大阪を中心に活躍中の桂春雨師匠。古式ゆかしい大阪弁を話されるので大阪生まれのように思われますが、実は東京生まれ。その故郷東京で小さな寄席を約30年も続けておられるとのこと。
今回は桂春雨師匠と東京と10月12日開催の『第156回春雨の会』についてお話をうかがいました。約30年も続けられる秘訣は?お楽しみください!
今の東京は「TOKYO」のよう
――春雨師匠は東京ご出身だとか。綺麗な大阪弁を話されるので、ずっと大阪だと思っていました。
春雨師:僕は文京区生まれで、文京区は下町と山の手が複雑入り組んでいて、坂の上は山の手、坂の下は下町、というような土地柄。僕の生まれたのは『白山下』という下町です。どこに行くのにも便利で、本が読みたければ千代田区の神保町に。動物園に行くなら、台東区の上野動物園といった感じで。
――いつまで東京におられたのでしょうか?
春雨師:18歳の時までです。
――高校卒業までですね。それじゃあ、東京も詳しいのでは。大阪との違いってありますか?
春雨師:いやいや、僕が知っている世界は狭いもので。家の周りぐらいしか知らない。よく東京と大阪の違いを聞かれますが、僕は学校の世界から落語家の世界に飛び込んだ方が大きな違いがありました。だから、分からないんです。
――え?そうなんですか。
春雨師:今の東京はアルファベットの「TOKYO」のよう。訪れるたびに風景が変わって、まるで外国です。僕の知っている東京は、漢字で書く「東京」。この「東京」の匂いが残っているのは、実は大阪の方です。
――意外です。
春雨師:例えば、大阪でエレベーターに乗ったら声を掛け合うでしょう。「何階までですか?」と。大阪では当たり前ですが、東京では廃れてしまっていますね。隣は誰が住む人ぞで。でも、今の若い人は僕の知らない「TOKYO」に憧れて上京するのでしょう。これも良いと思います。色んな面があって「東京」だと思います。
名簿が出来てしまったから始めました(笑)
――その「東京」で定期的に会を開催されているとのこと。今回で156回ってすごいです。
春雨師:1991年に開始して、もう29年ですか。年に多い時で7回、少ない時で3回開催しています。カッチリ開催時期を決めず、僕が東京に行く時に合わせて開催しているのが長続きの秘訣でしょうか。
――春雨師匠が20代半ばぐらいからですね。ゆるゆるの開催でも、やっぱりすごいです。長続きしている会は少ないですから。開催のきっかけは何だったのでしょう?
春雨師:話すと長いですよ(笑)。きっかけはまず、先代の三遊亭圓楽師匠が開催しておられた「若竹」という寄席です。僕は帰京するたびに昼席に出させていただいて、じゃあ夜席もと三遊亭圓左衛門師と二人会を開いたんです。『春雨の会』が始まる2年前の1989年に2回。
――はい。
春雨師:ところが圓楽師匠が「若竹」をビルごと売ってしまったんです。圓左衛門師との二人会も開催できなくなりました。1989年11月のことです。じゃあ、今度は文京区の三百人劇場でやろうと圓左衛門師の声かけで二人会を開催しましたが、「2回目は…」ということになり次は三百人劇場で私の独演会を開催。三百人劇場は私の通っていた小石川高校の隣にあるので、私には馴染みがある場所です。
――思わぬ接点ですね。
春雨師:この独演会の時にアンケートを取ったんです。名前や住所も書く。すると、名簿ができたんです。なので、東京でも会を開こうと。
――えー!
春雨師:そんな経緯です(笑)。
お客さん同士が仲の良い会
春雨師:1991年に四谷倶楽部という会場で『春雨の会』は始まりました。ここでは97年まで続き、年に4回開催。でも、オーナーの高齢化により閉鎖。1998年から上野広小路亭に、2013年9月から現在のらくごカフェで開催しています。
――何度も会場を移してもお客さんがついてきてくださるんですね。
春雨師:言われるまで気付かなかったのですが、僕の会のお客さんはお客さん同士の仲が良いそうで。なんべんも同じ会で顔を合わせているうちに、仲良くなるようです。これが当たり前やと思っていましたが、違うようです。
――春雨師匠とお客さんとのつながりだけでなく、お客さん同士のつながりも出来ているんですね。
春雨師:繰り返し会を続けていることの有難みですね。この会は興行やありません。僕の「寄席」です。採算度外視。今は経費から逆算して木戸銭を設定している会もありますが、僕は定席を基準にしています。繁昌亭なら2800円、末廣亭なら3000円。『春雨の会』は4席なので2000円です。
――他の出演者の方は?
春雨師:立川志遊師がレギュラーゲストです。彼は僕の高校の4年後輩で、在学中は顔を合わせてないのですが、兄弟子の梅団治師の大学の後輩で立川生志師の紹介で僕の会に出演してくれることになりました。もう27年ほどになりますか。あと一人は前座さんです。
――出演者が3人なら「密」にはなりませんね。
春雨師:らくごカフェは厨房機器が整った会場ですから、換気もバツグンです。安心してお越しください。お待ちしています。
らくごカフェでお待ちしています
今回は桂春雨師匠にじっくりお話をうかがいました。とても長い歴史のある『春雨の会』、今からとても楽しみですね。
落語で笑って免疫細胞を活性化させましょう!神保町のらくごカフェでお待ちしています!
156回春雨の会
日時:令和2年10月12日(月)19時開演
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3-5)
木戸銭:前売り2000円、当日2300円
お問い合わせ:春雨師FB、らくごカフェ rakugocafe@hotmail.co.jp