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⑬寿限無をわー~東海道島田宿からお江戸へ:三遊亭遊喜

三遊亭遊喜

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今年芸歴27年の三遊亭遊喜師匠。入門のお願いをしなければ、今の三遊亭遊喜師匠はありません。今回は三遊亭遊喜師匠が三遊亭小遊三師匠に入門のお願いをしにうかがった場面からスタート。1994年の出来事でした。さて結果は…?

90年代の香りが漂う三遊亭遊喜師匠の青春グラフィティ、第13回目の幕が上がります。じっくりとお読みください。本文最後に遊喜師匠からのお知らせがございますので、こちらもお見逃しなく。

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寿限無をわー

いよいよ入門編です。

大学4年の秋、気になってしょうがなかった師匠小遊三宅に伺い、弟子にしてくださいと伝えました。

勇気をふり絞ってお願いしたものの「今は前座がいるからなと無理だな」。ガッカリしていると、「まあ話は聞いてやるよ」と色々と質問をされました。「今何をやっているのか? 学生か 何を専攻しているのか?」「どこから来たのか? 出身は?」「親は?」などなど。面接というか、日常のたあいのない会話といってもいいぐらいの内容で。

「この世界は厳しいぞ。本気でなりたいなら親を連れてきなさい。それから大学は卒業しなさい。今日は 遊だち(遊馬)と 浅草行って寄席に行ってきなさい」

最後にこう言われ、師匠宅をあとにしました。

その後、言われた通りに遊だち兄と浅草へ。これは入門できるのか?できないのか?はっきりしないので兄さんに色々聞いてみても、当人もまだ見習いだからよくわからない。なりたかったら親を連れてく るしかないという結論に達しました。 

そこで初めて親に落語家になることを伝えました。何を馬鹿なことをとはじめは言われましたが、なんとか説得し両親を師匠宅へ。

両親の前で師匠は「この世界は厳しいです。食えるかどうかはわかりません」などなど心が折れるようなことをすべて言いました。その後、「それでも良ければ弟子にします」と言ってくださったのです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

そんなこんなでめでたく入門が決まり、卒業してからということで 翌年の4月1日 から師匠宅に通い始めることになります。

まずは住むところですが、お金はないしどうしようかと困っていたら落研の先輩Uさんが 「会社で世話になってるKさんにお前の話をしたら、一部屋空いているから住まわせてあげると言ってる。家賃いらないから住め」と 強制的に住むことに。何も接点のなかったKさん宅に居候することになります。

本当に助かりました。Kさんには感謝しかないです。

会社経営をしていたKさんは、当時離婚をして一人暮らし。夜一緒になればご飯食べに連れて行ってくれたり、覚えたての根多を部屋で稽古してると「ちょっと聞かせてくれよ」と 聞いてくれて笑ってくれたり。居候の身分で申し訳ないぐらい癒されてました。何年も会っていないので 久しぶりお会いしたいです。

Kさん宅から師匠の家へ通うことになります。当時、前座はおたく(遊史郎) 遊だち(遊馬) 遊やけ(遊喜) の三人でした。朝、師匠の家を掃除して犬の散歩して、車を洗車して。それが終わると、おかみさんがご飯を食べさせてくれました。師匠はその時、家にいたり仕事ですでにいなかったり寝てたりとさまざまで。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

掃除の要領を覚えたら、今度は太鼓の叩き方をまずは覚えろと稽古してくれました。一番・二番・仲入り・追い出し・前座のあがり・聖天・大拍子・せりなどなど。師匠がいない時は兄弟子に教わり、なんとなくできるようになったあたりで初めて落語の稽古。どういう稽古なんだろうなとわくわくしました。

最初は『寿限無』で録音は禁止の三遍稽古。稽古部屋で一対一。師匠が『寿限無』を高座と同じようにわーーと一席。「覚えろ」と一言残すと、さっと部屋から出て行ってしまいます。残された私は今の『寿限無』を必死で頭の中でリピートしながら、師匠の残像を焼き付けます。

翌日師匠宅へ行くと「稽古してやる」と稽古部屋へ。昨日と同じく『寿限無』をわーーと一席。

「覚えろ」

「はい」

また頭の中で残像を焼き付けます。

次の日師匠宅へ。「稽古だ」「はい」。『寿限無』をわーーと一席。

「覚えろ」

「はい」

これで三回、目の前で稽古していただいてるわけです。

必死で覚えて翌日師匠宅へ行くと、師匠がいきなり「覚えたか?」と尋ねてくるではありませんか。

「やってみろ」

「はい」

必死で『寿限無』を師匠の前でやるのですが、まったくうまくできない。結果今一度、師匠が『寿限無』をわーーと一席。

「ちゃんと覚えろ」

「はい」

こんな調子で何度か師匠に聞いてもらい、アドバイスをいただきようやくOKがでました。師匠の許可が下りて初めてお客様の前でその噺をできるわけです。プロはこうやって稽古するのだということを学びました。

「これからこの根多でいくら稼ぐかわからないが、それをタダで教えているんだ。それも貴重な時間をとって何回も。そういうことをちゃんと意識して稽古しろ。他の先輩に教わるときも飯の種になるものを教わるのだから、そういうことを意識して接しろ」

と稽古についての心構えもこんこんと叩きこまれました。今になるとその意味がよくわかります。

そんな前座見習い修行の日々ですが、すべてが初めてのことばかりで充実した毎日でした。これから色んな出来事がおきるわけですが、この続きは次回のお楽しみに。

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遊喜師匠が主任に!新宿末廣亭10月中席夜の部

日時:令和4年10月11日~20日、16時45分~20時30分

出演:落語(交替) 三遊亭 遊七・笑福亭 茶光、漫談 マグナム 小林、落語 圓楽一門交互、落語 三遊亭 遊之介、漫談 ぴろき、講談 神田 蘭、落語 三遊亭 圓丸、奇術 北見 伸、落語 立川 談幸
-お仲入り-
落語(交替) 春風亭 昇吾・桂 竹千代・柳亭 信楽、コント コント青年団、落語 柳亭 小痴楽、落語 三遊亭 遊雀、曲芸 ボンボンブラザース、主任 三遊亭 遊喜

会場:新宿末廣亭 HP