あけましておめでとうございます!今年も『寄席つむぎ』をご愛読いただきますよう、よろしくお願いいたします。
新年第1回目は、桂春若師匠へのインタビューです。今年古希を迎える桂春若師匠、記念に何かされるのかや三代目桂春団治師匠との思い出をうかがいました。読者さんへのメッセージもいただいていますので、最後までぜひお読みください!
古希の記念は?
――令和3年11月で、春若師匠は古希を迎えられるそうで。おめでとうございます!
そうか、古希か。気ぃついたら時間が経っているなぁ。
――ほんま時間ってあっという間に過ぎてますね。気づいたら、自分や周囲が老けてるんです。
時間の経過が早い人は幸せな人なんやって。心理学的に言うたら。
――そうなんですか?じゃあ、私は幸せなんかも。それはそうと、古希の記念にしようとご予定されていることはないでしょうか?
ないなぁ。年齢を気にしたことないし、若く見えるから年齢を当てられたこともないんです。ずっと人前に出て、世間に見られているからでしょう。見られんようになったら、ぐっと老けるはず(笑)。話している内容で、年齢を当てられたことはありますが。
――ずっと新しいことに挑戦し続けるのも、若々しい秘訣のように感じています。オジサンになってから、新しいネタを覚えよう・稽古しようというのは、他の業界では少ないですし。
毎年独演会でネタおろしはしているね。今年は何をしようかな。独演会は5月に東京のお江戸日本橋亭、10月に天満天神繫昌亭で開催予定です。なんもなければね。
――去年は大変でしたよね……。
ほんまやで。独演会の時に限ってなんかあんねん。特にお江戸日本橋亭の時は。去年はコロナやろ、その前はローマ法王が東京から広島に移動するとかなんとか。そのもう一つ前はトランプ大統領が来日していて、道路が大渋滞。
――ある意味、「持って」はりますね。
せやろ。ネタにしてる(笑)。
古典落語には稽古の時に新しい発見がある
――新作落語には挑戦されないのでしょうか?
小佐田先生の新作落語を3~4本やってるかな。一度高座にかけたら、しばらく続けてやるけど、いったん離れたらやらんくなる。
――やっぱり古典派で?
古典は稽古していて楽しいんです。繰っている間に新しい発見があって。ここはこうしよう、新しい入れ事をしようと思い浮かぶ。リズムが出来上がっているんやろうね。ネタを繰るのも、高座とは一味違った楽しみがあるんです。
――なんとなく分かる気がします。先人が色々と工夫をしている形跡が、ネタの中に見え隠れするというか。だから、現代の噺家も工夫がしやすい。研ぎ澄まされた「隙」と言うのが良いのかしら。
研ぎ澄まされたといえば、うちの師匠(三代目桂春団治師)は晩年、12席しかやらなかったんです。
――え?そうなんですか?
元々持ちネタの数は少なかったんやけど、晩年はさらに少なくなった。でも、その少ないネタが抜群に上手い。
――本当に華麗としか言いようがない高座でしたね。
なんであないに上手いのか、聞いておけば良かったと後悔しています。若いころ、角座などで月40回高座に上がっていたからか、めちゃくちゃ稽古をしたのか。今度聞こう、次に聞こうと思っているうちに、他界してしまって……。
――普段、三代目春団治師匠とは、どんなお話をされていたんですか?
南海ホークスや(笑)。芸談はあまりしなかったな。口数の少ない人やったから、こっちから話しかけないといかんかった。「こんなんあるんですけど、知ってはりますか?」みたいに。それで「知らん」となったら、会話が進まない。
1月9日には天満天神繫昌亭で「春団治一門会」が
それでも聞いておかんといかんかったね。聞いたら、何かに残しておかんと。前に岩田寄席のことを書いたけど、同期の桂南光さんと話していて思い出したことが多かったんです。飲んでいる時のことなんか、すぐ忘れてしまう。
――演芸界あるあるですね。飲んでいる時のことは忘れる(笑)。
せやろ、みんなそう言うやろ(笑)。会える人とも会っておかんと。去年はコロナで全然会えんかったから。前なら、「最近会うてないから、ちょっと飲みに行こか」となってたけど、そうもいかんようになった。南光さんなんか電話で時々喋っているから会っているような気がしているけど、会っていないなぁ。
――1月9日には春団治一門会がありますが、一門の方と会うのも久しぶりになりますか?
せやね。1月の「春団治一門会」と毎年4月に池田市で開催している「春団治まつり」以外で一堂に会することはないね。
――それでも皆さんお元気ですし、また会おうと思えば。
元気やないで(笑)。音が聞こえにくうなったり、視力が下がったり。歯もガタガタや(笑)。
今年は夢や希望を持って!
――そんなこと言わないで、いつまでもお元気でいてくださいよ。まだ連載も終わっていませんし。あ、最近、お囃子のことを書いていただくことが多いんです。やっぱり東西でお囃子に対する意識って違うなと感じています。
上方はハメ物の存在が大きいやろね。そこが東京と一番大きく違う点やと思います。
――太鼓は「打つ」なのか、「叩く」なのか。東京では「叩く」が多いと聞いています。
私は「打つ」やね。太鼓は打楽器やし。上方は長唄の望月流にお囃子を習いに行く人がいたから、そうなったんかも。歌舞伎囃子は寄席囃子と一味違うかも知れんね。私も二代目の望月太明藏師匠を歌舞伎囃子を習いに行っていたから、余計にそう感じます。
――そのお話、とても気になります。
このことは、もう書いてんねん。『稽古事』ってタイトルで。いつ出すかタイミングを見計らっています。
――とても楽しみです。最後に『寄席つむぎ』の読者さんに一言お願いします。
去年はいろいろありましたが、今年は≪いつもいつでも夢と希望を持って≫…、なんやマイペースの『東京』みたいになってますが。頑張っていきましょう。私もますます頑張りますのでよろしくお願いいたします。
――有難うございました。

天満天神繁昌亭でお待ちしています

今回はじっくり桂春若師匠にお話をうかがいました。特に印象に残ったのは、「古典落語は稽古していて楽しい」です。この一言だけでも、桂春若師匠がどれだけ落語を愛しておられるかが伝わってきます。
桂春若師匠は令和3年1月9日、天満天神繁昌亭夜席「三代目桂春団治一門会」にご出演されます。ぜひ足をお運びくださいね。
三代目桂春団治一門会
日時:令和3年1月9日 18時30分開演(18時開場)
会場:天満天神繁昌亭 (大阪市北区天神橋2-1-34)
木戸銭:前売り3000円、当日3500円
チケット販売:0570-02-9999(チケットぴあ)/Pコード 597-700
harudanji_3@yahoo.co.jp
お問い合わせ:06-6452-3874(天満天神繁昌亭)
