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湧いて出るショッカー~上方落語家、東京で修業する:笑福亭里光

笑福亭里光

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入学や初出勤、初デートなどどんなときも初めての日は、ドキドキして落ち着かなくてとても緊張しますよね。
笑福亭里光師匠が入門して楽屋入りを迎えた日。もちろん、緊張の1日だったみたいです。
そして、前座仕事をこなす中で笑福亭里光師匠が楽屋で出会ったショッカーとは一体…?

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湧いて出るショッカー

こんにちは。笑福亭里光です。 

僕の楽屋入りの初日、1998年6月21日は日曜日でした。 

夜の部の一番下っ端の前座は15時半には楽屋に入らなければならない。 

当時住んでたアパートの近くに小さなプラネタリウムがありましてね、

付き合ってた彼女と午前中に行きました。 

僕の緊張が伝わったんでしょう、少しでも和らげようと連れて行ってくれたんです。

ただ行ったことは覚えてるんですが、どんなものを見たのか全く覚えてない。

緊張しててそれどころではなかったんでしょう。 

ついでに言うと楽屋での出来事も全く覚えてない。 

要は午前中にプラネタリウムに行った事実以外、何も覚えてないということです・・ 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

最初の数日は殆ど何もさせてもらえない。 

(前座の)先輩方の仕事ぶりをただひたすら見る。 見てたって何も覚えられないんですけどね。 

後は挨拶。

二ツ目以上の100人くらいいる芸人に挨拶していく(なかなか寄席に出ない人なんかは1年経ってやっと挨拶できた、なんて人もいますが)んですが、

これがちょっと変わってる。 立て前座(一番立場が上の前座)を通して挨拶しないといけない。 

これが面倒でしてね、自分からは挨拶できないんです。 

10日間基本は同じメンバーですから、初日が一番大変です。 だいたい昼夜で各20人くらい出演する。 

顔と名前を覚えるのに苦労しました。しかも厄介なことにみんな同じ顔に見える。 

個性的な顔立ちの芸人が同じ顔に見えるんですから、どんだけ緊張しとるねん!?ってことですね。 

次々湧いて出るショッカーみたいなもんです。 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

さてショッカーの戦闘員を次々と倒して終わった初日、疲れすぎて食事も喉を通りませんでした。 

次の日からは代演で来た人に挨拶するだけですから、少しは楽になりましたが。  

楽屋に入ってまずすることが「お茶くみ」なんです。 数日してからボチボチやらせてもらいました。 

お茶を入れるのも普通ではないんですよ。 何が普通じゃないかって? 

やかんのお湯を直接急須に入れるんです。 普通はそんなことしないでしょう? 

楽屋の茶葉はね、安いんですよ。 だって一日何十杯と入れる訳ですからね、高価なものにしても仕方がない。

それに経費削減もしなければならない。 というてお客様商売ですから、客席周りはケチれない。 

で、目を付けたのが楽屋のお茶。 芸人に飲ますお茶は安くても構わない(笑)。 

立派な経費削減です。

こういう安い茶葉はね、普通の入れ方ではダメなんです。

とりあえず熱湯を注いで茶葉を吃驚させて一気に開かせる。 

でね、蓋を閉めて急須を振る。ひたすら振る。 そうすることでようやく味も色も出る。 

お茶は1人につき3回出すんです。 楽屋に来て1杯、衣装に着替えてから1杯、高座が終わってから1杯。

20人に3回出すとして、60杯入れることになる! 言い換えれば60回急須を振るということ。 

ですから楽屋に入ると間もなく悩まされるのが腱鞘炎なんです。 ウソです。

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