プロレスは相手からの技を受けた上で、耐えて耐えて反撃をする。人生哲学にも通じるプロレスには、技がたくさんあります。その中でも「必殺技」と呼ばれるものは最上級の技といえるでしょう。
その必殺技について、笑福亭仁嬌師匠につづっていただきました。落語のサゲ(オチ)にも通じる必殺技、楽しみ方とはどのようなものなのでしょうか。お楽しみください!
必殺技やあ
プロレスには必殺技と呼ばれる技がある。必ず殺す技と書くが相手を殺す訳ではない。フィニッシュホールド、つまりこの技が出れば必ず相手からスリーカウントかギブアップかKOが奪える、最上級の勝てる得意技である。
しかしプロレスの必殺技の難しいところは只勝てばいいのではない。お客さんをプロレスファンを納得させなければいけないのである。だから必殺技が炸裂するまでどういうプロセスかを楽しむのがプロレスの一つの見方である。
必殺技で思いつくのは
力道山「空手チョップ」
ジャイアント馬場さん「32文ロケット砲」「ジャンピング・ネックブリーカー・ドロップ」「16文キック」
ルー・テーズ「バックドロップ」
カール・ゴッチ「ジャーマン・スープレックス・ホールド」
ブルーノー・サンマルチノ「カナディアン・バックブリーカー」
ボボ・ブラジル「アイアン・ヘッド・バッド」
キラー・コワルスキー「フライング・ニー・ドロップ」
バーン・ガニア「スリーパー・ホールド」
ザ・デストロイヤー「足四の字固め」
ドリー・ファンク・ジュニア「スピニング・トー・ホールド」
ハンス・シュミット「シュミット流バック・ブリーカー」
アントニオ・ロッカ「アルゼンチン・バック・ブリーカー」
ドン・レオ・ジョナサン「ハイジャック・バック・ブリーカー」
フリッツ・フォン・エリック「アイアン・クロー」
吉村道明「回転エビ固め」
キラー・カール・コックス「ブレン・バスター」
ビル・ロビンソン「ダブル・アーム・スープレックス」
スタン・ハンセン「ウエスタン・ラリアット」
フレッド・ブラッシー「ネック・ブリーカー・ドロップ」
アブドラ・ザ・ブッチャー「ジャンピング・エルボー・ドロップ」
アントニオ猪木「卍固め」
ミル・マスカラス「ダイビング・ボディ・アタック」
昭和時代の必殺技やなあ。
この選手のこの技が決まれば終わり。お客さんは必殺技が見たくて会場へ足を運ぶのである。
ジャイアント馬場さんの必殺技のひとつ16文キックは左足で相手を蹴る技であるが右利きの馬場さんがなぜ左足で蹴るのか。
それはアメリカで武者修行中の馬場さんが試合で相手がロープの反動で向かってきた時、咄嗟に出したが左足であった。
馬場さんが元巨人の投手であったことは有名であるが、右利きの馬場さんがボールを投げる時は左足を上げる。その時の動きが瞬間的に左足を動かしたのである。また馬場さんの足の力は強く相手はKO。これが16文キックの誕生である。
それから帰国した馬場さんは試合の度に16文キックを披露した。わたいが若いころ見た試合では走ってきた相手レスラーの顔面にまともに16文キックが炸裂し見事フォール勝ち。解説芳の里淳三さんが「鼻が折れたんじゃないですかね」と心配していたのを覚えている。
晩年の馬場さんはタッグマッチの試合が多かった。馬場さんがコーナーで待ちかまえてると味方レスラーが敵レスラーを対角線コーナーから投げるように馬場さんのところに送る。
敵レスラーは走って馬場さんの16文キックをくらい悶絶する。
お客さんは大喜び、16文キックを見たー。それでいいのである。
それもプロレスである。