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下駄ばきでふらっと来られる寄席小屋に!古々粋亭席亭・井上雅博さんにインタビュー!

ふじかわ陽子

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近鉄奈良駅からほど近くにある寄席小屋、古々粋亭をご存知でしょうか。現在はお弁当の販売も行っている喫茶店でもあります。

今回は古々粋亭席亭の井上雅博さんに、色々とお話をうかがってきました。井上さんの想いとは?じっくりお楽しみください!

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大反対されての開店

――初めてうかがいましたが、私が住む高槻から意外と近いですね。京都から一本ですから。

大阪の人はなんだか「奈良は遠い」って言うんですよ。来たら近いでしょ。

――はい。これならまた来たいって思えます。ほんと素敵な寄席小屋で。元から寄席小屋のようなものの経営をされていたのでしょうか?

元は大阪でブティックを経営していていたんです。バブル崩壊で客足が遠のいて、親の代からのお客さんは高齢化……。それで、もう辞めようかなと。昔から飲食店をやりたかったから、故郷の奈良で喫茶店を開店したんです。

――喫茶店にあこがれがあったとか?

いえ、喫茶店なら簡単にできるやろと、軽いノリで(笑)。ただの喫茶店じゃなく、元から落語が好きやったから、ライブハウスのような形の寄席小屋にしました。奈良には寄席小屋が少なかったから。

――思い切ったことをされたんですね。周囲の反応はいかがでしたか?

もう大反対(笑)。全く畑違いのこと、なんでそんなんすんの?って。うちの嫁さんは、私が一回口にしたら何も聞かないと知っているから、黙って腹にだいぶ持って、ついてきてくれました。しばらくして、やっと諦めが入った様子です。

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大災害を目の当たりにして価値観が変わる

――奥さんも大変や……。寄席小屋の経営は初めてとのことですが、どなたか芸人さんでアドバイザー的な方はおられなかったのでしょうか?

笑福亭純瓶 さんに最初のころ、色々とうかがっていました。あとは独学。性格が「やってみりゃなんとかなるか」なもんで、気楽なんですよ。開店の時、新聞社の方や奈良テレビの方が来られて、色々と尋ねられたけど、ぶっちゃけるとノリ(笑)。

――ノリで奥さんも……。

一人でやるのはちょっとね。寂しがりやから(笑)。自分でもごっついことやったなぁと思います。嫁さんがあきれかえるのも分かるなぁ。54歳で全部ほって、まったく畑違いのところへ飛び込んで、何やっとんねんって思います。

――そうさせた出来事はなんだったのでしょうか?

東日本大震災です。それと、阪神淡路大震災です。大きな災害を目にして、価値観が変わりました。我慢しても結局全部なくなるやないか、って。お金も物も全部。せやったら、好きなことをやってみようと思ったんです。

――その好きなことが、喫茶店と落語だったんですね。

はい。やればなんとかなるやろの精神で、なんとかやっています。紆余曲折、今も色々あるけどね。

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こんな企画、あんな企画

――2018年10月にオープンされたとのことですが、最初に高座へ上がられた方は?

笑福亭純瓶 さんです。金曜の晩に「古々粋寄席」を開催して、毎回ゲストを連れてきてくださったんです。そのゲストが次のメイン出演者になりました。演者さんが変わると、同じネタでも違って聞こえるから面白いですね。

――それこそ落語の醍醐味かも。

ですね。飽きません。今度、同じネタ別の演者の会をやってみたいです。

――それ良いですね。私もやりたいんですよ。他にもやってみたい企画はありますか?

講談の敷居を低くしたいと考えています。落語よりどうしても敷居が高い。神田伯山さんで知名度は上がったけれど、実際に聞いたことのある人は落語より少ないでしょ。どうしても難しい。開演前にリーフレットか何かを配って、事前に勉強してもらえたらと思うんです。

――名前ひとつとっても、官職名が入ったり字名が入ったりしてよく分からないですよね。

そうそう。今は『忠臣蔵』ですらテレビでやらないし、『水戸黄門』もなくなってしまった。これでは若い人がとっつきにくいと思うんです。講談を楽しむなら、背景を知らんと。極端な話やけど、歌舞伎で『ワンピース』をやってるでしょ。ここまでやらなくても、講談もお客さんに寄り添った催しをやっていかないとと思っています。

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下駄ばきでふらっと来られる寄席小屋

――ほんまですね。寄り添いといえば、噺家さんやお客さんにはどう寄り添っておられますか?

噺家さんには精一杯のおもてなし、お客さんには啓蒙やないけど、何も知らん人が時々おるから。今はだいぶ少なくなったけど、落語といえば笑点やと思うてる人もいるんです。そうやない。お客さんの頭の中で楽しんでもらうものやと。

――知らない人にとったら、落語も敷居が高いものなんですね。

せやね。あと、東京に比べて上方は敷居が高いように感じます。寄席小屋で飲食禁止で、お行儀よく聞くもの、芸術になってしまっている。音が少しなっただけで気になると言われると、元は生玉さんで始まった大道芸やのになと思ってしまいます。

――これも四天王の功罪の一つだと、私は個人的に思います。特に米朝師匠が始められたホール落語会は、落語を大衆芸能から遠ざけた。

ほんまは、下駄ばきでふらっと来て、わぁっと笑って、パッと帰るんがええんやけど。

――古々粋亭さんはそうありたい?

そうですね。うちは肩ひじ張らずに気楽に見ていただける寄席小屋ですし、気楽にお越しいただければ。コロナ対策設備も用意しています。安心安全に楽しんでいただけて、明日への活力になってほしいと願っています。……ありきたりやね。もっとおもろいこと言えよって(笑)。

古々粋亭でお待ちしています!

今回は古々粋亭席亭の井上雅博さんにじっくりお話をうかがいました。とても元気な方で、お話していると私まで元気になってきました。発想豊かな方でもあり、同じネタ別の演者は実現するかもしれません。気長にお待ちください。

古々粋亭は、近鉄奈良駅から徒歩3分の場所にあります。周辺に観光地も多いので、お茶を飲みにふらっと訪れるのもありですよ。

落語喫茶 古々粋亭

住所:〒630-8226 奈良県奈良市小西町9

TEL :0742-94-7707

営業時間:14:00〜17:00