月亭天使さんと一緒に暮らしていた猫、きなこちゃんを覚えておられるでしょうか。17年共に過ごし、3年前に他界した猫さんです。今回はこのきなこちゃんと月亭天使さんのお別れの時についてつづっていただきました。
きなこちゃんへの愛が溢れています。あなたも忘れられない猫さんを思い出してみませんか?
卒業とお別れ
保護猫カフェは、基本的に里親を探すためのカフェなので、猫たちはいずれ卒業していくことになります。
よく言われることですが、仔猫はすぐに里親が見つかります。
私たち人間もそうですが、若さというのは何ものにも変え難いものがあるようです。
しかし、保護猫カフェには、多頭飼育崩壊や飼い主さんの病気等によって保護された猫たちもいるため、齢4、5歳、もっと大人な猫たちもたくさんいます。
また、保護猫カフェによっては、ペットショップで時間を過ごしすぎた子たちを受け入れているところもあります。
確かに、子猫ちゃんは可愛い。
けど、子猫ちゃん時代は六ヶ月ほど。
それを過ぎたら、可愛くないのか?
否、我が家のきなこは、子猫ちゃん時代も若人時代も壮年期も、時が経てば経つほど、可愛くなりました。
猫ちゃんは常に可愛いのです。
たまに、『我が家の猫、ビフォーアフター』のような写真を見かけますが、美少女な仔猫時代が想像できないぐらいぽっちゃりした別猫になっても、やっぱり可愛いのです。
うちの子になった時点で、めちゃくちゃ可愛いのですよ。ほんま。
なので、保護猫カフェの子たちもみんな可愛いのですが、なかなか里親さんが見つからず、カフェに何年も在籍することになる子がいます。
まあ、そういう子は開店から閉店までほぼ寝ていて、猫カフェのオーナーさんから、「いつまで、寝てんの?」と注意を受けることもあるのですが…。
そんなカフェの重鎮になりつつある子に、里親希望の方が見つかり、トライアル(大抵の保護猫の場合、飼い主さん、または先住猫がいる場合、その猫と相性が合うか、また猫を飼うのに良い環境か等、様子を見る期間をもうけています。猫によっては環境の変化についていけず、体調を壊す場合があり、カフェへ戻ってくることも…)を経て、ずっと生活できるおうちが見つかると、とても嬉しくなります。
カフェのオーナーさん、時には里親の方がSNSでその様子を発信してくれることがあるのですが、保護前の環境が過酷すぎ、カフェでは「シャーシャー」言っていた子が、里親さんの家で、ヘソを上に向け、安心しながら寝ているのを見ると、めっちゃ感動します。
いつも、カフェでお膝に乗ってくれていた子がカフェを卒業するのは寂しいですが、ずっとのお家を見つけることが目的なので、涙を飲んで卒業をお祝いします。
保護猫カフェの猫たちには、いつか別れることを前提で会いに行くのですが、飼い猫ともやはり別れがあります。
飼っていた猫のきなこは十八年生きて他界しました。
連れて行った動物病院で、「今日が山場で、このまま病院で亡くなるかもしれません。連れて帰りますか?どうしますか?」と言われ、悩んだ末、せめて家で一緒に過ごしたいと、連れて帰りました。
ずっと「ありがとうなぁ」と言いながら撫でてあげていると、明け方に「にゃあ」と一声鳴いて、天へ昇りました。
あんたも天の使いになったなー、と思いながら、ペットのお葬式についてネットで調べました。
現在はペット葬も色々あり、お坊さんがきちんとお経をあげ、桐の箱に入れて、お骨にしてくれるところもあるそうです。
桐の箱?…五万円!!?
ごめん、きなこ。
うちにそんなお金はなかった。
と言うわけで、近所でお骨にして、骨壷にも入れてくれはるところを見つけ、父と一緒に連れて行きました。
きちんと祭壇もあり、お花に囲まれたベッドにきなこを横に寝かせます。
スタッフの男性が「私どもは音楽葬ですので、音楽で、きなこちゃんを送りたいと思います」とおっしゃり、私と父はきなこに手を合わせました。
しばらくすると、曲調が変わり、「それでは、最後に、きなこちゃんに感謝の気持ちをお伝えください」とのアナウンス。
私は、「きなこ、ありがとうなぁ。もっと、長生きして欲しかったけど、天国でいっぱい遊び回るんやでー」と心の中で呟き、これが最後のお別れかな?と思った瞬間、それまでのアナウンスとは違う、女の子の声がこんなふうに喋りはじめました。
「きなこだよ!今まで、可愛がってくれてありがとね!おもちゃで遊んでくれたり、おやつをくれたりして嬉しかったよ」
そういえば、受付の時に飼い猫の名前・性別・年齢、というのを書いたな、と思いつつ、「ええ?!まあ、ええけど、きなこ、標準語やったんやな」と微笑ましくなりました。
そして、最後に「けど、一番、嬉しかったのは抱っこをしてもらうことだったよ」と言われた瞬間、「きなこ、抱っこ、嫌いやったけどな。って、誰や!!」とつっこまずにいられませんでした。
しかし、ただの悲しみから、感謝の優しい心もちになったので、音楽葬は成功だったと思います。
次は、大阪弁の猫ちゃんを我が家に迎えたいと思います。