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思い出のTSUTAYA~名古屋からやって来ました:桂三実

桂三実

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桂三実さんは名古屋市出身。高校卒業まで名古屋市で過ごし、たくさんのものを吸収したのだそう。その中でも大きな存在なのが、レンタルショップのTSUTAYAだったとのこと。そのTSUTAYAが閉店し、三実さんは…。

あなたの中にも、自分を成長させてくれた存在はありますか?

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思い出のTSUTAYA

随分とご無沙汰になってしまいました。これを書き始めたの確か1月だったはずなのにあれよあれよと7月に。おおいに反省。

皆さんお元気ですか?私は最近ようやく松たか子さんの凄さに気付いたところです。

さて、いつもここでは夢を書いてきましたが今回は違います。先頃『成瀬は天下を取りにいく』(著:宮島未奈)を読みました。主人公の中学生の女の子、成瀬あかりの大胆でまっすぐでブレない生き方が魅力的なこの本。今年の本屋大賞にも輝きました。

作中に、成瀬が子供の頃から幾度となく通った思い入れのある地元の西武百貨店が閉店してしまうという話が出てきます。成瀬は大変ショックを受けるのですが、私もそれと重なるような出来事がありました。

名古屋の実家の近所に1階が本屋、2階がCD・DVDレンタルコーナーのTSUTAYAがありました。昨年12月に帰省した際にふと立ち寄ると、あろうことか2階のレンタルコーナーがフィットネスジムに変わっていたのです。まさに青天の霹靂。頭が真っ白になり、自分より師匠の方が先に楽屋入りされてたことを伝えられたときより大きな声で”えっ!!”と叫んでしまいました。どれだけ足を運んだことか…。

朧げな記憶ではありますが、まだ8cmシングルがレンタルされていた頃からそのTSUTAYAには行っていました。当時はNetflixやSpotifyのような映像・音楽のサブスクは存在しませんし、中学の頃にはYouTubeはありましたが今ほど多種多様な動画はなかったです。ですので、DVDやCDを買うお金のない子供の私はほぼ毎週そのTSUTAYAでCDやDVDを借りて、返却のときにまた借りてを繰り返していました。

中2の時にふと借りたダウンタウンのVHSの漫才に衝撃を受けたのをきっかけにお笑いにのめり込み、そこからは毎週のようにお笑い関連の作品をひたすらレンタルする日々。

そして中3の時に借りた桂枝雀師匠のCDで人生で初めて落語に触れます。それをきっかけに落語に興味を持ち今度は落語のCDを借りはじめます。いわばそこのTSUTAYAのおかげで落語家としての今があります。借りるだけでなく漫画や本、参考書は1階の本屋で買っていました。

要するに私は落語家になるまでの18年間、そこのTSUTAYAによってほぼ全てのエンタメを吸収したと言っても過言ではないのです。最も行ったお店がTSUTAYAだし最もお金を使ったのもTSUTAYA。初めて買ったCDもそこのTSUTAYA。(初めてAVを買ったのは難波のゲオ)。

この言葉の解釈は千差万別ですが、紛れもなくあの日々は私にとって”青春”でした。紛うことなき青春。雲ひとつない昼下がり、自転車に乗りながら今日は何を借りようかと心踊らせた行き。早くその面白さに触れたくて胸が高鳴った帰り。

人生での数多ある思い出の中でその時の風の匂いまで記憶している数少ない思い出です。大阪に住むようになっても実家に帰ったときは特に用があるわけではないのに気が付けばTSUTAYAに足を運んでいました。

がしかしそのTSUTAYAはもう無くなりました。心にぽっかりなんてクソ喰らえぐらいどでかい穴が空いてます。世の中で私だけでしょう、aikoの歌詞をTSUTAYAブックセンター名豊緑店に置き換えて聴いたことがあるのは。

成瀬は将来自分がデパートを建てると力強く宣言します。流石に私の力で新しくTSUTAYAを建てることはできませんが、あの時の私みたく落語会でも動画でもなんでもよいので私の落語に触れて、落語家を志す人が現れたらこんな嬉しいことはないでしょう。今大阪で落語家になる人は年に1人とかで極端に少ないです…。なのでぜひ。

でもその人が私きっかで落語家になったのに私以外に弟子入りしたらショックで私が落語家を辞めるかもしれません。そうなったら名古屋に戻ってそこのフィットネスジムで働きます。

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