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⑱九官鳥~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし:笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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九官鳥の小噺をご存知でしょうか?主に東京の落語家が高座でマクラに使うことがあります。その小噺の元ネタ、実は六代目笑福亭松鶴師匠だったそう。いずれ古典になる小噺になるなんて、さすがです。

その小噺の成立背景について、笑福亭鶴光師匠につづっていただきました。いやはや、よく見ておられる。お楽しみください!

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九官鳥

うちの師匠は九官鳥を可愛がってました。弟子がイタヅラで、その鳥の鼻の穴につまようじを一本づつさして、そのまま忘れてしまいよった。そこへ師匠が帰って来て

「誰やこんな悪さをしたのは」

するとその弟子

「私は気づきませんでしたが」

と惚けた。

「ほな何か?九官鳥が自分で籠を開けて、台所へ行って自分の鼻につまようじをさして籠へ戻って自分で又閉めたとこういう事か?」

「はい」

明くる日もう一度尋問しようと待ってますと、その弟子はそのまま姿を消したそうです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

今東京の噺家が使ってる九官鳥の小話は原点が松鶴の逸話。

師匠の癖は電話を弟子取ると「誰や、誰や」と言うのが口癖。それをこの鳥が真似するようになった。

ある日、表にたばこを買いに出かけた。まぁ近くやからと、鍵をかけないで家を出ると入れ違いに御用聞きの酒屋さんが入って来て

「今日は」

すると九官鳥が

「ダレや」

「酒屋です」

「ダレや」

「酒屋です」

とうとうその酒屋、気を失ってそこへ倒れてしもうた。そこへ松鶴が帰って来て倒れてる男を見て

「ダレや」

すると九官鳥が

「酒屋です」

これが元ネタです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

こんな逸話もありまして、師匠が酔っぱらってソフトクリームを舐めながら道頓堀の繁華街を歩いてますと、向こうから来た反社会勢力の五,六人その親玉が

「師匠、酒飲みがそんなもん食べたらいけまへんがな」

と親しげに声を掛けると、ニコッと笑い返せばそれで済んだんですが、酔った勢い

「やかましいわい、お前らみたいな者に言われる筋合いはないわい」

「何やと」

怒った連中が周りを取り囲んだ、その周囲も人だかり松鶴危機一髪。

そこで六代目がどない言うたと思います?その中のリーダーの顔を見ながら

「親のかたき」

その一言でその集団はあきれて去っていきました。後日師匠の家に稽古に伺うと顔が腫れてました。

「師匠どうしました」

「寝ぼけて二階から落ちたんじゃ」

そのままトイレへその瞬間あ~ちゃんが、笑いを堪えながら

「昨日ミナミで立ちしょんしてる強面の兄ちゃんに、立派な物持ってまんな、言うて殴られたんやて。鶴光には言うなよ、弱み握られたらいかんさかいに」

わてが師匠の弱みを握ってどうするね?

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