雨男・晴れ男は迷信と分かっていても、ついその日の天気とその人物を結び付けてしまうもの。しかし、「迷信」や「つい」というレベルを超えた雨男がおられたそう。それは三代目桂春団治師匠です。干ばつに苦しむ地域では喜ばれそうなぐらい。
今回は桂春若師匠に三代目桂春団治師匠の「雨男」エピソードをつづっていただきました。それはもう大変な「雨男」だったよう。雨のせいで、冷や冷やしたこともあるとのこと。お楽しみください!
雨男
うちの師匠は、大変な「雨男」です。
春団治主催のゴルフコンペがあったんですが、半分以上は雨でした。桔梗が丘や伊賀という三重県のゴルフ場での開催が多かったんですが、近鉄電車で東へ雨雲と一緒に移動したこともあります。
五代目桂文枝師匠も「雨男」です。
この雨男二人が、天神祭りの打ち上げコンペに招待されたことがあります。
文枝師匠と春団治の組は、トップスタートです。
やはりその日も天気は良くなかったんですが、雨が上がったんでスタートしようと二人がティーグランドに上がった瞬間に雨がザーッと降り出しました。
第一打を打ち終わって、「ほなお先に・・・」と二人がフェアウェイを歩いて行くと、後から「雨雲」が二人を追いかけていったと云います。
次の組がティーグランドに上がった途端に雨が上がったようです。
ある日、サンケイホールで落語会がありました。
私が二ツ目出番で楽屋入りすると、「今日、文枝師匠と春団治師匠が一緒にゴルフへ行ってるみたいです」と告げられました。
開演が近づくと、「一寸ゴルフが雨で進行が遅れているようです。一寸伸ばし気味でお願いします」。
出番には間に合ったんですが、後から聞いてみると「嵐のような雨」やったようです。
「やっぱり」
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私のゴルフは文枝師匠に勧めていただきました。
「コースはわしが連れて行ったるさかい、ハーフセットでええさかい買うとき」と。
コースへ行く時は、文枝師匠は玉出で私は粉浜と近いものですから、師匠の車で迎えに来ていただき、プレー代まで師匠にお世話になる。ありがたいゴルフです。
でも、車の中では
「わしがゴルフに行くいうたら、いっつも雨や・・・」と。
文枝師匠と春団治では、同じ「雨男」でも一寸違いました。
文枝師匠は今も云いましたように、「雨男」というのはご自分で解ってはりました。
でも春団治の方は、当日メンバーをズラ―ッと見渡し、
「誰かこの中で雨男がいるのかね」と標準語っぽくいつも云います。
皆心の中では「あんたあんた、師匠師匠」と思っています。
この「・・・・・・いるのかね」と云う師匠のそういう云い方が、凄く春団治らしく好きでした。
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毎年4月に池田で「春団治まつり」があります。
ある年、師匠が体調不良で欠席ということに成りました。
この時に平成30年に亡くなった桂福車さんが私に
「兄さん、今年の春団治まつりは天気の心配せんでもよろしいな」
「ホンマやな、大丈夫やろ」
その年の春団治まつり当日は、始まって以来の「快晴」でした。