遂に松坂大輔選手が引退……。いつか訪れるこの時に、野球の全てを愛するマグナム小林先生は何を感じたのでしょうか。
高校野球のレベルを上げ、超人的な投球を23年間続けた松坂大輔選手。彼の軌跡を振り返ります。今回もマグナム小林先生の筆が光っています。
松坂大輔引退!
松坂大輔引退の報を聞いて、やっぱりと思う部分はもちろんあるのだが、今まで松坂の超人的な部分を何度も見てきてるので、松坂はサッカーのカズのように永遠に引退しないんじゃないかと思っていた部分もあった。
コアな野球ファンは、ドラフト制後の野球を松坂前、松坂後で区分する人が多い。まるでキリストのようだが、松坂が登場した事で高校野球のレベルが飛躍的に上がった。ひいては野球界全体のレベルが上がった。
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ここでも何度も言っているが、野球のレベルは投手が作る。松坂前、我々の世代もそうだったが、投手は140キロ出せればプロに行けた。たまに150キロ前後投げられる投手もいたが、それは1試合に1球あるかどうかの話だった。
松坂は高3の春には1〜9回まで150キロを投げられた。それ自体、衝撃なのだが、それをヒットにする選手がいる事にもっと驚いた。松坂を打たなきゃ勝てないのだから、ヒットは出て当然なのだが、こうしてレベルが上がるのだなと痛感した。そして打たれれば、その更に上を行く松坂がいた。
その後、松坂のように1〜9回まで150キロを投げられた投手がそうそう出てきた訳ではないが、田中将大や藤浪晋太郎はそれが出来たし、それが出来た投手は、高卒新人ですぐに二桁勝っている。高卒新人で二桁勝った投手というのは、松坂前となると、鈴木啓示さんや江夏さんの時代まで30年以上遡る事になる。
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松坂の完成形は、西武の最後の年の2006年だと思う。デビュー当初の荒れ球のイメージが消え、四球も減り、ほぼ完璧な投手になっていた。メジャーでどれだけ活躍するかと思ったが、滑る球、硬いマウンド、日本と異なる調整法、年齢的なものなど色々な要因はあったと思うが、思ったほど活躍出来なかった。
2年目に18勝してるが、明らかにフォームがおかしくなってるので、これは長続きしないだろうなと思っていたら、やはり翌年から怪我に悩まされた。もしかすると、それ以前から故障はあったのかもしれないが、松坂は器用なのでそれを誤魔化しながら投げていたのではないかと思う。逆にそれが故障を重大なものにさせてしまったのかもしれない。
私は中日で投げてる時の晩年で枯れた感じのそれでいて味のある投球が好きだった。もう少しあの投球を見たかった。でも、やり尽くしたのだと思う。我々の期待を一身に集めた23年間だったと思う。今はただ、お疲れ様でしたと言いたい。