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お茶くみ~上方落語家、東京で修業する:笑福亭里光

笑福亭里光

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どんな仕事でも一番下の身分の者が苦労することは多々あると思います。
以前から笑福亭里光師匠のコラムに登場する、一番芸歴の長い「たて前座」。今回は一番身分が低い前座さんが主役です。
笑福亭里光師匠を前座時代に悩ませたある物とは一体なんでしょうか…?

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お茶くみ

こんにちは。笑福亭里光です。

寄席に詰めている前座の中で一番芸歴の長い者を「たて前座」というのは以前にも書きました。

では一番下の者を何と呼ぶのか?

正解は「お茶くみ」です。

こんな名称、一般社会では差別になってしまいますよね。

まぁでも今でもそう呼んでるし、それ以外の呼称はないので使わせていただきます。

「お茶くみ」の仕事量が一番多いんです。

前々回紹介しました文字通りのお茶くみに加えて、下足の出し入れ・高座返しをやらないといけない。

寄席の楽屋は靴を脱いで上がりますから、下足の出し入れも結構大変です。

先輩方が来た時に下駄箱へ入れ、帰る時に出さなければならない。

十何足とあるのを(誰がどの靴か)覚えなければならない。

帰る時にスッと出せるように。

それには来た時の靴を覚えておくことが肝心です。

初めのうちは苦労しました。

下足番だけやってる訳ではないですから。

前述のように高座返しやお茶くみもやってる。

もちろん高座が優先ですから、下足は後回しになる。

そんな時は(前座の)先輩が下駄箱に入れてくれるんですね。

当然その先輩にお礼を言いますわな。

ところが、その師匠が帰る時にどの靴か分からない。

あたふたしてると後でその先輩にエラく怒られました。

「ちゃんと(靴を)覚えとかないとダメじゃないか!」って。

あんたが下駄箱に入れたんやんか!!と思いましたが、そんなことは言えない。

要はその先輩の意地悪だったんですね。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

でもね、慣れというのはエラいもんで段々分かるようになるんですよ。

誰が履きそうな靴か。

いま楽屋に居るメンバーと下駄箱にある靴を見て、誰の靴か大体見当が付くようになるんです。

これは服も同じでしょうが、その人の趣味が大幅に変わることって少ない。

困るのが正月と(仲間内の)冠婚葬祭の前後。

正月は殆どの人が着物で来ますから。

同じような草履がズラッと並ぶ。

人数も普段の興行の倍以上出ますから、もう戦場のよう。

逆に怒られる暇もありませんでしたが。

仲間内の冠婚葬祭の前後も困りました。

みんな慣れない正装で来る。

男物の革靴って、あまり特徴が無いですから。

やっぱり同じような靴がズラッと並ぶ。

某師匠の靴を間違えて履いて帰ってしまったことがあります。

お互いに何となく違和感あったんでしょうね、電話したら「やっぱり間違ってるよね!?」って。

ご自宅まで返しに伺ったことがあります。

自分の靴でも間違うくらいですから、そりゃ他人の靴はねぇ・・

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