大好評!桂三若師匠の大爆笑エッセイ第5回です。今回は桂三若師匠が所属しておられるよしもと吉本興業の名物(?)マネージャーさんについてつづっていただきました。今回も爆笑間違いナシです。さて、どんなマネージャーさんがおられるのでしょうか?
電車の中で読まないようにしてくださいね。絶対に吹き出してしまいますよ。
吉本の名物マネージャー
お陰様で二度のワクチン接種を終えました。普通の副反応は熱が出たり倦怠感を覚えたりするのですが、吉本興業での接種でしたので、なぜか「もう一回打ってくれー」という副反応が出てます。
最近は吉本を辞める人が増えてるので、辞めさせないよう、おそらく覚醒剤のようなものが混ぜられてると思います。
今日はそんな素敵な会社、吉本興業の噺を肴にもう一杯飲みましょう!
僕ら落語家は師匠の所属する事務所に自然にというか、勝手に所属となります。
僕が入った27年前はほんとになんや分からん会社で、社員さんが芸人の先輩よりも恐ろしかったです。落語が滑ったりすると「三若!お前なに滑っとんねん!」とババちびる程怒られました。
ギャラも安くて、歩いて行っても赤字なんてザラにありました。
一度、上海にロケで一週間行ったのですがギャラが入りません。社員さんに言うと「また調べとくわ!」と言われ、そこから一年以上なしのつぶて。もう一度言うと「しつこいなーお前は!上海行けただけでもありがたく思え!交通費なんぼかかったと思うねん!」と、もはや違う部族としか思えない返しに途方に暮れるしかありませんでした。
マネージャーさんも理解不能な方が多く、「昨日の仕事は15時入りです。よろしくお願いいたします」という不思議なメールを送りつけたりしてきます。
色んなマネージャーさんがいましたが、一番強烈だったのは僕が『住みます芸人』として秋田に住んでいた時に担当してくれたTマネージャーでした。26歳の女性でしたが、とにかく言葉を良く間違えます。
『ゲリラ豪雨』を『ゴリラゲイ雨』
『尻軽な女』を『足軽な女』
『お腹よじれるほど笑った』を『お腹くだすほど笑った』などなど数えるとキリがありません。
そして何でも『逆に』言いたがります。秋田から東京に行く時、交通手段はどうするか聞かれたので「新幹線で行くわ」と言うと「逆に飛行機では行かないんですね」という具合です。新幹線の逆って飛行機なん!!逆に言う必要はどこにあんの!!と突っ込みどころ満載です。
一度電話で話してるのを横で聞いてたら、吉本の社長の名前を聞かれて説明してたみたいです。吉本興業の社長はあの一部の隙もない完璧な記者会見で名を馳せた岡本昭彦さんです。その漢字を説明してたみたいで
「岡本は普通の岡本です」
いや…普通の岡本ってなに!
「昭彦のアキは日を書いて昭和の昭の右側です」
…それ昭和の昭でええやん!
「昭彦のヒコは吉彦の彦です」
…誰やねん吉彦って!普通は彦根の彦とかやろ!!
アンビリバボーです。
慰め方もとても下手で、ある落語会で100人くらい入るホールにお客様が30人くらいしかいませんでした。僕は落ち込んで「あかんわー人気ないわ俺」みたいなことを言うと「そんなことないですよ、宣伝が足りなかったんですよ」とか慰めてくれたらいいのに
「お客様が少ないんじゃないです。椅子が多いんです」
と意味不明な慰めをうけました。
落語の後「面白かった?」と聞くと「はい、面白かったです」と答えるので「どこが面白かった?」と聞くと「どこがと聞かれると辛いです」。
俺が辛いわ!
本当に不思議人間でジャンパーを前後ろや裏表で逆に着てる人は見たことありますが、上下で逆に着てた人を生まれて初めて見ました。
いつも靴下に穴が開いてます。若い女性がですよ。最近は子供でも見ないですよ。
そして和室なんかで靴を脱ぐ時に「あっ穴開いてる」と今気付いたように言いますが、もう足の薬指くらいまで穴が開いてるんです。覆ってる部分のほうが少ないくらいなのに、なんで今気付くねん!
神の領域です。
一番びっくりしたのは、文化会館での仕事の時にロビーをうろうろしててら、ジュリーのポスターが貼ってあったので「ジュリー来るやん!」と僕が言うと
「この人も来ますよ」
と嬉しそうに言うので見ると、なんと指名手配の写真でした。関東連合○○と書かれてました。
文化会館に来るかー!!
来たら見に行くけど。
歴史に名を残す人です。
そのマネージャーと共通の知人が去年の秋にお亡くなりになったので知らせようとラインで「○○さんが黄泉の国へ旅立ちました」と送ると
「Gotoキャンペーンでですか?」
と返信がありました。
まぁそんなお笑いマネージャーを多数抱える吉本興業ですが、最近は少しづつまともな会社になりつつあります。
特にM迫さんの事件以来、コンプライアンスにはうるさくなり、一人づつ面談させられました。僕の面談はだいぶ年配の社員さんが担当で、席に着くなり
「おい三若、お前、ガラの悪い奴まわりにおらんやろなーおー!」
といきなり怒鳴られました。
「あんたやー」と叫びそうになりましたね。
そういう新喜劇を地でいくような素敵な会社ですので、これからもよろしくお願いいたしますね。
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