落語家に入門すると、まず前座修行を行います。お茶くみからスタートし、狭間を体験し、最終的には「立て前座」になるのだそう。この「立て前座」の時の思い出を、笑福亭里光師匠につづっていただきました。色々と権限が増えるよう。それは…。
今から約20年前の笑福亭里光師匠が目にした楽屋風景、じっくりお読みください。
なってしまった
こんにちは。笑福亭里光です。
「立て前座」になってしまいました。それまでは「自分の仕事」さえやっていれば良かったのが、立て前座になると全体を見なければならない。
たとえば昼の部なら、その「運営」をしなければならない。要は番組の進行と管理です。興行の時間は決まっているので、その中でのやり繰りを考える。
やり繰りといっても持ち時間は大体15分(20分の寄席もありますが)と決まっているので、普通は流れに任せておけば良い。
殆どの芸人はそうやと思うんですが、お客さんにウケてると時間が延びる。反対にウケないと(楽屋に)下がってくるのが早い(笑)。そういう時の時間調整を頼むのも立て前座の仕事なんです。
前の演者が時間を延ばしてしまったら、後の演者に少し短めにやってもらう。前の演者が時間を詰めてしまったら、後の演者に少し長めにやってもらう。この世界で唯一先輩に指示ができる場面です。
まぁ、というてもですよ、人間ですから頼みやすい頼み辛いはある。
その前後の演者の人間関係もありますしね。
その辺をスムーズにやれると「デキる前座」として評判が良くなる。
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(後の)演者が来ないのは困りました。電車が止まってしまったり、その他・・
こちらとしては穴を開けるわけにはいきませんから、今現在楽屋にいる先輩方にお願いをする。まぁ最悪前座が出て時間を埋めれば良いんですけども。厄介なのは、その(遅れた)人がだいぶ時間経ってから来ることです。
こっちが一所懸命に時間調整して、やっと元通りになってヤレヤレと思ったタイミングで来よる(笑)。さすがに「帰ってくれ」とは言えないですから、今度はその人の喋る時間を作らねばならない。
正直1時間遅れくらいなら来てくれた方が有難いですが、数時間も遅れるなら帰っていただきたかった。
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一番迷惑掛けられた遅刻の「常習者」は先代の桂文治師匠でした。まぁ時間通り来ない(笑)。遅刻のせいで集合写真にも載らなかった人です(爆)。
主任の時のことです。その前が曲芸のボンボンブラザースだったんです。あらゆる(手持ちの)芸を最大限の時間を掛けておやりになったんですが、それでも文治師匠が来ない。繁二郎師匠がちょいちょい舞台袖から「まだ?」って聞いてくる。
ついに時間が足らんようになって、当時まだご健在だったキャンデーブラザース(つまりはご自分の師匠)の傘を楽屋に取りに。
ボンボンブラザースが傘を回してるのを見た最初で最後になると思います。