、それはこの飲む、打つ、買う。つまりは酒と女とバクチ。
この三つでございますけれども
又女ごの方の好きなものも昔から芝居、コンニャク、芋、蛸、なんきん。
数が五つで男より二つ多いんですけれども、女ごの人の方は安うつきますな。
ご主人がこのキャバレーで2,3万使こうて来た。
奥さんも腹立って「ほな私もヤケクソで焼き芋5万!」・・・食べられしまへん、これはな。
男はというと若い時分から道楽から縁の切れにくいもんで・・・
おなじみ春団治『親子茶屋』のマクラの部分ですが
男の道楽、酒と女とバクチ。
うちの師匠は、博打をほとんどやりませんでした。
先輩から「酒と女はええけど博打はフー(服装身なり)を落とすさかいやめとき」と云われたそうです。
最も道頓堀角座とか神戸松竹座の出番の時、楽屋で麻雀くらいはやってはりました。
当時の楽屋はあっちで麻雀、こっちでトランプ、向こうで花札という時代でした。
なんせ当時の寄席は一日二回公演、持ち時間は一回15分。2回で30分という感じ。
その間に休憩時間が4時間半という世界ですから・・・。
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酒は日本酒オンリー
熱燗をチビチビ
これがお銚子をお替りする度にペースが早くなります。
ビールはほとんど飲みません。乾杯の時にコップ半分くらい。
上方落語協会の忘年会は、ビアホールに決まってた時期がありました。
師匠が一人で日本酒を飲んではったんで
「師匠、ビアホールですから日本酒あんまりええ事ないでしょう?」
「いやいや心配せんでも、ボクは日本酒だったら何でも美味しく頂けるから・・・」
自分で吟味して作ってもらった「春団治」という日本酒は今でも池田で売っています。
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女性の方はキレイ好きで、あの容姿ですからよくモテました。
10年ほど前の一門会。私が師匠の前の出番で
『禍は下』を演って下りて来ると、師匠が
「若、思い出すやないかえ」
「はっ?」
「お孝」
「えっ」
「お孝、ミナミの」
「え、何思い出してはるんですか?出番前にそんなん思い出さんように・・・」
このお孝さんと言うのは、私が修業期間に師匠がお付き合いしていた女性の方。
ミナミで小料理屋さんを営んではりました。
『禍は下』のお孝さんの名前で思い出したようです。
その時の師匠の嬉しそうな顔忘れられません。
前にも書きましたが、春団治の笑顔は何とも言えんくらい可愛いんです。