年越しの瞬間はカウントダウンライブで過ごす、という方も少なくないのではないでしょうか。音楽のステージやフェスはお客さんが盛り上がるからこそ成り立つものです。
大学卒業後は落語家になると既に腹を括っていた桂優々さん。
学生時代に桂優々さんが音楽の現場で感じたことは、彼の目指すべき落語に繋がっているようです。今回もお楽しみください。
Getting Better
2008年から2009年に変わる瞬間、私は大きな施設に一人だった。
当日大学四回生、卒業後は落語家になると既に腹を括っていた。
死ぬまで好きな事して過ごそう、ただそれだけ。
そんな転機の年が始まる瞬間、私は大きな施設に一人だった。
知り合いなど周りにもちろん一人もいない。
大きな施設なので、くまなく探したら知り合いや友達はいたかもしれないが、別段探そうという気は微塵もなかった。
そんな無気力な中、私は大きな施設に一人だった。
実は前年の2007年から2008年に変わる瞬間も同じ施設にいた。
ただこの時は中学からの友達と一緒にいた。
その時は笑顔で年を越した。
ただ2008年から2009年に変わる瞬間、私は大きな施設に一人だった。
しかし、本当は一人じゃなかった。
周りには沢山の人達がいて、大きな施設なので数えられないが少なくとも2万人ほどの人がいたはずだ。
大きな施設とはインテックス大阪、年越しの瞬間はCOUNTDOWN JAPAN WEST(以下CDJW)と言う年越しフェスが開催されていた。
今関西年末の大型フェスと言えば大体、年越し一週間前に京都でロックバンドROTTENGRAFFTY主催の「ポルノ超特急」と、FM802が開催する「RADIO CRAZY(以下レディクレ)」の二つだが、当時はCDJWのみだった。
しかもレディクレは開催が年越しまえの二日か三日、大体26〜30日に開催されるがCDJWは29〜31日の三日間、年越しまで開催されていた。
CDJWはウェストとあるように、東京でその前からあったフェスを大阪に持ってきた形だ。
当時大学生の私は肉体的、そして経済的にも東京まで行くのは大変なので、とても有り難かった。
当時としては、フェスが浸透する過渡期でチケットで東京で大成功しているフェスでも大阪では完売にはならず、残念ながら赤字が続きCDJWはなくなってしまい、翌年からレディクレが始まった。
やはり年越しの瞬間、フェスで過ごしたい、音楽の海に溺れていたいと言う人は沢山いると思うのでCDJW復活希望ないし、レディクレが年越しの瞬間まで開催される事を切に願っています。
話を戻そう。
そんな中なぜ私は一人だったかと言うと、友達や知り合いのように心の距離が近い人が一人もいなかった。
前年は友達と一緒だったのでそうではなかった。
しかしこの年は周りには友達やカップルが溢れる中にポツンと一人。
一人だったが、実は孤独を感じなかった。
これが不思議なのである。
そして目の前にはステージ、フェスに来てるからロックスターがギターを掻き鳴らしながら歌を歌っているかと言うとそうではない。
スピーカーから確かに音楽は流れてくるが、全てCD音源である。
ステージ上のGetting Better(以下ゲッチン)と言うDJ集団があらゆるミュージシャンの曲を繋いで目の前の私を含むお客さんに流しているのだ。
DJと言うと、
①ラジオ番組で司会進行を務める人。
②夜な夜なクラブで若人が薄暗い中踊っている。そんな時にテクノやユーロビートの四つ打ち主体の音楽をかけている人。
③TRFのメンバーで「Easy to dance!」と叫びながらお客さんを煽る派手な格好したおじさん。
この三つが世間のイメージだと思う(桂優々調べ)
特に当時の私は②番のイメージが大きいく、ロックを中心に流す人もいるのかと知って驚いた。
そしてそんなロックフェスのDJブースでかかる曲は大概盛り上がる。
そりゃそうだ。
みんな大体似たような曲が好きな人の集まりだから、曲のイントロが流れただけで大体わかる。
一人で参加している私は、年越しの瞬間はどうするか悩んでいた。
カウントダウンのアーティストはどちらも知っていたが、全曲くまなく知っていたかというとそうではない。
ヒットした曲とシングル数曲は知ってたが、ちょっとコアな曲やアルバム収録曲を歌われたら知らないので個人的な盛り上がりが少し薄れてしまう。
予習してきたらよかったのだが、それもしてこず。
それならばと、ライブに来てるのに年越しはDJブースで必ずわかる曲だらけで年を越そうと決めた。
2008年から2009年に変わる瞬間、私は大きな施設に一人だった。
一人だったが孤独を全く感じなかった。
頭空っぽにして一つの音楽をみんなで共有して、踊ったり歌ったり、とても幸福感に満ちたピースフルな空間だった。
来年は絶対この空間には立ち会えないけど、また来たい。
心からそう思った。
そしてこんな空間を落語会でも作りたい。
頭空っぽにして一席の落語をみんなで共有して、笑ったり泣いたり、友達やカップルと来ようが、一人だろうがそんな事は関係ない、ピースフルな空気。
そしてまた来たいな、そう思ってもらえるような
空間。
それを落語で作りたいと、落語家になる一つの指標を貰った。
この時の思いが強く、後にゲッチンのスタッフに一時的に参加していた時期もありました。
そして今年は自分でDJイベントを開催したりしてます。
あの時一人だったけど、同じ日同じ場所にいた人と出会い友達になりました。
あの時一人だったけど、一人ではなく、将来の友達が一緒にいたなんて、縁は異なもの味なもの。
今でもあの時みたいに私が落語する時は、また来たいなと思ってもらえるように、それを第一に考えてます。
桂優々のオススメ
the telephones 「DANCE FLOOR DISCO」
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落語と音楽の関係性について改めて考えさせてくれた桂優々さん。あなたのご意見もぜひお聞かせください!
優々さん出演落語会『いつつぼし』が11月17日に開催されます。ぜひお越しください。
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