広告

ホームレス野球~噺を肴にもう一杯!:桂三若

桂三若

寄席つむぎに桂三若師匠が初登場です!桂三若師匠には、酒の肴になりそうなお話をつづっていただきます。嘘か誠かを気にせずに、楽しい気持ちになれること間違いなし!

記念すべき第1回目は、落語家の野球チーム「もっちゃりーず」でのエピソードを。数々の伝説を生みだした「もっちゃりーず」で、何があったのでしょう?お楽しみください!

広告

ホームレス野球

楽しいお酒を呑んでると「もう一杯分話がしたいな!」となることがありますよね。そんな時に酒の肴になるような軽い噺を綴っていきたいと思います。どうぞ気軽にお付き合いくださいませ。

一回目ということで何から話そうかと考えたんですが、やはり落語家らしく大好きな『野球』の噺から始めましょうか(笑)

僕は野球をやるのも見るのも大好きです。本格的にやったことは無いのですが、子供の頃はグローブが買ってもらえず軍手をはめてキャッチボールしたもんです。

先日、大阪で久しぶりに野球に参加しました。落語家チームの「もっちゃりーず」です。僕は25年前から在籍してますが、入団当時は平均年令が50歳くらいだったと思います。

ところが若者の野球離れの影響が大きく新人がなかなか入ってこず、そのままメンバーが歳を重ね、平均年令65歳くらいまで高齢化が進みました。

その頃は悲惨でしたね。バットでずっと腰や肩を叩いてる人や、外野でえずいてる人、ベンチで寝てるのか永眠してるのか分からない人や、歩いてるだけでアキレス腱を切った人もいました。相手ピッチャーがロン毛の兄ちゃんだった時はずっと女の子だと思ってた先輩がいて、終わって整列の時に「男かい!」と叫んでました。

その先輩曰く「目が悪くなってピッチャーの顔なんか全く見えへんねん」って、そんな人がバッターボックスで投げられた球を見て、バットに当てれるかはおして知るべしです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

とにかく守ってる時間が長く拷問のようでした。やっと攻撃になったと思って便所へ行って帰ってきたら、また守るという無限地獄。そのわりには真面目で39対0で負けてても、ランナーが三塁にいると「前進守備でバックホーム体制」と意味不明な命令が飛ばされたりしてました。

今も当時も毎週月曜日の朝9時から試合をします。我々はプロじゃないので、球場代3000円と審判代6000円を二チームで割って4500円づつ払うのですが、一つだけ決まりがあって、朝9時に整列した時点で9人揃ってないと罰として9000円全額を払わないといけないんです。

ところが我々落語家は週休6日のくせに、前日の日曜日だけはわりと仕事があるんです。仕事があるとただでお酒がおごってもらえる。

もう「ただ」が大好きな人ばかりです。「ただ」ならお金出してでもほしいというレベルですから、もうガバガバと親の仇ほど呑む。そうなると起きれなくて野球をさぼる人が続出するわけです。

ある日も住吉公園で試合でしたが、やはり8人しかいない。皆が「どうすんねん!今日も罰金取られるやないかー」と発狂してたら、誰かが「あの人達の誰かに入ってもらったらどうですか」と指を指したのが公園で寝てるホームレスさんでした。

確かに人数合わせに並んでくれるだけでいいのですから、誰でもいいんです。たくさんいるホームレスさんの中から若手のホームレスさん(っていう言葉もおかしいけど)に声をかけると気さくに「いいよ!今日は休みだから」とのこと。

「いや…毎日休みやん!」という突っ込みはかろうじて飲み込み、外野を守ってもらいました。立ってるだけでいいですから、といってたんですが、守ってもらうとこれが上手いんです。

バッティングもヒットをかっ飛ばしたりします。聞くと高校時代は野球部で甲子園を目指してたとか。「いや…どこでどんな挫折があってん!」という突っ込みはなんとか飲み込みました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

そうなると「住吉公園の日は8人でええやん」ってなりますよね。だって絶対公園にいるわけですし(住んでる)寝坊してもすぐ起こせるんですから。

そのホームレスさんも久しぶりに野球が出来て、また人に頼られて嬉しかったのか、だんだん責任感が芽生えてきて、僕らが8時半くらいに公園に行ったら一人でグランド整備とかしてるんです。

最初はスリッパみたいなのを履いてたのが、いつの間にかスポーツシューズを買ってたりして、右がアディダスで左がナイキでした。「いや…片方づつ買ったやろ!」という突っ込みは半分吐きながら飲み込みます。

そして我々は落語家ですから「うちの野球チームにホームレスさんがいますねん」ってなことを舞台で面白おかしく言うわけです。そうするとそれを面白がってファンの方が野球見学に来て「どれがホームレスさんやろ?」と探すんです。

ところが落語家は見た目がみんなホームレスみたいなので誰か分からない。監督の笑福亭仁福師匠を指さして「あの人ちゃうー?」なんて言ってたりします(まぁ当たってなくもないですが)

そしてホームレスさんもどんどん馴染んでいき、どこを守らせても上手いので「今日はピッチャーをやってもらえますか?」なんてこともありました。先発ですよ。頭なんか半年は洗ってないのに先発(洗髪)って!

ある日は「今日はキャッチャーをお願いします」

野球をやったことの無い方でも分かると思いますが、キャッチャーというのは守備の要でチームの頭脳ともいうべきポジションですよ。そこをホームレスさんが守るんです。ホームレスさんがホームを守るというなんともシュールな絵面。

ホームレスさんが皆に向かって叫ぶんです「バックホーム!」って、「いや…あんたが帰れよー!」という突っ込みは、さすがに飲み込めませんでしたとさ。

なんていうお馬鹿な噺を肴に次回ももう一杯お付き合いくださいませ。

匿名で投げ銭ができます
広告

宝塚メディアネットワークは三若師匠を応援しています

特定非営利活動法人宝塚メディアネットワークは、桂三若師匠を応援しています。

桂三若師匠がご出演される落語会も企画運営、詳しくは以下の公式サイトで。

外部サイト