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謎ルール~上方落語家、東京で修業する:笑福亭里光

笑福亭里光

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楽屋入りを果たし、無事前座修業が始まった若き日の笑福亭里光師匠。楽屋ではどんな出来事があったのでしょうか。理不尽なこともあったよう……。

他ではあまり語られない、落語芸術協会の前座修業。こちらが満載の笑福亭里光師匠の自叙伝第15回のスタートです。

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謎ルール

こんにちは。笑福亭里光です。

どの世界でもそうでしょうが「新人(入りたて)」は覚えることが多い。

入って1ヶ月は「見習い」です。その間に数多くの最低限のことを覚えなければならない。この間は高座にも上がれません。給金も無い。

東京は「高座」って言う。大阪は「舞台」って言う人が多いですね。何の違いなんでしょうね?僕も未だに良く分かりません。

落語は上半身だけで演じるので、普通(芝居とか)より舞台が高い。高座という方がシックリはくるんですが・・。

見習い期間が終わると、正式な前座になります。つまりは給金が出る。

給金といっても、雀の涙ですが。

同じ「前座」でも一番上と下だけ呼称があるんです。上が今まで何回か出てきましたが「立て前座」、下が「お茶くみ」。

お茶くみなんて死語ですね。というか、アウトです。世間とはズレてますねぇ。古い世界ですからねぇ。でも最近はそうも言ってられなくなってきた。

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昔は理不尽なことで怒られました。

これは理不尽とまではいいませんが、前座は先輩に余計な口を利いてはいけないと教わりました。前回書きましたが、初めて先輩に挨拶する時は立て前座を介さなくてはならないんです。

「里光さんです」と紹介されると、必ず一言仰るんです。「頭良いんだね?」とか「理工学部出身なんだね?」とか。ダジャレの出来はここでは議論しませんが、それに対してただニコニコしないといけない。「ホントはアホでっせ!」とか言い返せない。

一人ね、違うこと言ってくれた人いましたよ。

「地震大丈夫だった?」

阪神大震災のことです。

つい「おかげさまで大丈夫でした」って言ってしまったんですね。裏でエラい怒られました。

後から知ったんですが、前座が二ツ目や真打ちに言葉を発してはならないルールなんか無い。そら生意気なこと言うたらダメですけど。ある前座が勝手に作ったルールやった。

他にもありますが、我々より前の世代は、やられて嫌だったことをやり返す!みたいな文化がありました。どこでそうなったんでしょうね?そこから「落語暗黒時代」に突入です。

僕ら世代はそれ(嫌なことをやり返す)をできるだけ無くそうと努力しました(相変わらず「文化」を引きずってる人も少なからず居ましたが)。「お前らは緩い!」ってよく怒られました(笑)。

でも締めるべきところは締めたつもりです。

今では真打ちと前座が楽屋で仲良く喋ってますよ。もちろん節操持って。それで良いと思うんです。

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また同世代とも仲良くした方がいい。

僕らの時は「同期は仲悪いもんだ」みたいな風潮がありましたもん。個人事業主だしライバルなんでしょうが、同業者でもある訳です。

仲良くして損はない。

それの最たるものが「成金」です。もうすっかり芸協のブランドになりました(事実上は解散してますが)。正直羨ましいですよ。僕らの頃はあんなに仲良くなかった。

その成金のメンバーだった弟弟子の羽光らが6月中席から真打披露興行を行います。

まずは末廣亭から各寄席を廻ります。「よせき」じゃないですよ「よせ」ですよ!

僕も交互ですが出ます。

羽光が成金の「落ちこぼれ」にならないよう、こんな時期ですが宜しくご声援下されば幸いです。

ついでに僕もね。

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