「寄席芸」と聞いて、多くの人がイメージするのは、落語や講談といったものではないでしょうか。
でも、寄席芸はそればかりではありません。漫才や曲芸、紙切りといった芸は「色物」と呼ばれ、寄席には欠かせないものです。
『芸人魂』は、そんな「色物」に焦点を当てた会。
第1回が今年5月に行われ、この秋、第2回が同じくお江戸日本橋亭で開催されるとうかがって、行って参りました!
バイオリン漫談のマグナム小林先生は、前回に引き続きのご出演。他にも、ボードビルやスタンダップコメディなど、盛りだくさんです。
さっそく、まさに『芸人魂』を見せつけられた楽しい会の様子をレポートします。
前半から、お客さんといっしょに盛り上がる!
まずは、ジャグリングのポケ先生。
タップシューズで登場したポケ先生、「Hello!」「How are you?」と、思わず答えたくなってしまう英語での投げかけで、お客さんの心を一気につかみます。
タップを踏んでの早口言葉には、お客さんも参加。お客さんは心の中で、ポケ先生はタップで表現します。
長めの早口言葉には、「今、噛んだでしょう!?」と突っ込まれ、ドキッ……!
最後は、ジャグリングです。といっても、お江戸日本橋亭の舞台は屋内。
「本当だったら、200メートルも300メートルも上がるんですよ」と、構える姿勢は見せても、いっこうにコマを投げ上げません。
このまま終わってしまうんだろうなあ……、という笑いに客席が包まれたそのとき、「20センチから30センチなら」ということで、えいっ!と投げ上げ、見事にキャッチ!
お客さんを巻き込んだパフォーマンスに、会場が一体となります。
続いては、腹話術のスージィー先生。
ちょっと毒舌な人形の楽ちゃんと、スージィー先生の丁々発止のやり取りに、ぐいぐい引き込まれます。
楽ちゃんは「腹話術は想像の世界」と言っていましたが、楽ちゃんを楽ちゃんとして自然に受け入れることができるのは、スージィー先生のお力あってこそ。
さて最近、ボイスパーカッションを習ったスージィー先生。
楽ちゃんが「『上を向いて歩こう』を一緒に歌おう」と誘います。
スージィー先生が「腹話術っていうのは交互に話すもの」と、大前提を説く様子に、まさかそんなことが……?と思いつつも、ついつい笑ってしまいます。
スージィー先生のボイスパーカッションと楽ちゃんの歌のコラボレーションは、見事大成功!
固唾を呑んで見守った客席からは、大きな拍手と歓声が沸き起こっていましたよ!
前半のラストは、ボードビルのやまけいじ先生。
客席後方に控え、まるで通りすがりの人が寄席に迷い込んできたように、お客さんと会話しながらの登場です。
やまけいじ先生のステージは、お客さん参加型。
塩ビのパイプでできたトロンボーン!?を支えてもらったり、演奏したい曲のリクエストを募ったり……、いつの間にか、すっかりペースに飲み込まれていきます。
1人カラオケをするための装置や、『浜辺の歌』の情景を思い起こさせるための装置、大量の自転車のベルによる『ふるさと』の演奏など、音と身体を使ったパフォーマンスは圧巻!
最後は、ハンドベルを全身に取り付けての演奏。
童謡『ゆうやけこやけ』を全身で熱く演奏する姿に、拍手喝采でした!
後半は、出演者によるトークから。お題は……
仲入りのあとは、出演者によるトークです。テーマは「芸名の由来」。
確かに、みなさん特徴のある芸名です。
本名に由来するもの、自分で考えたもの、師匠からいただいてお返ししたもの!?など6人それぞれの由来に、お客さんも新鮮な驚きがあったようです。
でも、マグナム小林先生曰く「芸人の言うことは3割くらいが嘘だと思って……」とのことでしたよ。笑
さて、後半はスタンダップコメディのダメじゃん小出先生から!
鉄道好きには撮り鉄、乗り鉄といろいろなジャンルがありますが、ダメじゃん小出先生は「話鉄(わてつ)」。
ホワイトボードを前に、最近よく聞く「SDGs」すら、鉄道の話題に変えてしまいます。
お客さんの中には、(かくいう私を含め)鉄道ファンの方がちらほらいらして、話の着地点が分かると小さな笑い声が起こります。そして、仕掛けが分かると、じわじわっと大きな笑いに!
電車の中で、路線図を見上げるのがちょっと?いや、かなり?楽しくなってしまうお話ばかりでした。
続いては、マジックのわか葉先生。
トランプがモチーフの衣装で登場!マジック気分が高まります。
なくなってしまった缶ビールが復活したり、いちごジャムとピーナッツバターが入れ替わってまた戻ったり……!?
「最近買ったの!」という光るステッキでおまじないをかける姿もキュート。
続いて取り出したのは、袋に入った食パン。お客さんに1枚選んでもらい、「どっちが表でどっちが裏か覚えてください」のお願いに、客席がざわつきます。笑
最後には、先ほどのジャムとバターが塗られているというマジック!
終わりに、「女の子らしいマジックも」ということで、かわいい人形が登場するマジックも披露されました。
お客さんがどんどん、わか葉先生のキャラクターとパフォーマンスに引き込まれていく様子が印象的でした。
トリを務めるのは、バイオリン漫談のマグナム小林先生。
お囃子の奈保さんも御簾の向こうからのご出演です。
まずは、バイオリンで様々な物の音を表現。
新幹線こだま号、ひかり号、のぞみ号、そしてリニアモーターカー、……「勘がいい」とマグナム小林先生に評されるお客さんたちでした。笑
続いて『東京節』と、そのメロディを使った謎かけです。
芸能、コロナ、そしてマグナム小林先生のお好きな野球をテーマにした謎かけに、思わず唸ったり、笑ったり。
最後は、これぞマグナム小林先生!の『暴れん坊将軍』と『天国と地獄』です。ここからは、バイオリンとともにタップも登場。
『暴れん坊将軍』では、「殺陣のテーマ」を馬の駆ける音とともに勇ましく。
『天国と地獄』では、バイオリンの背面弾きに「おお!」という歓声が。
どんどん速くなるバイオリンとタップ、そして三味線のテンポにお客さんが圧倒され、拍手を忘れてしまう場面もありました。笑
おわりに
実は、マグナム小林先生が登場した時点で、すでに2時間が経過していたという今回の会。
持ち時間は1人15分の予定でしたが、お客さんの反応がとてもよく、演者のみなさんもつい楽しい気分になってしまったとのこと。笑
とても2時間以上あったとは思えないぐらい、息つく暇なく笑い続けた楽しい会でした。
お客さんと演者さんが一緒に作り上げる空間は、とっても密で心地良いもの。
もっともっと、多くの人に体験していただきたい!と思いました。
フライヤーの「落語だけが演芸じゃない!」「色物の力をとくと見よ!」というコピーに違わない、色物のパワーに満ち溢れた会でした。