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【取材記事】第97回ヨセゲー「夏の噺」レポート

三遊亭遊喜

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 今月も、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠による「ヨセゲー」が開催されました。

 暑い日がつづき、まるで梅雨が明けたかのような陽気がつづく東京。夏本番を目前にした7月6日のヨセゲーのテーマは「夏の噺」でした。いったい、どんな会になったのでしょうか?

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師匠方の夏の思い出は……?

 最初に登場したのは、柳亭芝楽師匠。前座時代にも関わらず、ある合言葉を唱えることで「パラダイス」のような時間を過ごした夏の思い出話から、『蛇含草』を演じます。

隠居さんの家に涼みにやってきた男。そこで虫除けとして使われていた「蛇含草」を、半分もらいます。餅をたらふく食べ、お腹いっぱいで帰った男は、蛇含草のことを思い出し――。

 隠居さんのもとに送られてきた餅を、おいしそうに食べる芝楽師匠の姿に、客席も思わずニコニコ。幸せそうな表情に、こちらまでうれしくなってしまいます。

 餅を丸呑みしたり、いろいろな技を繰り出しながら食べたり……、アクロバティックな食べっぷりに大笑い!

 暑くても食欲はなくならず、いっぱい食べてしまうのが困りもの……、と話していた芝楽師匠ですが、終盤の苦しさは見ているこちらにも伝播してくるほど。

 その一挙手一投足に釘付けの客席でした。

 つづいて、春風亭伝枝師匠が『かぼちゃや』を演じます。

 伝枝師匠にとっての夏といえば、ハワイアンバンド「アロハマンダラーズ」。この日も、7月中席で行われる興行に向けて練習を終えてからのヨセゲーだったそうです。
 芸歴26年のうち、なんと24年を「アロハマンダラーズ」のメンバーとしても過ごしている伝枝師匠。飛び出す結成秘話には、客席もびっくりしたり大笑いしたり。ぜひ、配信をご覧ください!

お母さんから叔父さんへの頼みで、かぼちゃを売る商いを始めることになった与太郎。天秤棒を担いで出かけて行くのですが――。

 先月のヨセゲーで三遊亭遊喜師匠が演じた『牛ほめ』に続き、落語ではおなじみの与太郎が登場します。

 実はあまり与太郎噺を演ずる機会がないという伝枝師匠の、貴重な与太郎姿(?)を拝見することができました。

 言われたことは素直に実践するものの、常識とはかけ離れた言動を繰り返す与太郎。それでも、周囲の人々がかける言葉や眼差しが優しいのが印象的です。

 売り声のHow toや歩くルートを指南してくれる叔父さんや、路地の行き止まりで方向転換できなくなってしまった与太郎に声をかけてくれる人など、困ったときに助けてくれる存在が必ずいるのは、与太郎の素直で裏表のないキャラクターゆえといえるのかもしれません。

「落語の登場人物は大体いい人」と話していたのは芝楽師匠ですが、まさにその通り!

「愛される」存在である与太郎の魅力を、たっぷり感じた1席でした。

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夏の噺の2つのパターンとは?

 仲入り後は、三遊亭遊喜師匠の『ちりとてちん』から。

 早くも鳴き始めたセミの声に気づいた遊喜師匠。そんな夏の暑さを乗り切る方法として、暑さをサウナの暑さだと思えばいいのでは……?と、サウナーらしい妙案!?を提案してくださいました。

知ったかぶりであまのじゃくな男に仕返しするため、あるものを台湾土産の珍味として紹介する。出てきたのは強烈な臭いのする代物で――。

「台湾土産」として「ちりとてちん」を紹介され、「……ああー!!」と知ったかぶりをする寅さんの姿には大笑い。

 数々の抵抗も虚しく、ちりとてちんを口にすることになる寅さんの姿に、客席にいる人たちそれぞれ、「ちりとてちん」の想像がふくらみます。

 そんな様子をこっそり見ている竹さんは、お世辞が上手で愛嬌たっぷり。ちょっぴり的外れなところがありつつも、決して嫌われることはありません。

 一方の寅さんは、いけ好かない人物であるには違いないのですが、見え隠れする愛嬌のあるところや律儀なところは、落語の登場人物らしいといえるのかもしれません。

 トリを務めるのは、笑福亭里光師匠です。今回は「ものが腐る」「お腹をこわす」の2つのパターンに偏りがち……、と里光師匠。

チシャ(レタスの仲間)を食べてお腹をこわした男。その息子が隣村まで医者を呼びに出かけます。ところが帰り道、2人はウワバミに飲み込まれてしまい――。

「お腹をこわす」ことから始まり、ウワバミも登場する『夏の医者』を演じます。

 江戸・上方それぞれ、いくつかの噺に登場するウワバミ。今回は会の冒頭に『蛇含草』を聴いたこともあり、なんだか良くないことが起こりそうな気がしてドキドキです。

『蛇含草』とも似てどこか非現実的な展開の中に現れる「げっそりしているウワバミ」「会話のできるウワバミ」「肩で息をするウワバミ」は、大人2人を飲み込むほどの生き物なのに、うってかわって情けない姿。その佇まいがあまりにもかわいそうで、申し訳なくも大笑いの客席です。

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おわりに

 現代ではあることが当たり前ともいえる文明の利器・冷蔵庫。ですが、ほんの少し前まではそれが当たり前ではありませんでした。

 今でも、うっかりものを腐らせてしまうことがないわけではありません。聴きながら、冷蔵庫の中身がちょっと心配になったりして……。

 同じ経験をしているからこそ感じられる一体感は、落語の世界も現代も、変わらないのかもしれませんね。
 
 第97回ヨセゲー「夏の噺」は、7月20日(木)までツイキャスでもご覧いただけます。
 次回・第98回ヨセゲーは「蔵出しの会」。ぜひ、ご一緒に味わいませんか?

ヨセゲー #98【蔵出しの会】
2023年8月3日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/240876

ツイキャス落語会 ヨセゲー#97【夏の噺】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/240874
7月20日(木)までご覧になれます。

 寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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