桂春若師匠の師匠、三代目桂春団治師匠は研ぎ澄まされた高座が有名な落語家です。羽織の脱ぎ方などひとつひとつの所作まで美しい方でした。
その三代目桂春団治師匠、持ちネタがとても少ないことでも有名。今回は桂春若師匠に厳選された三代目桂春団治師匠のネタについてつづっていただきました。桂米朝師匠との関わりについても言及されておられます。お楽しみください。
春団治落語
うちの師匠はネタ数の少ない落語家で有名(?)でした。
ひとつの咄を磨いて磨いて、出来上がったモノだけを高座にかけています。東京の昭和の名人、八代目桂文楽師匠を大変尊敬していました。
私が聴いた咄は、『いかけや』『髙尾』『月並丁稚』『親子茶屋』『代書』『皿屋敷』『お玉牛』『子ほめ』『野崎詣り』『祝いのし』『寄合酒』『寿限無』『平林』『明番丁稚』『有馬小便』『宇治の柴舟』です。
それに師匠が落語会でネタ出しする時に見せて頂いた手帳には、『豆屋』『始末の極意』『色事根問』。
他には踊りの『わし國』『五段返し』『舘山』が記されていました。
『豆屋』はNHKに音源が残っているようですが、演らなくなった理由は「二人目の客の返しが親父(二代目春団治)みたいにでけへんから…」と仰っていました。
『始末の極意』『色事根問』は音源がありません。共に米朝師匠にお稽古をして頂いたネタです。
米朝師匠には『皿屋敷』『代書』『親子茶屋』と5本つけて頂いたと思っていたんです。
が!
3年ほど前、法善寺のBARでタレントの松尾貴史さんにお会いした時に松尾さんが、
「春団治師匠は米朝師匠に『米揚げ笊』もつけてもらっているようですよ」
「そんなん聞いたことないよ」
「いえ、かなり信用できる話やと思います」
「ほな、ざこば師匠にお会いした時にでも聞いてみますわ」
『米揚げ笊』は師匠の仕事に連れて貰った折りに、
「若、今日は“笊“演れへんのか?」
「いえ、まだ決めてませんけど…」
「お前の“笊“のあと、演りやすいねん」
と云われた思い出のネタです。
後日、ざこば師匠にお会いして、
「お兄さん、こないだ松尾貴史さんが“春団治師匠は米朝師匠に『米揚げ笊』つけて貰っているみたいですよ“って云うてはったんですが、お兄さん知ってはりますか?」
「いや、『鉄砲勇助』もつけて貰うてるみたいやで」
「えッー!」
もうええわ!(漫才の下げツッコミです)