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【取材記事】第87回ヨセゲー「古今東西新作落語」レポート

三遊亭遊喜

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 朝晩はずいぶん涼しくなり、秋の気配が感じられるようになった東京。
 神保町にあるらくごカフェで、今月も「ヨセゲー」が開催されました!

 9月は、三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・柳亭芝楽師匠・笑福亭里光師匠に加え、春風亭鯉枝師匠を迎えての「古今東西新作落語」です。

 自作あり、他作あり、ネタ卸しあり。はたまた、江戸あり、上方あり。さらには、昭和から平成、令和と各時代に生まれ、語り継がれている噺もあり。
 バラエティに富んだネタが並ぶフライヤーを見ただけで、期待が高まります。

 まさに「古今東西新作落語」というテーマにふさわしい楽しい会の様子をレポートします!

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新作落語は大混乱!?

 「世界でいちばん小さい舞台から、みなさんの脳内へ」という、柳亭芝楽師匠の言葉で始まった、今回のヨセゲー。

 芝楽師匠は、この日がネタ卸しとなる『高円寺の祭』で挑みます。
 新作落語は次々に生まれ、しかし後世にまで残って受け継がれていくのは、優れた作品だけ。
 「伝説を作りたい!」と気合いたっぷりの芝楽師匠です。

 一昨年・昨年と中止になった高円寺の阿波おどりが、そもそもどのように始まったのか……。虚実入り混じった!?展開で語られます。

 その驚愕のサゲに、客席だけでなく舞台袖もびっくりです!

 『高円寺の祭』の興奮冷めやらぬ高座に、次に上がったのは笑福亭里光師匠。
 なんと、そこには芝楽師匠の羽織までもが残されており、マスク姿の里光師匠が「何なのあれ!?」と羽織を回収してからのスタートとなりました。

 里光師匠は、三遊亭丈二師匠作の『公家でおじゃる』。
 キティラーとしても有名な三遊亭丈二師匠は、三遊亭圓丈門下。ご自身も、多くの新作落語を生み出していらっしゃいます。

 二ツ目時代、持ちネタをお互いに演じる機会があり、『公家でおじゃる』はその中で知ったものだそう。

 「びっくりするよ!」という予告からの始まりに、ある程度のびっくりは覚悟していたつもりでしたが、「ペットの公家」というパワーワードが出現し、一気に世界へ引き込まれます。

 冷静に考えるととっても怖い、皮肉たっぷりの噺を、里光師匠がさらりと、でも楽しそうに語ります。

 芝楽師匠と里光師匠の余韻が残る中、続いては、春風亭伝枝師匠。
 伝枝師匠は桂米朝師匠作の『一文笛』。この日がネタ卸しです。

 『一文笛』は、昭和の中ごろに生まれた上方落語の新作。
 桂米朝師匠は、衰退していた上落語を復興させ、180にものぼる噺を復活・発展させた一方、こうした新作落語にも取り組んでいました。

 さて、伝枝師匠が大切に育てていらっしゃる食虫植物の鉢が盗まれてしまったというお話から、上品な泥棒といわれるスリと、その兄貴の物語が始まります。

 「自分ではいいことをしたつもりでも、相手にとっては迷惑だった」ということは、日常生活でもよくあります。それが、物やお金に関わることなら、なおさら。
 言って聞かせる兄貴のしみじみとした口調は、伝枝師匠のたたずまいにぴったり。

 鮮やかなサゲに、思わず息を呑む客席です。

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後半も大盛り上がり!

 仲入りを挟んで、春風亭鯉枝師匠の登場です。

 身の回りで最近起こった不思議なお話が淡々と語られ、場内は一気に鯉枝師匠ワールドに。
 思わず吹き出してしまうお客さんも続出!

 さて、今年53歳になる鯉枝師匠、どうしてもやってみたかったことが。
 それは、なんと「ナンパ」!そう聞くだけで、ワクワクとヒヤヒヤが膨らみます。笑
 若かりしころ、三遊亭遊喜師匠と2人で挑戦したことはあったのですが、1人では初めて。
 しかも、実践の場はお住まい近くの浅草六区。浅草といえば……、のピンチを乗り切る意外だけれど単純な方法に、感心するやら安心するやら。

 のちに登場の遊喜師匠が「あれを聞いただけで来た甲斐があったでしょう?」とおっしゃるほどの、面白エピソードでした。ぜひ、ツイキャスもチェックしてみてくださいね。

 鯉枝師匠が演じるのは、自作落語『御縁』。
 鯉枝師匠のさっぱりした語り口でどんどん展開していく場面に、ついていくのが大変!でも、変わった場面に気づくと爆笑!の客席です。

 トリを務めるのは、三遊亭遊喜師匠。
 遊喜師匠はこの日、池袋演芸場から新宿末廣亭、そしてらくごカフェ・ヨセゲーと、とってもハードな1日でした。

 そんな遊喜師匠が演じるのは、有崎勉(柳家金語楼師の筆名)作の『釣りの酒』。
 柳家金語楼師は、明治から大正、昭和と活躍。落語家から喜劇俳優へと活動の場を変えながら、筆名・有崎勉としては多くの新作落語を生み出しました。

 『釣りの酒』は、とにかくお酒が飲みたい男と、とにかく釣りが好きな旦那の、噛み合いそうで噛み合わないお話です。

 噛み合わなさに合点がいくと、何となく先を予想したくなるもの。
 遊喜師匠の作る一瞬の間に、客席のみなさんの心の合いの手が聞こえるようでした。笑
 次々にたたみかけていく笑いの中にある緩急が、とても心地よく聞こえました。

 噺には遊喜師匠のふるさと、静岡・島田を流れる大井川が登場。
 島田市ふるさと・観光大使としてのアピールも欠かしません!

 ちなみに、遊喜師匠ご本人は「お酒はそんなに飲まない」けれど、「すすめられたら、すすめられるまま飲んでしまう」そうですよ。

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次回 ヨセゲー#88は「落語の経済学」!

 新旧のみならず、東西までもが綯い交ぜになった今回のヨセゲー。突拍子もない設定や展開の噺に笑い、仲入りやトリではきりりと引き締まり。
 ひとくちに「新作」といっても、いくつもの時代をまたぎ、日本をまたぎ……。それぞれの噺の個性が、演ずる人の個性と相まって、今にいたるのだなあと思わされました。

 第87回ヨセゲー「古今東西新作落語」は、9月22日(木)までツイキャスでもご覧いただけます。
 次回・第88回ヨセゲーは「落語の経済学」。物価高騰の昨今、気になるテーマです。
 ぜひ、ご一緒に味わいませんか?

ヨセゲー #88【落語の経済学】
2022年10月13日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2000円 前売:1800円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)

ツイキャス落語会 ヨセゲー#87【古今東西新作落語】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/162524
9月22日(木)までご覧になれます。

 寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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