入学や初出勤、初デートなどどんなときも初めての日は、ドキドキして落ち着かなくてとても緊張しますよね。
笑福亭里光師匠が入門して楽屋入りを迎えた日。もちろん、緊張の1日だったみたいです。
そして、前座仕事をこなす中で笑福亭里光師匠が楽屋で出会ったショッカーとは一体…?
湧いて出るショッカー
こんにちは。笑福亭里光です。
僕の楽屋入りの初日、1998年6月21日は日曜日でした。
夜の部の一番下っ端の前座は15時半には楽屋に入らなければならない。
当時住んでたアパートの近くに小さなプラネタリウムがありましてね、
付き合ってた彼女と午前中に行きました。
僕の緊張が伝わったんでしょう、少しでも和らげようと連れて行ってくれたんです。
ただ行ったことは覚えてるんですが、どんなものを見たのか全く覚えてない。
緊張しててそれどころではなかったんでしょう。
ついでに言うと楽屋での出来事も全く覚えてない。
要は午前中にプラネタリウムに行った事実以外、何も覚えてないということです・・
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最初の数日は殆ど何もさせてもらえない。
(前座の)先輩方の仕事ぶりをただひたすら見る。 見てたって何も覚えられないんですけどね。
後は挨拶。
二ツ目以上の100人くらいいる芸人に挨拶していく(なかなか寄席に出ない人なんかは1年経ってやっと挨拶できた、なんて人もいますが)んですが、
これがちょっと変わってる。 立て前座(一番立場が上の前座)を通して挨拶しないといけない。
これが面倒でしてね、自分からは挨拶できないんです。
10日間基本は同じメンバーですから、初日が一番大変です。 だいたい昼夜で各20人くらい出演する。
顔と名前を覚えるのに苦労しました。しかも厄介なことにみんな同じ顔に見える。
個性的な顔立ちの芸人が同じ顔に見えるんですから、どんだけ緊張しとるねん!?ってことですね。
次々湧いて出るショッカーみたいなもんです。
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さてショッカーの戦闘員を次々と倒して終わった初日、疲れすぎて食事も喉を通りませんでした。
次の日からは代演で来た人に挨拶するだけですから、少しは楽になりましたが。
楽屋に入ってまずすることが「お茶くみ」なんです。 数日してからボチボチやらせてもらいました。
お茶を入れるのも普通ではないんですよ。 何が普通じゃないかって?
やかんのお湯を直接急須に入れるんです。 普通はそんなことしないでしょう?
楽屋の茶葉はね、安いんですよ。 だって一日何十杯と入れる訳ですからね、高価なものにしても仕方がない。
それに経費削減もしなければならない。 というてお客様商売ですから、客席周りはケチれない。
で、目を付けたのが楽屋のお茶。 芸人に飲ますお茶は安くても構わない(笑)。
立派な経費削減です。
こういう安い茶葉はね、普通の入れ方ではダメなんです。
とりあえず熱湯を注いで茶葉を吃驚させて一気に開かせる。
でね、蓋を閉めて急須を振る。ひたすら振る。 そうすることでようやく味も色も出る。
お茶は1人につき3回出すんです。 楽屋に来て1杯、衣装に着替えてから1杯、高座が終わってから1杯。
20人に3回出すとして、60杯入れることになる! 言い換えれば60回急須を振るということ。
ですから楽屋に入ると間もなく悩まされるのが腱鞘炎なんです。 ウソです。