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上方落語の特徴って何?桂米紫師匠の答えは○○○○!じっくりいろいろインタビュー

ふじかわ陽子

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アバンギャルドな芸風が特徴の桂米紫師匠。歯切れの良い高座は、コアなファンだけでなく多くの人を魅了しておられます。高座をひとたび降りると面倒見の良い優しい方で、後輩だけでなく先輩からも頼られることも。

そんな桂米紫師匠にじっくりお話をうかがいました。桂米紫師匠の考える上方落語の特徴とは?お楽しみください!

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上方落語の特徴は?

――昨日公開された記事では、上方落語の特徴はハメ物ではないかと。他にも上方落語の特徴で、東京にない魅力はなんでしょうか?

シリアスになり過ぎないところでしょうか。厳密には上方に人情噺はありません。東京って、言い方悪いかもしれんけど「カッコつけ」の文化やろ。せやから人情噺が成立すんねん。上方は照れ隠し的にグッとシリアスになると打ち消すような笑いがある。

――言われてみればそうですね。東京は落語もシュッとして、大阪はもっちゃりしたがる。

せやろ。松竹新喜劇なんかまさにそうで、シリアスなシーンにアホの小島慶四郎が出てくる。ストレートに泣くのが恥ずかしいねん。でも、これが真実に思えるんやわ。

――というと?

世の中って、悲しいだけのもの、楽しいだけのものってないやろ。悲しいけど笑えるものあるし、美しいけど傷のあるものもある。だから、僕は上方落語の方がリアルやと思うんや。

――私は逆に現実味のなさは、ストレス解消になると思うんです。東京の落語って、言葉が悪いですけど「綺麗ごとの妙」があって、私は好きだなぁ。

綺麗ごとといえば、ハリウッド映画もちゃうかな。僕もハリウッド映画は好きやな。ストレートに感動できるやん。上方落語は単館上映の映画っぽい。逆に東京の人から見たら、上方落語はゴテゴテいらんもんが多いように見えているかも。

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東西の違いはリハーサルにも

――なんか付け加えたくなるんですよね。DNAに刻み込まれているというか。すっといくと不安になる(笑)。

でも、人生ってそういうもんちゃうかな。ストレートにいくことなんてなくて、ゴツゴツ凸凹があって当たり前で。そんなん込みで「面白い」と思えるのがええんやと思う。

――そう言っていただける方がおられるだけで、私は励みになります。私は12年以上療養で引きこもらざるを得ず、普通の人と同じような人生は歩めていないので。

これからこれから。なんというかな、上方落語は「あれもええやん、これもええやん」があると思います。

――ネタはそうですけど、噺家は視野の狭い人が多いような……。

それにはノーコメントで(笑)。他にも東京と大阪の違いを感じることがあって、それはリハーサル。東京の場合、リハーサル通り本番を行えるのが良いとされている。リハーサル通りやって100点。上方の場合は、リハーサルはリハーサルでやって、本番にどれだけ壊せるか。だから、30点にもなるし180点にもなることもある。

――コントや新喜劇だけでなく、大喜利もそんな感じですね。

アドリブりょくというか、何が飛び出るか分からない面白さが上方にはあると思います。例えば、ざこば師匠、日によって場外ホームランが出るから面白い。それこそ生きた落語やと思うし、リアリズムちゃうかな。

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破壊できるだけの伝統がある京都は面白い

――なるほど。ドキドキ感というか。東京と上方の違いは分かりましたが、上方の中でも京都と大阪の違いってあるでしょうか?

京都というても、御所の周りの限られた地域のことやし。京都人やったら、うちの師匠の塩鯛もそうやし、団朝師もそうやね。あと、僕も。

――京都人っぽくない……。そういえば、仁嬌師匠も京都出身やった。私の中の京都人って、なんとなく排他的なところがある印象なんです。

そうかぁ?中におると分からんのかなぁ。ギャップが多い街やと思うよ。例えば、学生運動が起きたのは京都。伝統があるから伝統を壊そうという動きもある。落語の発祥も京都やしね。

――新しいことを始めるなら、京都が面白い?

そうやね。破壊する伝統があるのが面白いんちゃうかな。

――京都の噺で有名なのが『はてなの茶碗』だと思うのですが、私は伝統や権威主義を笑う噺だと捉えています。米紫師匠はいかがでしょうか?

僕は権威主義を笑う噺やないと思うてます。落語全般にいえることやけど、いかにお客さんの期待を裏切るかが肝かな。茶金さんに諭されて改心したかと思いきや、水漏れのする甕を見つけてくるんやから、人間なんてそうそう変わるもんやない。

――あんなに盛り上げておいて、そういうオチってなりますね。

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目を背けたい真実が落語にはある

人間なんてそんなもんとちゃうかな。多くの人が目をそむけたくなる後ろ向きなメッセージが、上方落語の中には入っていると思ってんねん。もう1個例を挙げると、『立ち切れ線香』、あれってどういう噺やと思う?

――うーん……。悲恋ものですよね。日本版『ロミオとジュリエット』?

色んな意見があるけど、僕は皮肉な噺やと思うてんねん。もし小糸が若旦那さんのことを思い続けていたら、三味線も弾き続けるはず。でも、止めてもうたやろ。僕は「ああ、やっぱり芸者やったんや」って思うた。

――プロやと思うことで、想いを断ち切ろうとしたのかも。

生きるって綺麗ごとじゃいかないからね。僕は常々思うねんけど、弱ってる人間には前向きなメッセージやなくて「人間ってそんなもんちゃう」って言いたい。ズルいことを考えても、人間やし。それにズルいこと考えんと、人間進歩ないで(笑)。正直さもズルさも込みで、人間なんやから。

――ズルいことで進歩って、米紫師匠らしい(笑)。ほんま、楽しようズルしようと一生懸命、工夫しますね。

せやろ。ズルいことで進歩って、目を背けたい真実やん。こういう真実を突き付けられる方が、僕は元気になるな。

ミニシアター系の落語家に

――他に米紫師匠の元気の源はありますか?

映画が好きでよく見ています。ハリウッド映画も好きやな。豪華絢爛な映画も好きやけど、ミニシアター系の方が真実を描いていると思う。僕はミニシアター系の落語でありたいなと思う。

――というと?

27年やってきて、自分が好きな落語を高座にかけているという自負があるんです。それはメジャーになれるもんじゃない。自分の思うメッセージをもった落語には近づいてきているかなと思うてるんです。

――それがミニシアター系?

そうそう!映画だとウッディ・アレンが好きやねんけど、僕はウッディ・アレンの映画がないと生きていけないほど好きやねん。ハリウッド大作が好きな人って、恐らく『アベンジャーズ』にそこまで依存してないと思うねん。『アベンジャーズ』がなくても『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がある、みたいな(笑)。 ミニシアター系が好きな人って、僕のウッディ・アレンみたいに「絶対これしかあかん」ってぐらいのレベルで依存する人が多い。

――広く浅くじゃなく、狭く深くといった感じでしょうか。

それそれ。僕みたいなのがメインストリームになったらあかんと思うてんねん。おもろいサブカルチャーみたいな存在でありたいな。僕のお客さんって数は少ないけど、恐らくミーハー的に落語が好きっていう人は少ないんちゃうかな。僕の落語に依存している人が増えてきている感覚があんねん。

――なんか分かります。「米紫さんは好きやけど、○○さんは嫌い!」みたいな。私、そういう人好きです。最後になりますが、『寄席つむぎ』の読者さんに一言お願いします。

ここ何年か落語をするのが楽しくなってきました。落語に出てくる登場人物を可愛いと思えるようにもなってきました。自分の理想に近づいてきていますので、また機会があれば見てやってください。

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動楽亭でお待ちしています!

今回はじっくり桂米紫師匠にお話をうかがいました。10数年ぶりにお会いしたのですが、変わらず色々とお話していただきとても嬉しかったです。不器用でもご自身の道をまい進される姿は見習う点が多く、これからも人生の先輩として学ばせていただこうと感じました。

桂米紫師匠ご出演の「米紫の会 vol.59」は7月29日(木)に動楽亭で開催されます。要チェックです!

米紫の会 vol.59

日時:2021年7月29日(木) 19時開演(18時半開場)

会場:動楽亭(大阪メトロ御堂筋線/堺筋線「動物園前」駅1番出口すぐ ファミリーマート横の階段を2階へあがる)

料金:予約1800円/当日2000円

出演:桂米紫(二席)/桂三幸/桂小きん

お問い合わせ:090-6678-7279/beishi-katsura@softbank.ne.jp【米紫落語会事務局】