こんにちは。「寄席つむぎ」主宰のふじかわ陽子です。今日は、いつもの演芸記事とは少し違う、ある「命」のお話をさせてください。
落語が人間の「生きる姿」を描く芸であるように、私はこの場所に、綺麗事だけではない命の営みも残したいと思いました。
助からない可能性が高いと言われた病と、予期せぬ批判。それでもご家族が見つけたのは、「この子は生きようとしている」という小さな希望でした。
この静かな寄席つむぎで、その軌跡をそっと辿っていただければ幸いです。
※本記事は一家庭の体験談をまとめたものです。治療方法や判断については当時の状況に基づくものであり、すべての症例に当てはまるものではありません。FIP治療や投薬に関しては必ず獣医師と相談のうえ、専門的な判断を仰いでください。
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寝たきりの愛猫が教えてくれたこと――絶望を希望に変えた、ある家族の4年間の物語

大阪府のK家の家の中で「きゅっきゅっ」と可愛い鳴き声が響きます。その声が聞こえると、お母さんは用事もそこそこに笑顔で駆けつけます。視線の先にいるのは、きゅんくん(5歳)です。
実はきゅんくんは寝たきり。人間がお世話をしなくてはならない体です。それでもその存在は家族の中心にありました。同居する他の猫たちも、それを知っているかのように静かに寄り添います。
やっと会えた運命の猫、だけど夜鳴きが酷くて…

今でこそ他の猫は温かく見守ってくれていますが、きゅんくんが保護猫団体「ねころび荘」からやってきた時にはひと騒動あったんです。きゅんくんが生後3カ月、2021年6月のことでした。
トライアルでK家に来たのは良いものの、一緒にきた兄弟猫のカイルくんが体調を崩し、ねころび荘に戻った時のこと。きゅんくんは寂しくて哀しくて、一晩中鳴きました。そのせいで先住猫のジークくんが体調を崩し、食事をまったく受け付けなくなったのです。
これは大変とトライアルを一時中断し、きゅんくんはねころび荘に戻ることに。お母さんはがっくり肩を落としました。きゅんくんを「やっと出会えた運命の子」だと感じていたから。
それでも大切な家族のジークくんを差し置いてまで迎えるのは違うと思い、気持ちを抑えました。しかし、目を閉じれば浮かぶのはきゅんくんの姿。忘れることなどできません。
意を決し、お母さんは先住猫のジークくんとノアールちゃんに語りかけました。
「きゅんを家の子にしたいの」
2匹は静かに瞬きをしました。
幸せな日々のはずが、最初の異変

ジークくんの体調が回復した2021年8月、きゅんくんは再びトライアルを開始します。前回のこともありますから、トライアル期間は長くしてもらい3週間、様子を見ることに。お母さんはきゅんくんが家にいることが嬉しい反面、心配でなりません。
そんなお母さんを安心させるように、なんとジークくんがきゅんくんの毛づくろいを始めるではありませんか。それはまるで「ぼくらがいっしょにいるよ」と寂しがりなきゅんくんの心を抱きしめているかのよう。
それは1回だけのことではなく、ずっとジークくんがきゅんくんの面倒を見てくれます。この様子にもう大丈夫と、夏休みの終わりごろ正式譲渡となりました。
これから穏やかな日々が始まるはずでした。生後5カ月のきゅんくんはどんどんご飯を食べて、大きくなる時期です。なのに、いつまでたっても小さいまま。体重は2キロ程度で止まっています。それに、子猫特有のガツガツさがなくなったのです。
9月には39度の高熱が出ました。お母さんは慌てて動物病院の門を叩きます。当時のきゅんくんの体はまだ小さく、原因を特定するための大きな検査も命がけでした。ひとまずは抗生物質を処方してもらい、経過を見ることになりましたが、お母さんは不安でした。本当にただの発熱なのだろうかと。
次は、獣医師から告げられる病名

