今月も、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠による「ヨセゲー」が開催されました。
4月のテーマは「リンク落語」。昨年7月に引き続いての試みです。フライヤーには「その場の即興勝負」の文字が踊り、開演前の客席にも心なしか緊張感が漂います。いったい、どのような展開になったのでしょうか?
3つのキーワードから「リンク」がスタート!
会場に入ると、舞台の上には何やらボードに貼られた紙とペンが用意されていました。実はこれ、最初の演者のテーマを決めるためのもの。客席からキーワードを3つ募り、それらをすべて取り入れた落語から「リンク落語」はスタートします。そこからは、前の演者の世界観を織り交ぜ、噺をリンクさせていく――、というルールです。
じゃんけんの結果、三遊亭遊喜師匠・笑福亭里光師匠・春風亭伝枝師匠・柳亭芝楽師匠の順番になりました。まるでトップバッターになることが分かっていたかのように、最初からしっかりと羽織を着ていた遊喜師匠にびっくりの一同です。
キーワードは、春らしく「入学式」「桜」「記念写真」の3つに決まりました。ではスタート!といきたいところですが、袖からは遊喜師匠が「もうちょっといろんな話してよ」と残る3人にリクエスト。笑
さあ、いよいよ「リンク落語」が始まります!
「入学式」「桜」「記念写真」という3つのキーワードを託された三遊亭遊喜師匠が演じたのは『まんじゅう恐い』。
ヘビやナメクジ、ミミズにクモなど、「恐いもの」について話し合う男たち。
その中でひとり、みんなから煙たがられている「源ちゃん」は「まんじゅうが恐い」と言います。このときとばかり、源ちゃんをこらしめてやろうとするものの――。
「まんじゅうー!」「こわーい!」と叫びながらも、みんなが買い集めたまんじゅうをむしゃむしゃ食べる源ちゃんを、コミカルに演じる遊喜師匠。「こわいよー!」「値の張るものほどこわい!」と叫ぶさまに、客席も大爆笑!
「桜」「入学式」という2つのキーワードは、仲間を集める会話の中で登場。残るは「記念写真」ですが、なかなか出てきません。噺はとうとうサゲに近くなり……。「そうきたか!」という展開に大きな拍手が起こっていましたよ。
続いては、笑福亭里光師匠。マクラを振らず、『堪忍袋』が始まります。
些細なことでけんかばかりの、とある夫婦。仲裁に入った平兵衛からのアドバイスで、お互いの不満や愚痴を入れる「堪忍袋」を作ることにしますが――。
さっそく「亭主」として登場したのは、先ほどの『まんじゅう恐い』から「源ちゃん」!「まんじゅうを食いすぎて気分が悪い」と語り、一気に会場を沸かせます。
堪忍袋にどんどんたまる、さまざま不満や愚痴。一部私情も交えつつ!?丁々発止のやり取りが続きます。源ちゃんの目下の不満は「お弁当のおかずが梅干しばかり」だということ。妻・さきは、心を込めて漬けた梅干しなのだと言い返しますが、ここで源ちゃんの返したひとことが、『まんじゅう恐い』と思いがけないリンク!
さて、堪忍袋はとうとう、長屋じゅうをめぐりめぐっていっぱいに。にぎやかなその様子が目に浮かぶような演じぶりです。
ラストに向けて、盛り上がります!
仲入りを挟んで、春風亭伝枝師匠が登場。伝枝師匠が前座のころから「閉店セール」をしているというお店の話から、『つぼ算』を演じます。
新しい水瓶を買いたいと、兄貴分と一緒に買物に出た男。「口のききようで、損したり得したりする」と言う兄貴ですが――。
「何かがおかしいことは分かるけど、何がおかしいのか分からない」店主の混乱は、見ていてかわいそうになるほど。
立て板に水で話す兄貴に客席も思わず巻き込まれそうになりながら、翻弄される店主の「堪忍袋借りてきてー!」に大笑い。
次の出番の柳亭芝楽師匠が「”盛り盛り”だった」と舌を巻くほどのリンクの数。当初のルールを度外視して『まんじゅう恐い』からもモチーフが登場します。
全編を通し、これまでの噺からのリンクが随所に散りばめられていた力演でした!
トリを務めるのは、柳亭芝楽師匠。『ぜんざい公社』を演じます。
「リンク落語」のルールは「1つ前の噺の世界観を自分の噺に織り交ぜること」。それにも関わらず、ここまでの3人が自分以外の演者の噺の世界観をすべて取り入れていたことに「ちゃんとできるかなあ」と不安げな芝楽師匠でしたが、さてどうなったでしょうか?
「ぜんざい」を食べられるという「ぜんざい公社」を見つけた男。さっそく食べようとしますが、その道のりは遠いようで――。
かつて、タバコと塩を扱っていた「日本専売公社」に着想を得た新作落語である『ぜんざい公社』。
目的はひとつなのに、そこへ辿り着くまでにあちらこちら。書類を書いたり、お金を払ったり、また書類を書いたり、――という「あるある」に苦笑い。
ぜんざいの価格交渉に「過去に嫌な思いをして……」と話したり、家族構成を書くときにけんかばかりしている妻のことを思い出したりするなど、ここまで3席の世界観をすべて織り込んでいた芝楽師匠。客席から大きな拍手が沸き起こっていました。
おわりに
このお写真をお願いしている間も、「あの○○はどこにつながっていたの?」「△△です」「そうか、なるほど!」「あそこは□□にすればよかったんじゃない?」「そうか!そうすればよかった!」と、お互いに振り返る師匠方。
一筋縄ではいかない、リンクに次ぐリンクに魅了された2時間でした。
ヨセゲーのTwitterにも、ネタ帳の写真がリンクの解説とともに掲載されていましたよ。
第94回ヨセゲー「リンク落語」は、4月20日(木)までツイキャスでもご覧いただけます。
次回・第95回ヨセゲーは「落語諸国巡り」。ぜひ、ご一緒に味わいませんか?
ヨセゲー #95【落語諸国巡り】
2023年5月8日(月)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2000円 前売:1800円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/231283
ツイキャス落語会 ヨセゲー#94【リンク落語】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/222014
4月20日(木)までご覧になれます。
寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。
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