大阪市中央区東心斎橋で昭和47年2月に誕生した落語の定席「島之内寄席」。長らく落語専門の定席が大阪になかったため、落語家悲願ともいえる定席でした。
そして、同じ年の11月神戸で新たな寄席が誕生します。その寄席こそ「神戸柳笑亭(こうべりゅうしょうてい)」です。今年4月、惜しまれつつも終了した「神戸恋雅亭」の前身でした。
この柳笑亭の思い出を、桂春若師匠につづっていただきました。今見ると番組がとても豪華です。お楽しみください!
神戸柳笑亭、その1
島之内寄席に続いて、神戸でも11月に落語定席ができる事になりました。神戸柳笑亭です。
場所はJR兵庫駅と神戸高速鉄道・新開地駅の間、市バス柳原バス停前です。
きっかけは、六代目笑福亭松鶴師匠と楠本喬章さんと云う方が甲子園球場で阪神巨人戦を観戦しながら、楠本さんが松鶴師匠に
「神戸でも落語の定席やりまひょうな」と。
六代目師匠の答えはもちろん「くっさん、是非やりまひょ」。
この「松鶴・楠本コンビ」はこれ以降、神戸に数々の落語会を誕生させていきます。
柳笑亭は馬野さんという箸屋さんの倉庫を改装した小屋。10人も入れば大入袋が出ると云う小さな寄席でした。(実際は定員50人、最高入場者98名)
杮落し公演は昭和47年11月8日。入場料金440円は島之内寄席と一緒。
番組は
初日
煮売屋 桂 文太
無い物買い 笑福亭 呂鶴
桃太郎 桂 扇朝
猪買い 桂 米蔵
禁酒関所 笑福亭 光鶴
三十石 笑福亭 花丸
崇徳院 桂 米朝
二日目
鉄砲勇助 桂 米太郎
子ほめ 桂 音也
江戸荒物 笑福亭 松葉
住吉駕籠 桂 小米
犬の目 森乃 福郎
けんか長屋 桂 文珍
狸さい 桂 きん枝
くっしゃみ講釈 桂 小文枝
中日
兵庫船 桂 べかこ
代書 桂 春之輔
かけとり 笑福亭 鶴三
時うどん 桂 三枝
野ざらし 月亭 八方
悔み 桂 文我
饅頭こわい 笑福亭 松鶴
四日目
宿替え 桂 米治
花色木綿 笑福亭 松枝
替り目 桂 すずめ
昭和任侠伝 桂 春蝶
牛ほめ 笑福亭 鶴光
島巡り 桂 文紅
二番煎じ 露の 五郎
千秋楽
初天神 笑福亭 仁智
八問答 桂 春若
三人旅 笑福亭 福笑
首の仕替 桂 朝太郎
運付酒 桂 米紫
鉄砲勇助 笑福亭 仁鶴
祝のし 桂 春団治
千秋楽が柳笑亭史上最高入場者98名のお客さんが入った日です。
ここでも六代目松鶴師匠は、毎日のように木戸に座られて島之内寄席同様、陣頭指揮に立っておられました。