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流行の最先端~噺を肴にもう一杯!:桂三若

桂三若

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昨年から続くコロナ禍でオンライン寄席が一般的になりました。オンライン寄席は無観客で行われることもあります。桂三若師匠も無観客で落語をされたことがあるとか。

今回は桂三若師匠に、コロナ禍以前から流行の最先端といえる「無観客寄席」を開催していた会場についてつづっていただきました。抱腹絶倒、間違いナシ!飲みながら読めば、良い酔い方をしますよ。つい「もう一杯!」となってしまうかも。

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流行の最先端

『無観客寄席』なんて言葉に違和感を感じなくなって随分と経ちます。去年の3月頃は「そのうち無観客寄席とかやりますよー」と舞台で言うと笑いが来たもんです。

先日も東京の小料理屋さんで無観客配信寄席がありました。前説で女将さんが注意事項を喋るのですが、お客さんがいる時の癖なんでしょうか、カメラに向かって「携帯電話、スマホ、パソコンなど音の出るものは電源をお切りください」と言うてました。

「いや、皆さん何で見るねーん!」と激しく突っ込みましたよ。

まだまだお客様が戻らない中ではございますが、久しぶりに名古屋の大須演芸場に出していただきました。

この演芸場は流行の最先端のようなとこで、何十年も前から無観客寄席をやってました。いや、やってたというより自然とそうなっていたというか(汗)

とにかく昔はお客様が日本一入らない劇場として有名で、館内アナウンスが「携帯電話をお持ちの方は今すぐ電源をお切りください」ではなく「携帯電話をお持ちの方は今すぐ友達を呼んください」と流れるというギャグが定着してたほどです。

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僕が初めて出していただいた15年前はお客様が6人でした。それも固まって座ってるのではなくバラバラで二階にも2人。「二階なんか入れるなよー」と僕は突っ込んでましたが、いつも出てるメンバーは「今日は6人入ってるー」と大喜びです。

出演者もなかなか個性的で最初に名古屋のバタやんさんが出てました。若い子にはバタやん自体が誰かわからないのに(田端義夫のことね)

物真似されても似てるか似てないかさっぱり分かりません。近所のおっちゃんが隣の八百屋のおっちゃんの物真似をしてる状態です。

次がマジックの先生ですが、こちらが80歳を越えてそうで総白髪です。舞台まで歩くことがすでに大変で、ステッキを持って出てくるからマジックに使うのかと思えば体を支えてるだけです。

ヨレヨレになりながら必死でマジックをする姿は、動いてることが既にマジックで、誰かに操られてるのかなぁとイリュージョンな気持ちにさせられます。

普通、マジックというのは出したり消したりするもんですが、その先生のマジックは机の上に置かれた物が少しづつ消えていくだけです。消費するだけで生産性がゼロという大国のエゴのようなマジックですが、横から見るとポケットがドンドン膨らんでるのが丸分かりで、脱腸のようになってます。

次は僕の出番なんで「お客さんはどんな雰囲気かなぁ?」と舞台袖から覗くと、なんと6人やったお客さんが2人に減ってました。

「わぁ~先生、お客さんまで消してもうた!」

ポケットに入ってるんかなぁと衝撃を受けたのを覚えてます。

終わって先生が舞台袖に引っ込み「ハァハァお水くれー」と荒い息でおっしゃった時は、危うく命の灯が消えるマジックを目の当たりにするとこでしたよ(怒られるわ!)

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無観客なんてザラで、お客さんが1人でも入ってくると絶対に逃がさないように出演者一同で外から扉を押さえたもんです。

楽屋もボロボロであちこちに貼り紙がありました。『棚に物を置くな!壊れる!』とか『ゴミ箱にゴミを捨てるな!』とか、便所には『大は流れません!』とか『ベッドで煙草を吸わないで!』とか(いや、ベッドは無かったけど)

何かの謎解きかと思わせる無理難題が貼られていて震え上がったのを覚えてます。

そんな演芸場も新しくなり、とても綺麗になりました。

貼り紙も全て剥がされ、ロビーではぐれ刑事純情派を見てる席亭もいなくなり、お客さんもたくさん入るようになり、気持ちよく落語をさせていただきました。

嬉しい反面、少し寂しいような気もしますが、皆さんもぜひ大須演芸場に遊びに行ってくださいませ。トイレは大も流れますので(笑)

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