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⑯百年目~師匠桂米朝と過ごした日々:桂米左

桂米左

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上方落語屈指の大ネタ『百年目』。桂米朝師匠といえば『百年目』と思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。今回は桂米朝師匠の弟子である桂米左師匠に、『百年目』にまつわる思い出を振り返っていただきました。

さて桂米朝師匠は『百年目』についてどのようにおっしゃっていたのでしょうか。お楽しみください。

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百年目

記者さんが「師匠の一番好きな噺はなんですか」という質問をよくしてはりました。その質問を受けると師匠は機嫌が悪くなり「あのね、いろんなネタがあってどれが一番とか二番とかは決められないんですよ。このネタのここは好きやけど、ここは嫌いとかいろいろあるんです・・・」と、記者さん困ってはりました。

ところが一番嫌いなネタはと聞くと『延陽伯』と即答しはります。

『延陽伯』というネタは・・・各々ググってください。

なぜかと聞くと不自然極まりないと。「言葉が丁寧やったらそういう所に嫁に行ったらええねん、なんで長屋に嫁ぐねん」・・・うん、そう・・・けど不自然いうたら落語なんか不自然そのものやんか・・・。

一門でも師匠の『延陽伯』嫌いは周知の事で、何で嫌いなんやろというのがちょいちょい話になり「若い時に演ってえらい目に遭いはったんやで」とか「心底性に合わんねやで」とかいろいろ好き勝手言うておりました。なぜ嫌いなのか、真実を知る事ができない永遠の謎となりました・・・大層な!!

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聞き方を変えて一番難しいネタはと聞くと迷わず『百年目』と答えはります。数ある上方落語の大ネタ中の大ネタで一番難しいとの事。

一方の雄『立ち切れ線香』は現有の落語の中で脚本演出は完璧だと思います。きっちりと覚えさえすれば、そこそこの力があればネタが持っている力で引っ張てくれます・・・。あくまでも私見ですが・・・。

ところが『百年目』に関してはそれに+αが要るのです。

+α・・・これはその人の持っている人間の大きさ、懐の深さではないかと思います。

それは桂米朝の持っているもので私らはとてもやないがそんなんはありません。この+αこそ『百年目』を演る上で一番大事な”肝”だと思います。私も演りますが師匠のをなぞっているいるだけです。

春団治師匠のコラムを執筆されてる桂春若師匠は「米朝師匠の”百年目”は史上最高の”百年目”!今後これの上をいく”百年目”はない」と仰ってます。

弟子の立場ではございますが「その通り!」と思います。

『百年目』のお稽古をお願した時は忙しく、また今度空いている時と言われ、暫くしてお会いした時に「お前はんの百年目の稽古やないけどな」と師匠から言うてくれはりました。「明日どないや?」・・・いきなりのお言葉。

びっくりしました。明日と言われれば本来なら「有難うございます。宜しくお願い致します」と言うべきところですが・・・それが言えなかった。

というのがアカン事ですが稽古してませんでしたので心の準備が、それでなくても下手でダメなのに・・・。

で「師匠すいません、明日は仕事で・・・」と嘘を付いてしまった。師匠、ホントにすみませんでした、ゴメンナサイ!

稽古はその日から4日後に決定。

それからの3日間は人生で一番稽古したんちゃうかというくらいに稽古しました。朝10時から夕方6時まで3日間、やりました!!・・・こんなん自慢するのはアホです、普段から稽古しとけいうねん・・・すみません。

満を持して稽古に伺いました・・・一杯直されました、ホント直されました。

師匠の足下にも及ばない『百年目』ですが、恥ずかしながら演っております。

で、どんな事を注意され直されたのかと言いますと・・・そこは企業秘密です。

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