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⑦弁当箱事件~東海道島田宿からお江戸へ:三遊亭遊喜

三遊亭遊喜

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三遊亭遊喜師匠の思い出コラム第7回です。島田市立第一中学校で過ごした日々についてつづっていただいています。前回は『中二病事件簿』と称して、大人になりきれない中学生時代の苦い思い出について振り返っていただきました。

さて今回は、『中二病事件簿』の続編です。事件があったようですよ。三遊亭遊喜師匠の青春時代、一緒に感じてください。

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弁当箱事件

前回、中二病事件簿を掲載したら、反響がありまだまだあるはずだとの脅迫?を同級生から受けましたので、その脅迫に負けてもう少しだけ綴ってみたいと思います。

通っていた中学校は当時給食ではなく、お弁当でした。育ち盛りの中坊は競うように馬鹿みたいに大きな弁当箱を持参し、昼食は早食いで競い、食べ終われば昼休みを大騒ぎしながら遊ぶという、本物のクソガキ中坊が大半でした。 

そんな毎日を過ごしていたある日のこと。午前の授業が終わり、クラスのみんながお弁当の支度をし始めたら、Dくんが「お弁当がない」と言い出したのです。しっかり者で人が良いDくんは、食いしん坊でちょっとぽっちゃり。柔道部の仲間からはドラえもんみたいだから「どらちゃん」と呼ばれていたぐらいの愛されキャラでした。 

そんなDくんのお弁当がない!一大事は一大事だけど、みんな、「家に忘れて来たんじゃーないの?」「学校から近いし家に帰って食べてくればいいんじゃない?」ぐらいな感じで先生に伝えたら、家に帰って食べて来なさいとのことで、Dくんも、「じゃー 家に帰りまーす」と帰宅。

クラスのみんなもお弁当を食べて昼休みを満喫し、そろそろ午後の授業が始まりそうな時に、Dくんが多分いつもより余計に食べてきたのだろうと思われるぐらい満足そうな顔で教室に戻って来たのでした。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

私が授業の準備をしようと教科書が入っていた鞄を開けると、見たことのない大きな弁当箱が。一瞬間違って他の人の鞄を開けてしまったのかと思いましたが、間違いなく私の鞄なのです。授業担当の先生が入ってきて授業を始めそうになったので、私は授業を止めてしまうのは申し訳ないと思いながら「身に覚えのないお弁当が鞄に入ってました。もしかしてこれはDくんのですか?」と言うと、Dくんは「それ僕のです」と一言。

それから私は学年主任のところへ連れて行かれ、事情聴取が始まりました。

学年主任「渡辺くん(私)がやったのですか?」

私「いえ、違います」

学年主任「なぜ鞄にDくんのお弁当が入っているのですか?」

私「分かりません」 

学年主任「クラスの人から恨まれているのですか?」

私「そんなの分かりません」

学年主任「Dくんをいじめたかったのですか?」

私「Dくんとは仲良しだと思います」

学年主任「おかしいですね。どういうことですかね?」

何が起きているのだ!これはもうミステリーだ!もし本当に私がDくんのお弁当を自分の鞄に入れたとしても、自分で「ここに有りました」と言うはずがないし、でもこのままでは完全に犯人は私になってしまう。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

学年主任は早く白状しなさいと言わんばかりのオーラで迫ってくるのです。 

そんな時にチャイムが鳴り休み時間。事情聴取も一時お休み。

一旦教室に戻ると、クラスのみんなが「おい、どうだった?」「お前がやったの?」

<いや、オレじゃーないから> 

「じゃーなんでお前の鞄にDくんの弁当が?」

休み時間でもクラスのみんなから事情聴取が始まりました。そこに前回コラムに登場した幼なじみのKくんが現れ、いきなり言ったセリフが「Dくんの弁当シャレで渡辺の鞄に入れておいたけど気が付いた?」

クラスのみんなは一瞬で何が起きてるのか理解ができなかった様子でしたが、私は一瞬で分かりました。Kくんの最上級のシャレだったのです。

KくんとDくんは柔道部の仲良しだったので、こんな事する奴はKくんしかいないだろう。 ちゃんちゃんといくと思っていたのでしょう。ただそこに誤算があった。私は別の袋にお弁当を入れていたのでお弁当の時間には鞄をあけません。もしお弁当の時間に気が付いていたら、ただのイタズラで事はすんだはずですが、そうはいかなかったDくんはわざわざ自宅に帰ることに。昼休みをまたいで鞄を開けて気が付いたので事が大きくなり、学年主任まで出てくる羽目になったのでした。

それからすぐにKくんを学年主任のところへ連れて行き、ようやく先生もシャレだったと分かってくれました。ちなみにDくんとはちゃんと今も仲良し。このご時世色々ありますので誤解しないでくださいね。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

地元に帰った時に同級生と飲んだりすると、「僕の弁当がなくなった事件簿」のことが話題になります。当のDくんも当時を振り返り、「食いしん坊の俺が弁当を忘れるわけがないから、あの時頭がパニックになってしまったよ」とニコニコしながら話をしてくれます。 

クラス替えをする時に誰と誰は一緒にしない方がいいといった話し合いがあるそうですが、たぶんKくんと私はそのように見られていたのかもしれません。クラスが違ってもこんな事件が起きるのですから弱ったものです。

ちなみにDくん、食べなかった弁当は家に帰ってからこれはこれでおいしく食べたそうです。さすがです。コロナが落ち着いたら、Dくん、Kくん、私の3人で大井川の河川敷に行って大きな弁当を食べたいです。

つづく