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【取材記事】第110回 ヨセゲー「怪談噺の会」レポート

三遊亭遊喜

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2024年8月8日、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、「第110回 ヨセゲー『怪談噺の会』」が開催されました。今回は、三遊亭遊喜師匠、春風亭傳枝師匠、柳亭芝楽師匠、 笑福亭里光師匠、神田春陽先生が出演。ひたひたひた…と、あんな怪談、こんな怪談、いろんな怖さが忍び寄り…会場は笑いだけでなく、悲鳴も起きたとか起きないとか…。早速、「第110回 ヨセゲー『怪談噺の会』」を覗いてみましょう。覗く準備はいいですか…何かが見えてしまうかもしれませんよ…。

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ひぃぃぃ…出るか?! 出ないか?!

トップバッターは三遊亭遊喜師匠。遊喜師匠の演目だけ「何か」が出ないということで、トップバッターに抜擢。何かが出ずに、どんな怪しい噺が繰り広げられるのか、さあ、怪談噺の会の幕開けです。


演目は『お化け長屋』。長屋にある一軒の空き店。みんなで便利に使っているこの空き店に借り手がつくのを阻止しようと、古狸の杢兵衛を筆頭に、ここはお化けが出るぞ! と脅して、借りに来た者を追い払おうと作戦を立てるのですが…。

遊喜師匠の手にかかると杢兵衛の怪談話の語りがもっともらしくて、虚だとわかっていても会場に怖さを誘うのですが、それを信じ込む、借りに来た人の怖がり方もまた見もの。

しかし、次にやってきた男は、何やら一筋縄ではいかない気配が立ち込めています。威勢のいい江戸っ子で、お化けのおの字も怖がらず、むしろ杢兵衛の語りにケチをつけてくる。逆にマウントを取られていく杢兵衛のおどおどした様子に会場は笑いがドカドカおこります。リズムが狂う杢兵衛ですが、会場はより遊喜師匠のリズムにノリノリ! で幕を閉じました。

続きまして、春風亭傳枝師匠。子どもの頃、夏休みに楽しみにしていたTV番組「怪奇特集!!あなたの知らない世界」。何でも同番組で解説をしていた新倉イワオ氏は「笑点」の企画にも立ち会われたのだとか。怖さと笑いがこんなところでつながるとは。さて、遊喜師匠以外は何かが出る噺ということで…傳枝師匠の噺は何が出てくるのでしょう…そわそわ。

演目は『へっつい幽霊』。とある道具屋の「へっつい」は、手ごろな価格で物が良いと、直ぐに買い手がつくのですが…夜が深まると、客が血相を変えてへっついを引き取ってほしいと駆け込んでくる。どうやら夜になると……出るのだそうで…。

気味が悪いし、悪いうわさが広まるからと、道具屋からへっついを1円付きで譲り受けた博打好きの熊さんと勘当中の若旦那。威勢が良くて肝が座った熊さんと線が細くてしゃなしゃなしている若旦那のキャラクターがいきいきと立ちあがる話ぶりは、さすが傳枝師匠。2人の息が合ってるのかどうなのか、絶妙な掛け合いに会場からは笑いがこぼれます。

肝が据わった熊さんは、悲鳴をあげる若旦那をよそに、幽霊とも難なくコミュニケーションをこなします。幽霊は怖いという固定観念があるからこそ、そこを逸脱するこのやりとりはとても滑稽で、傳枝師匠の幽霊仕草のキュートさがおもしろさを加速させ、会場の笑いも膨らみました。

お次は笑福亭里光師匠の登場です。今日も絶好調の「みじかいらくご」。遅れてくる笑いがたまりませんね(笑)。

演目は『もう半分』。「この噺、あまり好きじゃないんですよね~」と里光師匠。て! 前回も『替り目』を好きじゃないんだよな~とボヤいてたじゃないですか~とヨセゲーファンから総ツッコミ(笑)。会場との息がピッタリです。しかし、前回は好きじゃないと言いつつも、素敵に噺されていたので、今回も、とか何とか言っちゃって、会場を魅了させてくれるのでしょうと、みんなの期待が高まります。

夫婦が営むとある居酒屋に、棒手振りのおじいさんが毎晩のように仕事帰りにお酒を飲みにくる。いつもお酒を一杯の半分頼む。しかしそれでは飽き足らず、「もう半分」「もう半分」とお代わりをする。この日も、半分ずつを積み重ね大分飲んでから店をあとに。店じまいをしていると、おじいさんの風呂敷包みの忘れ物。持ってみるとズシリと重い…包みをほどいてみると中からは大金が…。


会場は最初から最後まで超真剣な空気。風呂敷包みをあけてからの展開は、特に目を耳を離せないといった様子。里光師匠の静かな語り口がより緊張感を増幅させるとともに、豊かなセリフまわしから各登場人物が抱える闇がまざまざと浮かびます。

この噺は「人間を描いていると思う」と里光師匠。
なるほど。確かに、人間の卑しい部分、弱い部分の恐ろしさが露呈し、それが怪しさに変わりゾクゾクさせます。好きじゃない演目をどのように話しきったのか、ぜひツイキャスでご覧ください。

さて、「もう半分」終わりました。
では、ここでお仲入り!!

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まだまだひんやり…

くいつきは、柳亭芝楽師匠。里光師匠の『もう半分』を聴いて、ガソリンスタンドでお釣りを取り忘れたことを想いだしたという芝楽師匠。ああ、それはホラーですね。会場がドンマイの空気に包まれます。

演目は『一眼国』。見世物小屋の香具師が出し物のネタに困り、行脚修行僧である六部に、何か珍しいものや、ことを知らないかと尋ねると、江戸から北へ百里あまり行ったところで、一つ目の女の子を見たという。これは儲かるぞ! と、早速、香具師は六部の話を頼りに出かけるのですが…。

六部の思慮深く静かな雰囲気と興奮気味な香具師の対局な雰囲気がリズミカルで心地よく、どんどん落語の世界に引きずり込まれます。六部が思い出しながらヒヤヒヤと恐れていることが良く伝わってきてこちらもヒヤヒヤしてきたほどですが、それ以上に芝楽師匠の雰囲気に香具師の雰囲気にバチっとハマっているから不思議とリアリティが増します。

そして迎えたクライマックス!

まさか! 眼鏡ってそういう使い方ができるのね! と会場が大爆笑。
こんなに笑って終わる『一眼国』は、会場のみなさんも初体験だったのでは?!

ぜひ、ツイキャスで、芝楽師匠の眼鏡がどのように活躍したか目撃してください。

トリは神田春陽先生。今では通販で「丑の刻参り」のセットが買えるのだとか…。呪いの手段も手軽に買えてしまう時代かとしみじみしながら…使う側にも使われる側にもなりたくないぞと思うばかりです。

演目は、『江島屋騒動』。江戸の芝日陰町に古着屋・江島屋の番頭である金兵衛が掛け取りに外出したのですが、道に迷い夜も更けて、ついには雪も降ってきてしまう。そんな時に見つけた一軒の民家。藁をもすがる思いで、戸を叩き事情を話すと、家主の婆は快く中に入れてくれるのですが…。

雪がしんしんと降る様子が目に浮かぶような見事な情景描写は、静かすぎるゆえに、これから何かが起こりそうな予感がぷんぷん漂います。春陽先生の会場の腹の底に語りかけるような語り口に会場もぐっと息をのんで聞き入っていることが良く伝わってきます。

金兵衛が覗いてしまった、婆の奇々怪々な行動の場面から、リズムとトーンがガラリと変わり、怖さがどんどん深まっていきます。婆の声がなんとも恨めしくて怖いのなんの。会場はもはやくぎ付け。

しかし、時折、会場からは笑いが起こります。こんなに怖い話なのに! 笑いを入れ込むのはさすがで、そのおかげで、怖がったり、笑ったりと緩急があって、物語そしてお客様の心がより豊かに動いていると感じました。

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夏にぴったりなひんやり楽しい会

最後はみんなで、集合写真。今回も先に会場を後にされた遊喜師匠はハメさせていただきました。「怪談」と一口に言っても、何かが出てくるものもあれば出てこないものもあり、身の毛がよだつ噺もあれば、おかしみを備えたものもある。千差万別、それぞれの師匠方らしい噺が詰まっていました。夏らしい、ヨセゲーらしい会! まだ見てないよ~という方は、ツイキャスで。眠れぬ暑い夜のお供に、ぜひ。

次回は9月11日で、テーマは「こんな揉め事いやだ」
揉め事なんてーのは、避けて通ることができるのならば全て避けて通りたいですが、一体、落語にはどんな揉め事が勃発してしまうのでしょうか…お楽しみに!


■次回予告■
ヨセゲー #111【こんな揉め事いやだ】
2024年9月11日(木)

開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)

ツイキャス落語会 ヨセゲー #110【怪談噺の会
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/315748
2024年8月22日(木) 23:59 まで

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■関連情報■
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ヨセゲー    https://twitter.com/yosege_
三遊亭遊喜師匠 https://twitter.com/sanyuuteiyuuki
春風亭傳枝師匠 https://twitter.com/den_shi
柳亭芝楽師匠  https://twitter.com/turunperon
笑福亭里光師匠 https://twitter.com/rikoshoufukutei


三三と若手
出演:柳家三三、柳亭芝楽、柳家花ごめ
2024年9月18日(水) 13:30開場、14:00開演
@らくごカフェ
料金:3000円(1ドリンク付き)
予約:rakugocafe@hotmail.co.jp

里光・志らべ二人会
2024年9月13日(金)18:00開場、18:30開演
@お江戸上野広小路亭
料金:当日3000円、予約2500円
予約:03- 3833 -1789