芸人とギャンブルは切っても切れない存在。麻雀に花札、チンチロリン等々……。その理由について、笑福亭鶴光師匠につづっていただいています。今のようにスマホがない時代ですから、こうなるのも仕方がない?
今回は六代目笑福亭松鶴師匠だけでなく月亭可朝師匠の仰天エピソードも鶴光師匠に教えていただいています。必読です!お楽しみください!
ギャンブル
関西の寄席は漫才中心で、落語家は余り歓迎されない。
松鶴が『遊山舟』と言うネタををやってまして、
「州と言う字を付けると粋に聞こえる、例えば虎やんなら虎州 竹やんなら竹州やな」
「成程 虎やんが虎州で竹やんが竹州かほな万さんやったら万洲(満州)てなもんやな」
客席は水を打ったごとくし~ん。
「このお話は、今日のお客様にはお気に召さん様なので、この辺で止めさせてもらいます」
五分で降りてきた。後の出番の漫才の人が
「何をするのやな松鶴さん、まだズボン履いてないがな」
大慌て、うちの師匠素知らん顔で麻雀の続きやってました。
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大阪は二回ないし三回公演なので、間の待ち時間が4時間くらい有る。必然と楽屋のギャンブルが盛んに成る。
正月に楽屋へ生放送でテレビがインタビューに来る時、師匠が自分の部屋でポーカーをやってまして、そこへテレビカメラが。一万円札があちらこちらに散らばっている中、その時松鶴が
「これね玩具のお金で遊んでまんね」
後で警察の事情聴取を受けたそうです。
この状態がいずれ野球賭博に発展して沢山の芸人が逮捕されて大騒動になる訳ですが。
月亭可朝さんの家に刑事が来ましてやばいと思った可朝さん、ギャンブル専用の手帳を隣の家へ投げ入れて、やれ安心と応対してますと、隣人のお婆ちゃんが入ってきて
「可朝さんこれ落ちてましたよ」
即逮捕だったそうです。
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警察所内で
「私何を悪い事しました?」
と質問すると、担当官が
「あんたは暴力団に資金を提供した」
可朝師堂々と相手の目を見ながら
「それは違います、私は勝ちました。暴力団から金を取り上げた。だから表彰されるべきです」
そのまま留置場に放りこまれました。
上方落語が下火の頃、かろうじて売れてたのは米朝・松之助・福郎、この三人。落語ファンは六代目の事は知ってましたが世間では無名。その松鶴が日の目を見る日がついに来ました、詳しくは次回に。