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【新春企画】上方演芸界の御記録係?!落語作家・小佐田定雄先生にインタビュー!

ふじかわ陽子

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落語作家として40年以上歩み続けた小佐田定雄先生。落語作家として触れ合った芸人さんたちの思い出をつづった著作も多数あります。

その小佐田定雄先生に、思い出を残す意味についてうかがいました。落語作家になられたきっかけも教えてくださり、盛りだくさんのインタビューです。お楽しみください。

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手拭い欲しさに処女作『幽霊の辻』を書き上げた

――小佐田先生の処女作は『幽霊の辻』だそうですが、これはどのような経緯で誕生したのでしょうか?

1977年に桂枝雀師匠が新作落語の会「枝雀の会」を始められて、毎月ネタおろしをされていたんです。ただ、回数を重ねるごとに苦しくなってこられていて、ある時私が「枝雀師匠がされたい落語はこうですか?」と落語の台本を送ったんです。1977年6月のことでした。それが『幽霊の辻』。25歳の時ですね。

――売り込みですね!すごい!

いえいえ、手拭いが欲しかったんです(笑)。普通やったら、「有難うございます。こちらをどうぞ」と手拭いを返事と一緒に送ってくれるでしょ。枝雀師匠は直接電話をくださって、その後角座の裏に呼び出されたんです。

――おお!それからそれから?

その時に手拭いがもらえるかと思っていたのですが、喫茶店でいろいろと話しただけに終わりました。1977年7月の「枝雀の会」の際に枝雀師匠が『幽霊の辻』をかけてくださって、終演後高座から「これからこの人が落語の台本を書きます」と客席の私を名指ししたんです。

――ええっー!!ビックリですね。

びっくりです。自分でこうやろうとは思っていなかったですから。まあ、最初誰かが書いたら後進が続くだろうと思っていたら、なかなかそうもいかなくて。

――それはそうと、お目当ての枝雀師匠の手拭いは、結局いただけたのでしょうか?

いただけたのは次の正月でした(笑)。随分時間がかかったなぁ。

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噺家に心配される落語作家

――保険会社のサラリーマンをされていたとのことですが、兼業作家をするのは難しかったでしょうか?

難しくはなかったかな。勤務時間が短くて、ボーナスは年3回。1987年9月30日まで兼業作家でした。

――今では考えられない超ホワイト企業、天国じゃないですか。

それでも、会社が終わったら落語会に走って、休みの日は台本を書いてということをしていたら大変で。

――会社を辞めることに不安はありませんでしたか?

会社を辞めたらやりたいことがあったんです。それを専業作家になった10月1日に実行しました。

――目標があると不安は消えますね。大作を書くみたいな。

いえ、朝風呂です。

――え?

朝風呂や(笑)。サラリーマンやったら絶対にでけん(笑)。朝風呂に入っている時に、先代の歌之助師匠から電話がかかってきて、えらい心配してくださったんです。変な気を起こしてないか。

ーー周囲からはヤケクソになっていると思われても仕方ない状況ですもんね。

歌之助師匠に「真面目に生きなあかんで」と言っていただきました。

――不真面目の代名詞のような職業の噺家さんに心配される落語作家……。

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上方演芸界の御記録係に任命(?)

――専業作家になられてからのご活躍はよく存じ上げていますが、新作落語以外にも『枝雀らくごの舞台裏』や『米朝らくごの舞台裏』、『上方らくごの舞台裏』といった思い出をつづった著作も有名ですね。思い出を残すことに、大きな意味はあるのでしょうか?

ある芸人さんに「記録は任せる」と言われたんです。それで聞き書きを始めまして。作家ですから言葉に置き換える能力があるから。

――言葉に置き換える能力は、専門的な能力ですよね。やってみると案外難しいです。

あとね、「あの時聞いておけば良かった」「記録しておけば良かった」というのを防ぎたいんです。例えば、春若師匠のコラムを読んでいると、「ああ、あったなぁ」というのが多い。でも忘れているんです。たいてい飲んでいる時に話しているから(笑)。

――芸人さんや演芸界界隈は「飲んでいたから」が多い(笑)。

飲みながら話を聞いて、その時は笑っていても後から分かることもある。冗談半分に聞こえても本気やった。それに気付くためにも記録は必要だと考えています。

――米朝師匠も多くの記録を残されていますね。

私は米朝師匠が書き残したことを書いている感じですね。私は教えてもらうのが好きなんですが、繰り返してお稽古ができない。飽きるんです。講演30分でもしんどい。ウケささなアカン、笑いが少ないとアカン。いらんことするからしんどいんかも。記録を作る方が性に合っています。

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ねつ造の事実の方が面白ければ採用

――小佐田先生にとって思い出とは?

すぐ役立つことやないけど、ふと思い出した時にふと笑えるものかな。その時だけその人とつながれて、ふと出会う。その為に残したいですね。

――記録であっても、公のデータという感じでなく個人と個人が繋がるものでしょうか?

Q&Aやないからね。「ハイ、答え」でなく、ほわっとした感じ。今はドラマでも史実やの何やのといって息が詰まる。私ね、上方演芸界の御記録係なんていわれてますけど、作家ですから。正確さよりもねつ造の事実の方が面白ければ、そちらを採用します(笑)。

――そういえば、鶴光師匠がご執筆くださっている六代目の思い出は、どれがホンマか分からん状態で……。他のお弟子さんにうかがっても、「全部ホンマ」としか教えていただけず。

それでええんです。学術的なことは学者に任せておけば良い。

――ほわっと感が大事?

そうそう。落語とは便利なもので、年月日を一切言わない。勝手にお客さんが想像するものでしょう。時代をなくしてしまう。

――思い出もそのような普遍的なものになる可能性があるんですね。

おもしろければね(笑)。

――『寄席つむぎ』もそうなれるよう頑張ります!

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今回は落語作家の小佐田定雄先生にじっくりお話をうかがいました。とても勉強になることが多く、書ききれないほど多くのことを語ってくださいました。

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