人気ドラマ『どてらい男』で将軍役を六代目笑福亭松鶴師匠を演じたことで、六代目師匠の知名度はうなぎのぼり。日本中あちらこちらから引っ張りだこになったそうです。その様子をそばでご覧になっていたのが、このエッセイコラムの執筆者である笑福亭鶴光師匠です。
六代目師匠のことです。期待を裏切りません。さてはて、どのようなことがあったのでしょうか。お楽しみください!
地方公演
関西は漫才音楽ショーがトリを取る。ところがうちの師匠の知名度が上がったおかげで、松鶴一座で九州に公演の仕事が決まった。勿論六代目がとり。こんな事は今まで考えらえなかった。
その昔地方のデパートの屋上で落語会では、横に設置されたテントの控室で師匠が待ってますと司会者が、
「さぁ皆さんドンドンお集まりください、今日を逃すともう見る機会はありませんよ」
「ほな、何かい、わしが今日で死ぬちゅうんかい」
自分自身に突っ込み入れてました。
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こんなこともあります。三波伸介さんと十日間中国地方を回った時、毎日伸介さんの楽屋へ行って笑わせてました。
三波さん、それを毎日楽しみにしてまして、所が十日目に姿を見せないので付き人が呼びに来ると松鶴が
「三波さんによろしゅう言うといて、もうネタがきれました」
地方の旅館に泊まった時、酔って帰ってきて部屋を間違えて入っていったら、カップルがなさってる真っ最中
「他人の部屋で何さらしてけつかんね」
大暴れして、おまけに有名な画家の書いた掛け軸を破ってものすごいお金を請求されたそうです。
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松鶴一座初日もう超満員、館長も大喜び.
「さすが天下の六代目笑福亭松鶴師匠今日は高座楽しみにしております」
師匠も大入り袋貰って上機嫌。もう前の漫才から奇術 曲芸 音楽ショー客席が波打つほどの大爆笑です。
所がどういう訳か師匠の落語が受けない笑わない。
あの怖い顔見てお客様は恐怖心を抱いたんですかな。高座終わって下りてくる時の苦虫を噛み潰したような顔、受けた時とすべった時の態度が天と地ほど違う。
上手い事いったときは
「お疲れさまでした」
「おい!コーヒー飲みに行こうか?美味しいケーキ食べさす店があるね、行こ行こ」
あまり笑いをとれなかった場合は
「お疲れさまでした」
「疲れてへんわい、おのれ日ごろから疲れるような仕事してるのんか、このボケ」
えらい違いやがな。こら又どなられるなと戦線恐々と待ち構えてますと、関係者の人がす~っと近づいて行って
「師匠、高いギャラ払ってますのや、噂ほどやおまへんな」
まぁ半分は洒落交じりで言うたと思いますが
松鶴表情一つ変えずに
「名物に上手いものなし」