笑福亭羽光師匠は昭和47年生まれ。青春時代は日本の音楽業界が花盛りの時期でした。数々の名曲が誕生し、今も歌い継がれる楽曲が誕生した時期ですね。笑福亭羽光師匠も影響を受けたバンドがあるのだそう。それはTHE BLUE HEARTS。さて、どのような面で影響を受けたのでしょうか。今も頭の奥で鳴り響く瞬間とは?
あなたが影響を受けたアーティストを思い出しながらお読みください。何か感じるものがあるはずです。
あの頃と変わらずブルーハーツは鳴っている
コロナ前、追っかけているパンクバンドのライブに行った。対バンというのだろうか、お目当てのバンド以外に、もう一組知らないバンドも出演していた。その見ず知らずのバンドの演奏に涙が出た。髪を染めてピアスをあけた、僕の半分位の年齢の売れてない見ず知らずのバンドに、ブルーハーツの面影を見たのだ。
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高校1年の時、同級生が貸してくれたアルバムで初めてブルーハーツを聴いた。
心配性の僕は、高校時代、ずーっと将来が不安で、一生童貞のままだったらどうしようとか、受験失敗したらどうしよう…とか、タラコ唇治るんやろか…とか、そんな心配事でいっぱいだった。
ブルーハーツは、そんな僕に「大丈夫だよ、何とかなるって」と言ってくれているような気がした。受験の失敗。バブル崩壊による就職氷河期。皆に反対されながらお笑い芸人。東京に出る。34歳で入門。
……こんな人生を歩んだ僕が本当の意味で≪大人≫になったのかどうかは判らないが。なんとか生きてこられた。
だから僕の落語【私小説落語】シリーズをやる事で、こんなダメな僕でも大人になれた(何とか生きてこられた)から、きっとみんな生きていけるって……とちょっとでも若い人に伝わればいいと思う。
大人を困らせてやりたい、体制に反抗したい…というエネルギーがパンクにあると思う。
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落語家は舞台に上がるギリギリまで何のネタをするか迷っている。客席に上品な高齢女性が居る、厳格ないかにも江戸の古典落語好きそうな老人が居る。…ここは【たらちね】【牛ほめ】やって可もなく不可も無くの雰囲気にして次の出演者に渡した方が良いのではないか…こんな雰囲気の状態で攻めた事やって意味があるんだろうか?…と考える。
その瞬間、頭の中で激しいドラムが鳴り、ぎゅい~んとエレキギターの音が聞こえ、パンクが流れる。僕は、下ネタを高座でやっている。
僕が下ネタをはじめとする私小説落語をやる時は、頭の中でパンクが鳴っているのだ。