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⑯裏工作~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし:笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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ドラマ『どてらい男』”将軍”こと大石善兵衛役で出演した六代目笑福亭松鶴師匠。この役が大当たり。次々に仕事が舞い込んできます。でも、そこは六代目笑福亭松鶴師匠のこと、どうしてもオチがついてしまう。

その様子をそばで見つめていた笑福亭鶴光師匠に、色々なことを思い出していただきました。今回も面白いですよ。お楽しみください!

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裏工作

オールスター家族対抗歌合戦と言うバラエティー番組のゲストの仕事が、松鶴師匠に来ました。普段のゲストは家族なんですが、特別企画で落語家子弟大会。

優勝が全員ハワイ旅行御招待です。これは絶対無理。松鶴師匠は人間の外さない音を外す、だからハワイ旅行はあり得ない。

でもその時の準優勝の景品が折りたたみ式の自転車だったんです。これが欲しいと言い出した。

プロデユーサーに泣きついたのか?スポンサーに無理言うたのか、到頭とうとうその商品を手に入れました。本番前にでっせ、今なら絶対不可能やが。特別にと言うことやったんやろな。

収録が終わるなり、すぐに電話を入れまして

「あ~ちゃん、わしやわしや賞品でな、折り畳み式の自転車もろうたで」

「良かったな、今あんたの車盗まれた」

裏工作はするもんやない、天につばはけば自分にかかる。相当後悔してました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

花登筺はなとこばこ先生に嵌まって今度は舞台の仕事、志垣太郎さん主演の根性ドラマ『あかんたれ』。主役を支える船場の大旦那の役です。

一部の最後に出て来て

「秀太郎 明日からお前が主人に成って頑張れ」

「おじさん、わてがこの店の主人にでっか?」

「そうや、心配せんでもええ、わしが後ろにドンと控えて居る大船に乗ったつもりでしっかりやれ」

「おじさん」

「秀太郎」

二人が手を取り合う。拍子木がチョンチョンチョン緞帳が徐々に降りてくる。万来の拍手。

良えシーンや。場所が名古屋の御園座、正月公演で二日が初日。

さぁ喜んだ松鶴、元旦に弟子全員集めてどんちゃん騒ぎ。明くる日えらい二日酔い。新幹線のグリーン車で、ステテコの上下の格好でトイレに行ったり来たり。

車掌さんが

「すいません、そんな恰好でウロウロされたら困るんですが」

「わたいは六代目松鶴だす」

意味不明な事を言うてました。

さぁ劇場に着いて化粧済ませていざ本番。ところが二日酔いのせいで、セリフが出てこない。たまりかねたプロンプターの人がボソボソとセリフの手助けをした瞬間、師匠が大きな声で

「じゃかましわい!今間を持ってるんじゃ、このドアホめが」

お客さんはドカンと大爆笑。終演後 花登筺さんから

「帰れ!」

初日で降板と相成りました。拍子木の音ではなく首がチョン。

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