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㉘悋気の独楽~師匠五代目桂文枝と歩んだ道:桂枝女太

桂枝女太

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五代目桂文枝師匠といえば、「はんなり」が代名詞の上方落語四天王のお一人。得意ネタは多くありますが、その中でも『悋気の独楽』を挙げられる方は多いのではないでしょうか。今回はこの『悋気の独楽』について、五代目桂文枝師匠のお弟子さん、桂枝女太師匠に解説していただきました。

よく知ったネタでも新たな発見があるかもしれませんよ。桂枝女太師匠が感じる『悋気の独楽』、ご堪能ください。

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悋気の独楽

ネタにも流行り廃りというものがあります。

私がまだ高校のオチケン、素人で落語をしていた頃に落語会やラジオなどでよく聞いた落語は、笑福亭仁鶴師匠の「初天神」「無い物買い」「青菜」、私の師匠の五代目桂文枝(当時はまだ小文枝だったが)は「稽古屋」や「悋気の独楽」など。他にも「七度狐」「色事根問」「花色木綿」などが多くの落語家によって高座にかけられていた。

現在は落語家の数も増え、みんな勉強熱心で創作落語や、古典でも東京のネタなども盛んに演じるようになったので、聴く方も今日はどんなネタかと楽しみも増えたと思いますが、私がアマチュアの頃や入門当時はまだ落語家の数も少なく(現在の4分の1ぐらい)若手が多く、今から思うと少ないネタの取り合いという感がありましたね。

先に挙げたネタのうち、「無い物買い」や「花色木綿」は今はほとんど出なくなった。時代に合わなくてなってしまったと言えばそれまでですが、当時でも合わないと言えば合わないネタだったような気がする。ただ観客の方が落語に飢えていたというか、落語の面白さに新鮮味を覚えていたんでしょうね。

そんな中で当時、四天王と呼ばれていた人たち、六代目笑福亭松鶴、桂米朝、三代目桂春団治、そして私の師匠の桂小文枝(のちの五代目桂文枝)がよく高座にかけていた噺は今でもずっと輝きを放ち続けているというか、色褪せ感がまったくないのは私だけの思い込みだろうか。いやそうではなく、あの名人たちが何度も何度も高座にかけて、練りに練ったその結果が時代を超えて輝き続けるネタになったのだと思う。

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「悋気の独楽」、うちの師匠の十八番。私も高校時代から持ちネタにしていた。恥ずかしながら高校時代「悋気」も「独楽」も読めなかった。どんだけ勉強してないねん。でも落語を聞いて「りんき」「こま」と読むんだとわかった。やはり落語を聞くとためになります。

大店(おおだな)の旦那さんがおてかけさん、今でいう愛人宅へ行って帰りが遅い、御寮さん、大阪弁ではごりょんさんが丁稚に旦那の行く先を問い詰めるという噺。

この落語には三人の女性が登場する。

まずお店のごりょんさん。そしてその店で働くおなごし、今でいう家政婦さん・・・いや、ちょっと違うな、女子従業員としておきましょう。

そして三人目がおてかけさん。

このネタの醍醐味であり一番難しいのがこの三人の演じ分け。すべての女性のキャラクターがまったく違います。大きなお店の奥様、その使用人、そして愛人。男が女を演じる落語、それだけでも難しいのに三人の女性を演じ分けて聴いている者に違和感を感じさせない。なかなかの高等技術です。うちの師匠はこれがうまかった。ホンマにうまかった。

我が師匠をあまり褒めるのもどうかと思いますが、女性を演じさせては日本一といわれるだけのことはありました。なんか偉そうやけど。

今度「悋気の独楽」を聴く機会があれば、ぜひそこらあたりを気にかけながら聴いてください。

先ほど、おなごしさんの説明のところで少し躓きましたが、その理由は今と昔の雇用形態の違いにあります。

次回はそのあたりを探ってみます。また落語の楽しみ方が増えますよ。

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