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散歩と缶ビール~日常ドキュメンタリー:三遊亭はらしょう

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気候が良くなり、外に出るのも楽しい季節になりました。三遊亭はらしょうさんもそう思っておられるようで。散歩とビールをセットで楽しんでいるんですって。

さて、三遊亭はらしょうさんの散歩とビールの楽しみ方とは?

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散歩と缶ビール

何もなくて天気が良い日は、散歩と缶ビールだと決めている。
俺は芸人という非常にのんきな商売であるゆえ、楽しいことしかやっておらず、毎日が自由時間みたいなものである。


特に、天気の良い日などは、近所をぼんやりと歩くのが好きで、その際に欠かせないのが、缶ビールである。
ぼんやりと歩いているということは、それほど疲れることもないだろうと思われるかもしれないが、それなりにしっかりとしていなければ、ぼんやりと歩くことも出来ず、いちいち周囲に目をやりながら散歩をしている。
近所であるから、いつでも家に戻れる安心感もあってか、道中、ついつい缶ビールを買って呑んでしまう。


そんな時、呑むには場所が大切である。
俺は長年の経験により、常に散歩中に缶ビールが呑めるポイントを、五ヶ所ほど勝手に認定している。
ただ、暑い日などは、辛抱溜まらず歩行中に缶ビールの蓋を開けることもあるのだが、歩きながら呑むのは、あまりうまくない。


缶の中でちゃぷちゃぷとしてしまい、それが鼻の下に当たって、甚だ不愉快になるからである。
さらに、また、それは鼻の下から顎へ、ちゃらちゃらと首へと流れ、衣服の中にいつの間にか垂れてゆき、段々と気持ち悪くなってきて、散歩どころではなくなってくるからだ。


腰を下ろして缶ビールを呑むというのが、散歩の良い気分を中断させないコツなのである。


なんだい君は、腰を下ろした時点で散歩が中断しているのではないかね、という感想を持つ方もいるかもしれない。
だが、俺にとって散歩というのは、途中、たまたま遭遇した人の持っている重たい荷物を運ぶのを手伝ったとしても、それは散歩中のままであり、何もずっとフリーで歩いているということではない。

さて、本日も素晴らしい缶ビールを呑もうと、俺は定番のコースを歩いていた。
ぽかぽかと、春陽気である。

タンスを開ければ、フリース一枚で快適な時間を過ごせるが、俺は念の為、薄手のジャンパーを羽織って外へ出かけた。
散歩中の冷えは、絶対に禁止である。
むかし、俺がまだ散歩と缶ビールの初心者だった頃、風邪を引きそうになって、散歩中に服屋へ入ったことがあった。

その際、暖かくて安い服なら何でも良いと買ったのが、骸骨、花魁、富士山などが描かれた時代遅れのスカジャン1500円であった。

そのような、いらぬ出費をした経験があるから、この時期はどれほど気温が良くても油断禁物なのである。
そんな上級者になっている俺は、万全を期して歩いていた。
さて、今日はどこで呑もう。
当然、缶ビールを買うのは場所を決めてからだ。


腰をおろす椅子も見つからないまま、缶ビールがぬるくなっていったことは何度もあるからである。
気候が良いのもあって、俺はアタリをつけているいつものコースではなく、新しい場所を開拓したいという欲求にかられていた。
それはたまにあり、その欲求は喉の渇きよりも激しくなる。
そんなことを考えながら、信号が赤になったので止まっていたら、ふと以前から気になっていた、竜巻の如き砂嵐吹き荒れる公園を思い出した。
それは、半月ほど前だろうか。

仕事帰りに、気分転換うねうね近所を歩いていると、住宅街に大きな公園を見つけたのだ。
その日は風が強く、公園ごと、竜巻の中でぐるぐる上昇しているかのように見えた。
確か、あれは南蔵院の近くだった気がする。

今すぐ行ってみよう。

勿論、こんな時にスマホのグーグルマップは便利だが、頼ってはいけない。

すぐに辿り着いてしまう為、本当はもっと渇いていたはずの喉が、損をした気分になるからである。

ああ、どこだどこだ。

記憶だけを頼りに、竜巻公園を目指す。

勝手に命名した竜巻公園を探す。

だが、歩けども歩けども、見つからない。

結局、二十分ほど経って、渇きの限界がきてしまった俺は、近くにあったコンビニで缶ビールを買って、呑みながら家に帰ることにした。

たまにはこんな日もあるさ。

俺は、ほろ酔う中、あの公園は、竜巻でどこかから飛んで来て、どこかへ飛んで行ってしまったのではないかと思った。

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