普段何気なく使っている「落語」という言葉。しかし、どのようなものか詳しく説明できる人は多くないでしょう。落語家の立川わんだ師匠は、この「落語とは何か?」を考察しておられます。
今回、立川わんだ師匠は「落語が好き」という表現に疑問を投げかけます。何気なく使っている言葉を考えることで、一層落語への理解が深まるのではないでしょうか。一緒に考えていきましょう。
不完全な表現
ここで少し話を戻します。
「落語が好き」という人がいますが、これはどういう意味なのでしょうか?正しい表現なのでしょうか?
私は不完全な表現だと思います。
まず、落語を演じるのが好きなのでしょうか?落語を観る(聴く)のが好きなのでしょうか?また、落語ならどんな落語でも好きなのでしょうか?滑稽噺でも人情噺でも怪談噺でも、古典落語でも新作落語でも、すべての落語が好きなのでしょうか?
また、名人の落語家が演じた落語でも、アマチュアが演じた下手な落語でも、落語でありさえすればいいのでしょうか?
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「映画が好き」という場合は、どうでしょうか?
映画を撮るのが好きなのでしょうか?映画を観るのが好きなのでしょうか?
恋愛映画でもコメディー映画でもアクション映画でもSF映画でもホラー映画でもファンタジー映画でも、有名監督の映画でも新人監督の映画でも学生の自主制作映画でも、映画でありさえすればいいのでしょうか?
「テレビが好き」という場合は、どうでしょうか?
テレビという機械が好きなのでしょうか?テレビ番組を観るのが好きなのでしょうか?
ニュースでも天気予報でもドラマでもドキュメンタリー番組でもスポーツ番組でもお笑い番組でも料理番組でも釣り番組でも囲碁・将棋番組でも砂嵐でも、テレビで放送されているものならば、何でもいいのでしょうか?
「本が好き」という場合は、どうでしょうか?
本という物体が好きなのでしょうか?本を読むのが好きなのでしょうか?
小説でも実用書でも絵本でも漫画でも、ハードカバーでも新書でも文庫でも、雑誌でも時刻表でもアルバイト情報誌でも通販カタログでも旅のパンフレットでも、本という形にさえなっていればいいのでしょうか?
恐らくすべて好きという訳ではないと思います。
好きなものが多い、半分以上くらいは好きというくらいなのではないでしょうか?
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普段何気なく「落語が好き」と使っている人がいますが、このように深くは考えずに使っていると思います。
また好きの度合いも、人によってだいぶ違います。月に何回も寄席や落語会に通って生の落語を観に行く人は、好きと言っていいと思います。月に一回だけでも、まだ好きと言っていい方です。
落語はCDやYouTubeだけで聞いているという人でも、「落語が好き」と言う人がいます。もう何年も聞いてないけど、昔テレビで観た落語が面白かったから「落語が好き」という人に会ったことがあります。
このように「落語が好き」という人の実態も、詳しく聞いてみないと分からないものです。
さて話は戻って、次は古典落語の考察をします。
〈以下次回〉